川村拓也

青森県 田子町 出身 1975年生まれ48歳 九州大学 大学院 法学研究科 修了(法学…

川村拓也

青森県 田子町 出身 1975年生まれ48歳 九州大学 大学院 法学研究科 修了(法学修士) 金融機関勤務12年を経て、㈱南柏リビングを設立、代表就任 現在に至る

最近の記事

【連載小説】稟議は匝る 21 札幌 2007年12月7日 (農水省ふたたび)

その日、山本は、ファイルの整理を行っていた。

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    • 【連載小説】稟議は匝る 20-2 札幌 2007年11月2日 (第1回債権者集会-再建計画)

      「すみません、先ほどの件ですが、お時間いいですか」

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      • 【連載小説】稟議は匝る 20-1 札幌 2007年11月2日 (第1回債権者集会-再建計画)

        (再建計画第1回債権者集会)

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        • 【連載小説】稟議は匝る 19 東京・日比谷 2007年6月15日 (検察との取引)

          農林銀行の役員室は、本社ビル11階にある。

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        【連載小説】稟議は匝る 21 札幌 2007年12月7日 (農水…

          【連載小説】稟議は匝る 18-2 札幌 2007年10月29日 (北転船拿捕)

          北転船は、ベーリング沖の海域で漁を行う底引網船の総称だ。

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          【連載小説】稟議は匝る 18-2 札幌 2007年10月29日 (…

          【連載小説】稟議は匝る  18-1 札幌 2007年10月29日 (北転船拿捕)

          2007年10月29日(北天船拿捕)

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          【連載小説】稟議は匝る  18-1 札幌 2007年10月29日 (…

          【連載小説】稟議は匝る  17-2 東京・日比谷 2007年5月9日 (専務との対決)

          扉の中を見渡すと、役員会議室では、すでにみな着席しており、1番奥に岩井専務が座っている。 順に審査部長以下審査の担当ラインはもちろん、法務部長、コンプライアンス部長までも下を向いて座っていた。 今日の会議はあくまで支店と審査部の協議のはず、関係部署の出席は予定にない。 どうしてと、そんな置かれた状況を考える暇もなく、山本が末席に座ると、支店長が稟議の説明を行うため、立ち上がろうとした。その瞬間、岩井専務が口を開く。 「いやいや、支店の説明はいらない。中身は既に目を通し

          【連載小説】稟議は匝る  17-2 東京・日比谷 2007年5月9日 (専務との対決)

          【連載小説】稟議は匝る  17-1 東京・日比谷 2007年5月9日 (専務との対決)

          東京都千代田区有楽町1丁目。 皇居が見える場所に、農林銀行の本店がある。 戦後の混乱期にGHQが本部を置いたその場所は、大理石造りの古い建物を包み込むように近代的なビルが建設されている21階建てのビルだ。 札幌支店の職員が本店に出張する場合、千歳空港7時発の便で本店到着が9時20分。千歳空港までは電車で40分程度のため、結果、当該職員の起床は5時前後となり、寝不足での本店詣でとなる。当然、札幌からの出張は毎度日帰りコースで楽しみもない。 研修所は都内ではあるが郊外にある

          【連載小説】稟議は匝る  17-1 東京・日比谷 2007年5月9日 (専務との対決)

          【連載小説】稟議は匝る 16-3 札幌すすきの 2007年3月16日 (ろここ、大熊の話)

          「それからあとは、2階のガキどもが言った話であまり変わりません。 弁護士を頼み、双方訴訟となって、つい先日、和解しました。和解内容は、1、本件を口外しない、2、教授は私に150万円を支払う、3、訴訟費用は双方負担そうほうふたん、と、4、教授は指定する店に出入りしない、です」 「もしかして、指定する店って、ここのこと」 「そうです。北大で学会があった時は、必ず二人で来ていました。私はすごく気に入っていたので、また来たいけど、あの顔を見るのは嫌だなって。和解内容を見て、それ

          【連載小説】稟議は匝る 16-3 札幌すすきの 2007年3月16日 (ろここ、大熊の話)

          【連載小説】稟議は匝る 16-2 札幌すすきの 2007年3月16日 (ろここ、大熊の話)

          小1時間ほどたっただろうか、来年52歳で役職定年を迎える総務課長が、缶コーヒーを2本持って、ベンチの隣に座ってきた。 「上着も着ないで寒いだろ、無糖とカフェオレどっちにする」 雪は降っていないが、大通り公園の気温計は-と表示してある。誤作動じゃない、まさに今、氷点下に気温が下がっていっている途中ということだ。山本は、今の今まで、怒りで気温も感じなかったが、ワイシャツ1枚で、我に返ると途端に冷える。 「すみません、課長。アクリル板割っちゃいました」 「いいから、どっちに

          【連載小説】稟議は匝る 16-2 札幌すすきの 2007年3月16日 (ろここ、大熊の話)

          【連載小説】稟議は匝る 16-1 札幌すすきの 2007年3月16日 (ろここ、大熊の話)

          その日、山本は大熊に誘われて、すすきのへと繰り出していた。 普段よく連れ立っていく大衆酒場に足を向けようとする山本を制し、大熊は口数少なに山本を先導していった。 どれほど階段を上り下りしたか分からない。通りからはビル自体が全く見えない場所であろう、階段や廊下に荷物が散乱している奥の奥に、その店はあった。 店の前は、今まで通ってきた路地裏の雑然とした雰囲気はみじんもない。 ここだけ急に別世界のようだ。山本がきつねにつままれたような心地で目をやった店の入り口の大きな扉には

          【連載小説】稟議は匝る 16-1 札幌すすきの 2007年3月16日 (ろここ、大熊の話)

          【連載小説】稟議は匝る 15 札幌・社宅 2007年3月15日 (格付けと予算)

          農林銀行札幌支店の社宅は、札幌オリンピックの会場ともなった大倉山ジャンプ競技場を眺める閑静な住宅街にある。 その社宅の202号室。いつもどおり、山本が0時過ぎに、怪しげな外国の通販番組を見ながら、晩御飯と晩酌を楽しんでいると、横に座っている妻が、話しかけてきた。 「そうそう、今日、社宅の奥様達の茶話会があったんだけど、格付けってなにかしら。みんな銀行出身の奥様達ばかりだから、当たり前のように話してたんだけど」 銀行あるあるだが、全国転勤の農林銀行のは社内結婚が多い。外様

          【連載小説】稟議は匝る 15 札幌・社宅 2007年3月15日 (格付けと予算)

          【連載小説】稟議は匝る 14 札幌 2007年1月30日

          (創立記念祭の夜) 松の内の雰囲気もようやく和らいだその日、山本は、リバプールホテル札幌の宴会場にいた。私用ではない。農林銀行の創立記念日のディナーパーティーだ。100名を超える支店職員が一堂に会する年に1回の恒例イベント。 この日、全国の本支店でも各々同じように創立記念パーティーが開催されている。 「なんでこんな忙しい時期に」 と決まったセリフもあちこちで聞かれるのも例年どおり。広い宴会場には丸テーブルがならび、くじ引きで座席が決まったはずなのに、なぜか山本のテーブ

          【連載小説】稟議は匝る 14 札幌 2007年1月30日

          【連載小説】稟議は匝る 13 札幌 2006年9月22日

          (のんきな農水省) この年、日高地方を中心に大規模な台風が上陸した。 北海道での台風や津波の被害は珍しい。だいたいの場合、台風は本州で温帯低気圧となり、北海道には影響がほとんどなくなるからだ。 しかし、ひとたび台風上陸となると、漁労、水産業への影響は極めて大きい。船舶の損傷はもとより、定置網や、養殖池などの損傷そんしょうの他、水揚げ量の減少は売り上げに直結する。かける保険金も限度があり、ひとたび大規模災害があれば、漁業者の生き死にに直結する。 そんな未来を予測したかの

          【連載小説】稟議は匝る 13 札幌 2006年9月22日

          【連載小説】稟議は匝る 12 札幌 2007年1月17日

          (再建計画案第2稿) 年も明けて、およそ2週間後。 その日は、農林銀行札幌支店に藤沢ら白銀水産しろがねすいさんの面々を迎えていた。 社長以下、藤沢を含めて3名。みなそれぞれ大きなカバンに資料を抱えている。藤沢は風呂敷に重箱のような資料を携えている。 私的整理ガイドラインに基づく再建計画は、債権者集会によって認定される。その債権者集会には、銀行などの債権者の他、3名以上の第三者(税理士など)の参加が必要となり、すべて議事録が作成される。当然、テーブル外がいの交渉はできな

          【連載小説】稟議は匝る 12 札幌 2007年1月17日

          【連載小説】稟議は匝る 11 札幌 2006年12月22日

          (子どもの喧嘩) その日も山本の帰宅は、0時を回っていた。 特に珍しいことでもない。帰るなりシャワーを浴びて、Tシャツとトランクスのパンツ一丁でテレビの前に座る。チャンネルを合わせるのは、いつも同じCSの通販番組だ。画面の中で、金髪でマッチョな怪しげなおっさんと、栗毛のスタイルの良い女性が、軽快な会話を交わしている。特に何か欲しいものがあるわけでもない。ただ、この明るいが、特にどうでもよい通販番組を見ながら、遅い晩御飯を食べるのが山本の日課だった。 こんな遅い時間でも、

          【連載小説】稟議は匝る 11 札幌 2006年12月22日