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もっと知られても良いと思う現役バリバリの「ニューオリンズスターミュージシャン達」12選

ニューオリンズ、そこは言わずと知れた音楽の聖地。その素晴らしい音楽を求めて、毎年、世界中から多くの人々が訪れます。筆者もそのうちの一人でした。2019年3月から10月までの6か月間、ニューオリンズに滞在し、ほぼ毎日ライブに通いました。

このシリーズではそんな筆者が、足で稼いだ情報をもとに「ニューオリンズの音楽シーンについて紹介していく」といった内容になっています。よろしくお願いいたします!

“ニューオリンズミュージシャンといえばどなたを思い浮かべますか?“バディーボールデンから始まり、ルイアームストロング、ファッツドミノ、ミーターズ、プロフェッサーロングヘア、アラントゥーサン、ドクタージョンなど往年のスタープレイヤー達はたびたびフィーチャーされるものの、(アメリカ国内では人気でも)残念ながら日本では「現役のニューオリンズミュージシャン」についてはあまり語られることが多くないのが現状です。ニューオリンズ音楽好きを自負していた筆者も、現地に行くまで、現役世代のミュージシャン達についてはあまり知りませんでした。しかし、現役バリバリの世代も凄腕揃いで、往年のミュージシャンに負けず劣らず素晴らしい音楽を届け続けているのです!
というわけでこのシリーズ第一回目の今回は、現役で活躍するニューオリンズの「ご当地スターミュージシャン達」についてご紹介したいと思います。「とりあえずこの人達を押さえとけば大丈夫!」といった内容です。それでは行ってみましょう!

「ニューオリンズが生んだスーパースター」Trombone Shorty

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ニューオリンズのスターと言えばトロンボーンショーティー。

ニューオリンズ生まれ。クインシー・ジョーンズやディジー・ガレスピーとの共演歴もある兄のトランペッター、ジェームス・アンドリュースに影響を受け、4歳からトロンボーンを始める。若干19歳にしてレニー・クラヴィッツのバンドメンバーに選ばれて以降、U2、グリーン・デイ、フー・ファイターズといったロック・ミュージシャン達との共演を果たす。
2009年からは自身のリーダーバンド“トロンボーン・ショーティ&オリンズ・アヴェニュー”を率いて全世界で演奏活動を行っている。フロントマンとしてボーカル/ラップを披露しながら、トロンボーン/トランペット演奏まで駆使するそのパフォーマンスは、米・ローリング・ストーン誌が“A must-see act(今、最もライブを観なければならないライブ)”と評するほどに熱気を帯びている。

ホワイトハウスでのパフォーマンス(2012年)↓

そのプロとしてのキャリアはなんと5歳から!

Youtubeには13歳の時の映像が残っています。

ウィントンマルサリスら、ニューオリンズジャズの重鎮達の中で力強いソロを約2分間吹き続けています。この頃からすでに風格がありますね。

そしてなんといってもショーティーの魅力はそのイケイケのパフォーマンス。ライブは毎回異常な熱気。(このライブも熱いです!↓)世界最大のジャズフェス、ニューオリンズヘリテイジジャズフェスティバルでは毎年トリを務めます。トランペットも吹くショーティ。出てくるときは必ずトロンボーンとトランペットを両手に持ってやってきます。これぞ現代のニューオリンズファンク!!

「王道のニューオリンズジャズを聴くなら。」Kermit Ruffins

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伝統的なニューオリンズスタイルを継承するトランぺッター、カーミットラフィンズ。(別名、リトルサッチモ)

ニューオリンズに生まれ、ブラスバンドからキャリアをスタートさせたカーミット。著名なブラスバンド、Rebirth Brass Bandの設立者の一人でもあります。Rebirthを離れた後は、自らのバンドKermit Ruffins & the Barbecue Swingersで活動。彼のルイアームストロング(サッチモ)を彷彿とさせるトラディショナルなニューオリンズジャズを聴きに、多くの観光客がライブに訪れます。キーボードは日本人プレイヤーのYoshitaka "Z2" Tsujiさん。

ニューオリンズジャズの特徴は底抜けに”明るい”ところ。カーミットの人間性もそれそのもの。彼のパフォーマンス、明るい喋りで”楽しいニューオリンズジャズの旅”へと連れて行ってくれます。

そしてカーミットはニューオリンズジャズだけではなく、R&Bも演奏します。これがまたセンスが良くてかっこいい。。特にこのアルバムの12."Talking Loud and Saying Nothing"は必聴。夜のカーミットをご堪能ください。

また、料理人としても有名なカーミット。彼の店に行くと(ライブがある日には)彼が料理したニューオリンズの郷土料理「レッドビーンズ&ライス」が食べられます。筆者もニューオリンズ滞在中、数々のレッドビーンズ&ライスを食べてきましたが、ここのが一番ウマかった!笑彼の店に立ち寄った際には是非食べてみることをおススメします。

「おしゃれでグルーヴィーなニューオリンズサウンドを聴くなら。」Jon Clearly 

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続いては「おしゃれでグルーヴィーな音楽」が好きな方におすすめなジョンクリアリー&the absolute monster gentlemenです。

イギリス人のジョンは、17歳の時にニューオリンズに渡米。今ではニューオリンズを代表するピアニストとして世界中を駆け回っています。来日公演も度々行われていました。(ラジオDJのピーター・バラカンさんの番組をお聞きになっている方々にはおなじみですね。笑)元々ゴスペルバンドであったThe Absolute Monster Gentlemenを率いての上品でかつ強烈なグルーヴィーサウンドは唯一無二。ここでは彼の代表曲「When You Get Back」を。

昔からこのバンドの大ファンであった筆者は、2019年3月から10月の間、ニューオリンズで行われていたすべてのライブに行きました。(笑)とにかく演奏スキルが高い。生で見るとよりその凄みを感じるバンドです。Boukou Grooveなど、バックメンバーが他にやっているバンドもとてもおススメです。

伝統的なニューオリンズピアノも得意とするジョン。プロフェッサーロングヘアの代表曲「Tipitina」を演奏しています。モダンでファンキーなアレンジはとても聴きやすいです。↓

ニューオリンズを代表するピアニスト、ドクタージョンが亡くなった2019年。ニューオリンズピアノ界の代表の一人として。ニューオリンズピアノの灯を絶やさないために。「頑張れ!ジョン!!」

「宇宙を感じさせる最先端のニューオリンズファンク」Galactic

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ギャラクティック(Galactic)
1994年、ギタリストのJeff Raines、ベーシストのRobert Mercurioが中心となり、彼らがニューオリンズの大学在学中に結成されたギャラクティック。ニューオリンズを代表するドラマー、Stanton Moore、トロンボーンのCory Henryら、強力なメンバーが在籍。そのサウンドはMeters,Dirty Dozen Brass Bandなどの伝統的なニューオリンズサウンドを基調としながらも、ロック、ヒップホップ、エレクトロミュージックなどが合わさった、どこか”宇宙的なサウンド”。

2018年から彼らが所有しているライブハウス、Tipitinaで行われるライブは常にお祭り騒ぎ。筆者もそのライブに行かせていただきましたが、その大迫力なサウンド、パフォーマンスに大満足でした。

このバンドの特徴として、バックメンバーはある程度固定されているものの、ボーカルは数年で交代し、そのボーカルによってバンドサウンドを変えてきたという歴史があります。

最近は女性ボーカルをメインに大迫力のサウンドを届けるスタイルですが、2012年この時のボーカルはCorey Gloverで、心温まるサウンド。このようなサウンドを聴くと「やっぱりこの人達もしっかり昔の音楽を通ってきているんだな」と実感。素晴らしい演奏とコンビネーション。こういうギャラクティックも、是非。

「ニューオリンズと言えばブラスバンド!」Rebirth Brass Band

ニューオリンズといえば、ブラスバンドの聖地!ブラスバンド紹介だけでも一記事書けてしまうくらいホントに多くのバンドがあります。今回は伝統があり、ニューオリンズで定期的にショーを見ることが出来るRibirth Brass Bandをご紹介したいと思います。

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リバース・ブラス・バンド(Rebirth Brass Band)
フィリップ・フレイジアと彼の兄弟、キース・フレイジアにカーミット・ラフィンズを中心に、ニューオーリンズ市内のトレメ地域の高校のメンバーと1983年に結成されたアメリカ合衆国ルイジアナ州ニューオーリンズのブラスバンド。セカンドラインにジャズ、ソウル、ファンクの影響を受けた、ニューオーリンズの伝統的なブラスバンド音楽(ニューオーリンズ・ブラスバンド)として知られる。

伝統+現代音楽のバランスが最高にかっこいいリバース。このアルバムは2012年度 Grammy Award for Best Regional Roots Music Albumを獲得しました。

そしてなんといってもブラスバンドの魅力はストリート演奏!こういう演奏が毎日どこかで聴けるニューオリンズは最高です!

「ニューオリンズでコンテンポラリーなジャズを聴くなら。」Donald Harrison 

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ドナルド・ハリソン(Donald Harrison)
1960年、ニューオリンズ生まれのアルト・サックス奏者。’80年代初頭にアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの一員として脚光を浴び、’84年から’89年にかけてはテレンス・ブランチャードとの双頭バンドでも活動。

ニューオリンズを代表するアルトサックス奏者、ドナルドハリソン。ジャズメッセンジャーの最後の世代に在籍。若手トランペット奏者、クリスチャン・スコットの叔父でもあります。卓越したテクニックを武器にスリリングなライブを繰り広げます。普段のライブではジャズも演奏されますが、ハービーハンコック系などのファンキーなナンバーも好んで演奏されます。

Big Chiefでもあるドナルド。マルディグラ(2月に行われるカーニバル)時期になるとインディアンのコスチュームに身を包み、彼の歌に続いて行進したり、演奏を繰り広げたりするのも見ることが出来ます。

「ニューオリンズを代表するジャズドラマー」Herlin Riley 

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続いてはニューオリンズを代表するジャズドラマーHerlin Raileyです。

1957年2月15日ニューオリンズ生まれ。3歳の頃からドラムを始めたRileyは大学を卒業後Ahmad Jamalのバンドや、Wynton Marsalis のバンドで活躍。George Benson, Harry Connick, Jrらのセッションにも参加。リーダー作も数々発表する他、大学や音楽学校で後進の育成にも務める。名実ともにニューオリンズを代表するドラマーである。

個性的なニューオリンズ音楽はこの独特なビートから生まれているといっても過言ではありません。

強烈なビートがある上に、とてつもなく繊細なドラミングを得意とするHerlin Riley 。ライブではタンバリンも多用します。

こちらは同じくレジェンドドラマーShannon Powellとのタンバリン対決。楽しい。。

ニューオリンズには本当に素晴らしいドラマーが多く、他にもStanton Moore, Johnny Vadacovichなど、紹介すべき数多くのレジェンドドラマーが活躍していますが、そちらは「ニューオリンズドラマー編」でまとめてご紹介しようと思います。今回はニューオリンズを代表するジャズドラマー、Herlin Riley でした。

「ニューオリンズの有名ライブハウスの中で生まれた最強ファンクバンド」Papa Grow’s Funk

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本編の最後にご紹介するのは大迫力のニューオリンズファンクを演奏するバンド、パパグロズファンク。ギターは日本、ニューオリンズでもレジェンドギタリストである山岸潤史さん。

このバンドはトップミュージシャン達が毎晩鎬を削るニューオリンズの有名なライブハウス"Maple Leaf Bar"で毎週月曜日に行われていたセッションライブによって生まれたバンドだそうです。
「月曜日のメイプルリーフは何かが起こる!」と多くの人が訪れていたというこのライブ。バンド結成のドキュメンタリーが作成されています。(英語)↓

残念ながらこのバンドは2013年に解散してしまいましたが、フェスティバル時期には度々再結成されたり、精力的に活動を行っているリーダーのJohn Papa Growsのバンドでは(少しトラディショナル寄りではありますが)同じようなサウンドを聴くことが出来ます。来日回数も多し。今後の活動にもチェックです。

本編は一応ここで終了ですが、もう少しだけ続きます。

まだまだ見れる!「ニューオリンズレジェンドミュージシャン編」

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ニューオリンズには本当に多くの素晴らしいミュージシャン達がいます。。もちろんレジェンド達も。ここからはまだまだライブを見ることが出来るニューオリンズのレジェンドミュージシャン達を短めにご紹介したいと思います!

「ニューオリンズの大御所と言えばこの方」ミーターズのベーシスト、George Porter Jr.

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ミーターズのベーシストとして、ニューオリンズR&Bを作り上げた立役者の一人。御年73歳でもその強烈なグルーヴは未だに健在!バリバリ中のバリバリです。筆者も何度もライブを見させてもらいましたが、特に凄かったのはセッションライブの時。他のメンバーもニューヨークなどで一線で活躍するミュージシャンだったのですが、大きく首を揺らしながら繰り出す彼の強烈すぎるグルーヴに皆タジタジでした。(笑)

この人に太刀打ちできる人はなかなかいないんではないでしょうか。世界ツアーの間にも毎週月曜日はMaple Leaf Barで演奏。こういった演奏を今の時代も聞けるというのはとてもありがたいことです。

「ニューオリンズの歌姫」Irma Thomas

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「ニューオリンズのソウル・クイーン("Soul Queen Of New Orleans")」アーマトーマス。ニューオリンズで各種行われるフェスなどでライブを見ることが出来ます。彼女のソウルフルでブルージーな歌声は聴く人の心をグッとつかみます。筆者も初めて生で聞いたときは素晴らしすぎて号泣。。

2015年の演奏。彼女のヒット曲メドレー。この時なんと74歳ですが、本当に素晴らしい歌声!

「ニューオリンズの老舗ブラスバンド」Dirty Dozen Brass Band

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1977年結成のニューオリンズ老舗ブラスバンド。現在のギターは日本人プレイヤーのTakeshi Shinmuraさん。伝統的なブラスバンドの雰囲気を残しつつも、ファンク、ソウルなど新しい音楽の要素を取り入れた音楽性は、その後のブラスバンドに大きな影響を与えました。来日回数も多し。(2018年札幌にいらしたときに、Kirk Joseph(sousaphone)と少しお話しさせていただいて、帰り際に「いつかニューオリンズで会おう」と言ってくれて、たまたま翌年本当に現地で再会できて感動したというのが個人的な思い出です。)動画はTiny Desk Concertでの演奏。ご機嫌なサウンドです。ずっと聴いていたい。。

「ニューオリンズが生んだグルーヴマスター」Walter “Wolfman”Washington 

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彼が作る音楽は、ブルースを基調にしながらもファンク、R&B、ジャズなど様々な音楽を織り交ぜた彼独自のグルーヴィーなサウンド。その音楽性は一言では言い表しずらいまさに”ウルフマンサウンド”といえることでしょう。御年77歳。しかしまだまだパワフル。最近でもヴァーチャルライブを行うなど精力的に活動されています。
ブルース、ソウル好きならヒットすること間違いなしのアーティストです。

彼の代表曲”Steal Away”
バンド(ロードマスターズ)もタイトな演奏でかっこいいですね~。

(個人的な話ですが)実は筆者、あるセッションでウルフマンさんとお知り合いになり、少しだけバンドにシットインさせてもらえる機会がありました。彼は音楽だけでなく人間としても素晴らしい方で、終わった後もアドバイスをくださったり、励ましの言葉をかけてくれました。。

「ニューオリンズのレジェンドブルースマン」Little Freddie King

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レジェンド編、最後はニューオリンズのレジェンドブルースマン、リトルフレディキング。御年80歳!綿花畑の仕事をしていた最後の世代の一人。ブルースの歴史を体現する最後の世代の方です。
そのスタイルは本当のオールドブルース。小節数は関係なし。自分が変えたいときに(違うストーリーを歌いたいときに)コードを変えるなど、バックミュージシャン側からするとハラハラものですが(笑)そのようなスタイルを貫き通している人です。多分このようなスタイルを続けている方は今世界に2人くらいしかいないのではないでしょうか?笑
筆者も何度もライブを見させてもらったのですが、リトルフレディのライブで驚いたのがこんなにも渋いスタイルであるのにも関わらず、ちゃんとお客さんたちを躍らせているところです。(おそらくこのような音楽を知らないであろう10~20代のお姉さんたちも躍らせていました。)
世界最大級のジャズフェス:ニューオリンズジャズヘリテイジフェスティバルにはなんと42年連続出場!!ジャズフェスのアイコンになっています。

コロナ渦においてもヴァーチャルライブで元気な姿を見せてくれました。ブルース界にとって本当に貴重な存在。これからもこのようなオールドブルースを歌い続けてほしいです。

まとめ

「(日本では意外と知名度が低い?)現役バリバリのニューオリンズ、スターミュージシャン達」いかがだったでしょうか?
動画のリンクなどからちょこっと音源を聴いていただいて、気に入ったアーティストを深堀りして頂けたら幸いです。(この記事を書いて本当に良かったなと思います。)
約8000字。これまで12組のアーティストを紹介してきましたが、まだまだ、まだまだ、紹介したいアーティストを紹介しきれてないのが現状です。。なのでこのシリーズ、不定期ながら続きます(笑)次は紹介しきれなかったアーティストの特集もしくは、各アーティストの掘り下げ特集などをと考えております。
長文になりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回からのシリーズもお楽しみに。
淺野卓人(Takuto Asano)

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