気になってる電力関係の公開データまとめ
この記事は Nature Remo Advent Calendar 2022 の21日目として書きました。Advent Calendar には他にも Nature Remo や Nature株式会社(以下、Nature) に関する様々な記事がアップされてますので、ぜひご覧ください✊
はじめに
私は Nature で事業開発(BizDev)という職種で仕事をしています。Nature をご存知の方はスマートリモコンの「Nature Remo」の会社だと認知いただいている方が大多数かと思いますが、実は Nature では Nature Remo で培ってきた IoT 技術とスマートホーム分野の知見を生かし、電力業界の課題解決(*1) に寄与しようと新規事業の創出を図っています。
本記事では
「Energy Resources - エネルギー資源」
「Front of the Meter - 電力系統側」
「Behind the Meter - 電力需要側」
という3視点(*2) から、私が普段から目にしていたり、今後扱ってみたい公開データ(*3) を紹介したいと思います。
Energy Resources - エネルギー資源関係
電力はその形態から「2次エネルギー」に区分されます。石炭・石油・天然ガス・原子力・水力・太陽光熱・風力など、加工されない状態で供給される「1次エネルギー」を転換・加工することで、電力という形態のエネルギーを得ることができます。日本の「1次エネルギー」自給率は2018年度時点で10%ほどに留まっていて(*4)、エネルギー資源の調達は大きな課題となっています。
本章では、主に「1次エネルギー」に関して私が気になっているオープンデータを紹介します。
NEDO - 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
研究開発に利用可能なデータをいくつか公開しています。
日射量データベース
では、以下の情報の閲覧が可能です。
洋上風況マップ
では、高精度のシミュレーションから得られる風況情報に加えて、水深、海底地質等の自然環境情報、港湾区域、航路等の社会環境情報など、洋上風力発電を計画する上で必要な種々の情報を一元化した「洋上風況マップ」が公開されています。
経済産業省 資源・エネルギー庁
エネルギー資源に関わる各種統計データのまとめサイトがあります。
Front of the Meter - 電力系統側
2次エネルギーである電力を創出し、私たちが日々電気を使う場所(需要場所)まで届けるためには「電力系統」を利用します。日本は沖縄や離島を除く大部分を1つの電力系統でカバーしていて、その系統内の発電量と消費量を常に一致させるという芸当で、電力の安定供給を実現しています。
2016年の電力自由化前後で、電力事業者の事業運営に寄与するため電力系統関連データのオープン化が広まった印象があります。本章ではそんな電力系統運営に関わる項目で、私が気になっているオープンデータを紹介します。
経済産業省
日本の電力の需給状況に応じて発令される「節電要請」や「需給ひっ迫注意情報・注意報・警報」などの情報がWebページに公開されます。
実際に2022年は6月26日から30日にかけて「需給ひっ迫注意報」が発令されました。
OCCTO - 電力広域的運用推進機関
日本のいわゆる 系統運用管理者 (Grid System Operator : GSO) で、電力事業者であれば必ずお世話になっている機関です。エリア別の各種エネルギー統計データを集約・公開しています。
系統情報サービス・でんき予報・広域予備率Web公表システム
から各種データの抽出・CSV形式でのダウンロードが可能です。
例えば、OCCTOの公開データ「系統情報サービス」の「需要実績 日別」を基に、直近1年間の日本10エリアと東京エリアのLoad Duration Curve 描くといった分析ができたりします。
JEPX - 日本卸電力取引所
発電部門と小売部門の電力自由化をうけて運営が始まった日本卸電力取引所のWebページから、卸電力取引に関するデータの閲覧とダウンロードができます。
取引情報
では、過去の約定価格等の情報をダウンロードすることができます。
発電情報公開システム
では、日本の発電所の稼働状況を抽出・CSVダウンロードすることができます。電気事業法に基づき、発電所は数年に1度「定期点検(定検)」を行います(その間は稼働停止)が、これらの予定・実績などを本サイトから確認できます。
Behind the Meter - 需要側
みなさんが日々消費している電気に関するデータであり、Nature が生業とする領域でもあります。エネルギー資源や電力系統側のデータと比較すると、よりリアルタイム性を持つデータを入手可能です。
スマートメーター の Bルートデータ
実はご自宅に設置されているスマートメーターと通信をすることで、ご自宅の電力需要データを入手することができます(*5)。
Nature が開発する Nature Remo E , Nature Remo E lite という HEMSコントローラーは、スマートメーターとの通信して電力使用量と電気料金の見える化目安の表示を実現しています。
また Nature Remo Cloud API という公開APIを用いれば、Nature Remo E シリーズをスマートメーターのリアルタイム値に近い電力データを取得することも可能です。ぜひご活用ください。
機器ごとの消費電力量
ご自宅の屋根に載っている太陽光パネルの発電量や、蓄電池の充電量、家の消費電力量を見える化する、ということができたら、電気の使い方を見直すきっかけを作れます。
各家電の消費電力量のデータの取得はまだまだ道半ばの分野ではありますが、 Nature が開発する Nature Remo E では ECHONET Lite という通信方式で「太陽光発電システム」「蓄電池システム」「EVパワー・ステーション」と通信し、電力データの見える化を実現しています。
なお、Nature Remo E の ECHONET Lite API の一般公開はしていませんが、もし事業用途で利用されたいという方がいれば Nature へご相談ください。
終わりに
まとめてみると、誰しもが多くのエネルギーデータの取得ができる世の中になってきていることがわかります。データ公開に尽力いただいた方々ありがとうございます…!
他方で、データの活用のしやすさという点では、公開形式などにまだまだ改善の余地がある気もしていて、ここはITの知見を持った方々と電力業界とが歩み寄ってデザインしていく必要があるのだと思います。
Nature株式会社では、Nature Remo に代表される IoT 技術と、本記事で紹介したようなエネルギーデータ等を活用して新規事業を創出し、電力業界の課題解決を図っていこうと奮闘中です。ぜひ一緒にやりましょう✊
注釈
*1. 電力業界が抱える課題は大まかに『「脱炭素化」と「電力の安定供給」の両立の実現』という点にあります。その課題の要素として「間欠性を持つ自然変動電源ではあるが、温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギー」を使いこなす必要があり、そのために Nature では「電力需要のコントロール」技術の社会実装に努めています。
*2. Meter とは需要場所に設置される検針メーターを指します。電力業界視点で検針メーターの手前側(系統側)を Front of the Meter、向こう側(需要側)を Behind the Meter と呼びます。
※3. 本記事で紹介しているデータの利用に関しては、各種データソースの利用ルールに従ってください。本記事は、紹介先のデータの利用権限を保証するものではありません。
*4. 日本のエネルギー自給率は2018年度で 11.8%。
*5. スマートメーターと通信をするためには、みなさん自身で各電力会社(送配電会社)へ申し込んで、ID、パスワードを入手する必要があります。詳しくは以下の記事をご覧ください。
https://support.nature.global/hc/ja/articles/900003174606