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OCCTOの公開データから日本の Load Duration Curve を描く

記事の要約

・OCCTOの公開データを使って、日本の直近1年間のLoad Duration Curve(10エリア合計、東京エリア)を描きました
・東京エリアのLoad Duration Curveからは、需要のピーク(5.6万MW)と最も需要の低い時間(2万MW)で2.8倍電力需要に差があり、直近1年(8736時間)のうち5万MWを超えたのはわずか121時間であることがわかりました
・Load Duration Curve に対して各電源がどれぐらいの供給していたかの内訳の可視化は今後の検討事項としています

この記事を書いた背景

電力システムに強めの関心がある私には、趣味や仕事で電力システムのこれからを考える、なんてことがあります。その中で、国や地域のLoad Duration Curve (Power Duration Curve, 日本では デュレーションカーブ、負荷持続曲線、需要持続曲線とも呼ぶ)の傾向を捉えておくことは非常に重要なことだなと思うに至りました。

Load Duration Curve (デュレーションカーブ/負荷持続曲線)
日・週・月・年等対象とする期間の負荷について、その発生した時間とは無関係に大きい順にならび替えた曲線のことを負荷持続曲線という。電力需要の大きさとその持続時間との関係を示すために使用される。対象期間により、日・週・月・年負荷持続曲線がある。需要持続曲線ともいう。
出典:「電気事業事典」電気事業講座2008 別巻

Load Duration Curveは「日本の1年間の電力需要がどのぐらいの量、どのぐらいの時間あるのか」の内訳を可視化するグラフです。私は Load Duration Curve を「ピーク需要に対して確保すべき電源の容量と種類」を考える一助になるものと理解しています。

なので、日本の Load Duration Curve が描かれた資料を探していたのですが、私が探した限り Load Duration Curve の概念図が描かれた資料はいくつか存在するものの、日本の実績データを元に作成された Load Duration Curveは見当たらず(簡単にはアクセスできず?)、定量的にどのぐらいの規模で何時間のピーク需要が存在するのかわからない状況でした。

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出典: OCCTO (2019年10月) 「容量市場の概要について」
https://www.occto.or.jp/choutatsu/2019/files/200117_ippan_youryouSS_besshi3_gaiyo.pdf 

Load Duration Curve を描いてみる

なので今回、OCCTOの公開データ「系統情報サービス」の「需要実績 日別」を基に、直近1年間の日本10エリアと東京エリアのLoad Duration Curve 描いてみました。(当初 Power Duration Curveという名前で覚えていたので、当時のツイートはそっちで呼んでいます。)

東京エリアの直近1年間の電力需要から作成した Load Duration Curve を下図に示します。需要のピーク(5.6万MW)と最も需要の低い時間(2万MW)では、2.8倍も電力需要が異なります。また、5万MWを超えたのは直近1年のうちわずか121時間に留まっています。

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1年間での需要の規模と時間の内訳を示すLoad Duration Curveは、各エリアでどれだけの電源をどの構成で確保するべきか、あるいはどれだけのピークカット/ピークシフトをデマンドレスポンス(需要側の消費電力の調整)に頼れるのか、といったことを考えていく材料となるはずです。

次にやりたいこと

個人的には、この Load Duration Curve に対して各電源がどれぐらいの供給していたのかも可視化できればと考えています。日本の第6次エネルギー基本計画では「2030年までに再生可能エネルギーで電力需要の36~38%を賄う」ことを目標とされていて、2019年度次18%であったことを踏まえると、今後電源の廃止/リプレイスや新規の電源開発という出来事が多く生じると予想されます。各電源の電源供給がいつどのぐらいあったのか、をLoad Duration Curveに照らし合わせて眺めることは、電源開発計画やデマンドレスポンスの設計をする上で参考になると考えます。

どうやら現状公開されている電力データでは「1時間ごとの供給実績(kWh)」はあるものの、「1時間ごとの供給実績(kW)」はないようです。ひとまず「1時間ごとの平均供給実績(kW)」であれば「1時間ごとの供給実績(kWh)」から算出できるので、こちらを使ってLoad Duration Curveに対する供給力の内訳も可視化できないか計画中です。
(1時間の中で、どれだけ再生可能エネルギーの出力が変動したのか、という観点もあるかと思うので、参考程度の資料となりそうですが)


終わりに: IoT技術を応用した自動デマンドレスポンスサービスを一緒に作りませんか?

前述した「デマンドレスポンス」とは、需要側の消費電力を調整する試みです。近頃の再生可能エネルギーへのエネルギー転換を進める中で生じている「電力の需給ひっ迫」の解消に寄与しうる試みとして、電力業界で注目を浴びています。

一方デマンドレスポンスには、住居者による細かい節電行動の手間を要するという課題や、節電行動をとったことで過度に住まいの快適性が損なわれるのではという懸案もあります。

私は今働いているNature株式会社では、スマートリモコン Nature Remo とHEMSコントローラー Nature Remo EといったIoTデバイスを活用した自動デマンドレスポンスのサービスを開発しています。

需給ひっ迫が想定される時や需要のピーク時に、家々で一斉に「自動でエアコンなど家電の消費電力を調整」してくれたら、どのぐらいひっ迫解消に寄与できるのか。同時に住まいの体験はどう変わるのか。
「未来の電気の利用を、IoT技術でどのように変えていけるのかをいち早く検証してサービス化する」仕事をしています。

Natureではソフトウェア/ファームウェア/ハードウェア/データ分析/SREのエンジニア職から、デマンドレスポンス含む電力事業を拡大していくビジネス職まで幅広く(とても積極的に)採用しています。

未来の電気の利用方法を一緒に作りませんか?
以下の募集中のポジションや事業についてご興味ある方、ぜひ私のTwitterのDMまでお声掛けください。




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