「中入り」「外入り」って結局どういうことなのって奴 Apex机上の卓論


新パッチ到来でも、(おそらく)大きく変わることはないもの

本日26日、既にApexではブラッドハウンド、バンガロールの修正パッチが投入済み。前日に行われたFFLでは実に様々な今後を見越した構成(一部デバイスすら変更したエキシビションマッチを行っていたファンサービス精神にあふれる闇の帝国チームもあった)が見られた。個人的な見解でいうと、ランパートとG7のコンビネーションは実に有効であると思う。セルを消費し融通の利かないセンチネルを押しのけることはほぼ確実なG7。ワットソンを押しのけてランパートを採用する価値はあるのか、といった新たな選択肢が増えたことに競技配置ロールマニアとして興奮を隠せない。

本日書きなぐるのは、所謂「ムーブ」という部分。
競技を熱心に追いかけているファンでなくとも、カジュアルなランクプレイで耳にすることもあるワード。中入り、外入り、キルムーブ……様々な用語は飛び交うが、実際にその特徴と狙いを理解するには感覚とセンス、熱心な勉強が必要となる……これも日本Apex競技界隈あるあるといえる「常識のように語られるが、決して整備されていないワード」の一つだろう。そして何より、Apex競技を構成する実に重大な要素だ。
外入り(この時点ではキルムーブと呼ばれていた)の基礎に関しては、なんと素晴らしいことにFC Destroyのコーチを務めていたsigluss氏によるnoteが公開されている。

競技シーンにおいての基礎、獲得ポイントを考慮した上での戦略戦術について重要なことがまとめられているため未読であれば是非一読をお勧めする。
このようなトッププロが既にまとめている記事がある上で僭越ではあるが、私はこれとは少し違う形……競技を楽しむ上で、ぼやけてノイズのようになっている部分を解消する目的でこの解説を書きなぐることにする。それは「APACNとNA等、他リージョンとの違い」だ。長ったらしいが、どこが違うのか?という部分を自らが明確にするためである。プロリーグ段階での選択自体を批判する意を含むものではない。当然どのムーブにどのような利点があって、何が求められ、どういう時に強いのか?といった競技シーンを楽しむ……自分なりに脳内で解説者となり、観戦の時間をにぎやかに過ごす一助となれるようにも務める。
現在段階(Y4SP2プロリーグ終了時)であるため、今後変わっていくこともあるだろうし何度も繰り返してはいるが競技ファンであり関係者、実績があるわけではない。間違っている点が含まれているかもしれないことは、留意願いたい。

ムーブの種類

外、中の二種類で考えてしまうと勿体ない

主に外ムーブと中ムーブという二種類で語られることが多いチーム戦略。それが実情に相応しいかと言えば……少し勿体ないと感じてしまう。実に大まかな区別であり、そこから分岐するのだ。海外選手のLFTや、選手募集のツイートなどを見たことがある方ならば「ハイブリッド」というワードを見たことがあるだろうし、
「Zer0 Hal genのFalconって、中なの?外なの?」
「FnaticのLykqはAPACNで中はしないっていっていたけれど、中っぽい動きの時もあるよね?」
といった疑問を抱いた競技ファンもいるだろう。
競技シーンを見ていて自分なりに考えた結果、外にも種類があり、中にも種類があり、それをマッチ、安置によって使い分けるチームもある。外ムーブのチームとひとくくりにされるチームでも、狙う場所やマッチごとの動きが大きく異なる。個人的にこれはチーム(主にIGLやコーチ)の能力を考える上で非常に重要であると考えている。同じ外でも目的が大きく違うからだ。そして何より用語は多ければ多いほど楽しい(悪いファンの特徴)ため、今まで聞いたこともないような分類になる。私もどういえばいいのかがわからないために勘弁願いたい。

プロリーグのチームは実に多彩だが……実は。

狙うポジションで区別する

現在のApex競技シーンにおいて、ムーブの区別は狙うポジションで区別するものだと私は考えている。安置の外を回っているから外ムーブといった区別ではないということで、キルポイントをたくさん稼いでいるから外ムーブ、といったことでもないということだ。何故この区別で考えるか、Apexのルートは無数にあるが狙うべきポジションは限られた数しかないからである。ポジション、エリアを奪い合うことが現在のApex競技シーンの本質だ。目的のポイントを獲得するために、必要なポジションはどこでいかにしてそれを成し遂げるか?というマクロの一要素がムーブである。(マクロミクロの解説もnoteにあるので、よかったら見てほしい)つまり自チームが選択したPOIとそのマッチの安置状況を見た上で、最善を見極め切り替えることも優れたチーム能力があれば可能だということでもある。

青矢印→外ムーブのチームが狙う。安置端のポジション。
ハート→中のチームが狙う。安置端とチャンピオンポジションの中間。
緑星→外中と中のチームが狙う。チャンピオンポジション。
黄色星→外中と中のチームが狙うもう一つのチャンピオンポジション。

これは第一収縮開始前、既に安置が近いポジションのチームが第二安置エリアへ集まり始めたタイミングでのスクリーンショットだ。そこに安置から遠いチームがどこを狙って動いたか?という図である。基本的に競技シーンにおいて大まかなマッチストーリーは第二安置を読んだタイミングから、第一収縮途中までに決まる。外ムーブと言われているNOEZFOXXのルート取りが中へ向いていることがわかるように、チームの狙いが垣間見えてくる。この図解で表したのは、当マッチにおけるムーブごとで狙うポジションの簡略的な印だ。実際にこのポジションがチャンピオンポジションかどうか、というのは……置いておいてほしい。
この図を基にして、各種類の狙いと特徴を解説していく。

外ムーブ(キルムーブ、大外ムーブ)

青矢印、安置端のポジションを狙うのが外ムーブチームだ。
キルムーブによってポイントを安定させ、チャンピオンポジションへ挑む権利を獲得する狙いがある。

APACNプロリーグ後半において、ENTER FORCE.36は一貫した外ムーブのチームだった。
近ければ迎え撃つのみ。弾くだけではなく、積極的なファイトも必要だ。
奪われてしまえば、あとは展開任せの運ゲーとなるか……時を見計らい、逆襲するか。
ランドマークの物資次第では、逆に不利となってしまうこともある。

大まかな特徴
基本的なApexの安置構成において、第二安置の接点となる場所であったり方向的に他チームの数が薄い安置端のポジションを狙う。

利点
第二安置を読むことで自チームのマッチプランがほぼ確定し、どのマップ、どの安置形においても狙うべきポジションが明確。
ルート上で補充が行いやすく、物資が整う。
必ずファイトが起きるため、キルポイント獲得計算が容易。
チームのミクロ能力を最大限に発揮できる。

外ムーブは明確だ。狙うべきポジションは一つで、そこを奪い合うファイトに勝つのみ。それに備えるために安置が遠ければ大回りで物資を調達し、ファイトに強い構成を組んで挑む。近ければ優位なポジションへ陣取り、敵チームを迎え撃つのだ。
注意すべき点といえば、他の外チームにとってもそれが同じであり必ずファイトを行う必要があること。遠くからそこへ行く場合、狙うべきポジションには100%他チームがいる。安置が近ければ、そのポジションを狙いに他の外ムーブチームが(たまに色気を出して中入りのチームも)そこを狙ってくる。当然中のチームが通り道として選択するエリアにもなるだろうし、その際の判断も重要だ。確保したまま弾くのか、一旦離れて通すのか、前に出て打ち倒すのか。マッチによっては介入の連続するハードなポジションだ。
それ以降の安置に関して、運や研究に左右されにくいポジションであり上位成績が狙える。チャンピオンポジションを争う権利をファイトで得るスタイル、ともいえチャンピオンはマッチの展開によって左右される部分にもなりやすい。(研究やIGL性能で運を補うことは可能で、逆もまた叱り)
IGLとコーチの準備も多少はマシ。基本的にはファイトに勝つか負けるか、という一点のみのファイト資本安定策。

安全策への切り替えが難しく負けたら何も残らない?そうだね。
このムーブを選択していながら、本番でポジションファイトを避けたりしてしまうと……
?「スクリムイキって本番チキって」
というそれになる。

APACNではSP2プロリーグWeek5で特に後半にかけてENTER FORCE.36が一貫して成功。
代表的なチームはEMEAのallianceや、FNATICが安置が遠い際にSP1オフラインで行った。

外中ムーブ(ハイブリッド?、チャンピオンムーブ)

外中ムーブは、外チームとは違う狙いのチームだ。
マッチチャンピオンを獲得する、というポイントの最大化がテーマである。

第三安置まで読むことができれば、ポジションの二択も答えに困ることはない。
確実に選択肢を絞り込めるマッチがあることも利点だろう。
近ければ、早期にそのエリアを確保し守り抜く中端ムーブと同じ狙いだ。
時に外ムーブのチームが狙うポジションと被ることもある。
ランドマークの物資量が十分でなければ守り切ることは難しいが、そもそもそれを前提としたムーブだ。

大まかな特徴
マッチチャンピオンを獲得するために必要なポジション、所謂チャンピオンポジションを狙う。

利点
自チームの能力全て(マクロ、ミクロ)を最大限に発揮できる。
ルート上で補充が行いやすく、物資が整う。
ポイントの最大獲得。
第三安置まで把握することができるマッチもある。
安置が寄った際にランドマーク差を最大限に発揮できる。

外中ムーブは、まさに勇者の戦術。安置の配置や運を能力でねじ伏せ、常にマッチの勝者となることを目的としているチームが選択する方法だ。どんなマッチであろうともチャンピオンポジションを奪い、確保し、勝利する。全てにおいてチームが優れているという自信があるのなら、この方法を選択しない手はない。道中で物資を蓄え、情報を集め、そのリソース差を持って敵を粉砕するのだ。
当然求められる基準も一番高く、多くのチームが狙うポジションであるために競争相手も多い。外ムーブのチームと同じポジションになるときすらあり、間違いなくそのポジションを奪うファイトが必要だ。大回りをする時間のないポジションを狙う必要のあるマッチもあるだろうし、近いマッチもあることだろう。
ああ、強力なランドマークが必要だ。潤沢な物資を携えた敵チームに対抗でき、その位置だって重要になる。
主張し続け、相手を引かせる力と上位のピック順と適切な知識。ならばチームマクロ性能が試されてくる。
チャンピオンポジションはどこか?どのタイミングで仕掛けるか?どのルート取りなら、どこでそれが狙えるのか。その際の敵チームはどこか……。
適切に把握できていなければ、安定することはない。運やファイトで補填することも多少はできるが、肝心なのはチーム全体の能力である。
他にも利点があり、途中で安全策へ変更することも可能だということ。チャンピオンポジションの獲得が困難であると見た際には、そのマッチのポイントを最大化するための優れた判断も必要となる。

このムーブを選択していながら、常に安全策へ流れてしまうと
?「APACNはリスクを嫌う」
?「どうせお前らはFNATICの下位互換なんだから」
と言われるそれとなる。
コーチ、アナリストの力が特に試されるスタイルであるため、チームが適切な選択肢を取れていないと……というやつでもある。

代表的な成功チームといえば、Zer0、Gen、Halをコーチzz(えっまだコーチだよね?)が支え、最大難易度と言われるNAで圧倒を続けるスーパーチームFALCON。APACNを支配するLykq、satuki、YukaFを擁しコーチマッスルが構える大帝国FNATICのプロリーグか。

中ムーブ

中ムーブは可能な限り(理想は最後まで)ポジションファイトを避け、巻き込まれないポジションを早期に獲得するのが狙いだ。

NewJは見事にオフライン進出を確定させた。

大まかな特徴
プレースメントポイント(順位)を全マッチで最大限獲得するためのポジションを早期に獲得する。

利点
チームのマクロ能力を最大限に発揮できる。
必要なランドマークに求める基準が違い、希望が通りやすい。

中ムーブは、研究と判断が必要な研鑽の結晶。必要な要素が他のムーブと大きく異なり(流用は可能だろうが)、すぐにそれと行えるものではない。しかし効果は絶大だ。優れたIGLを擁しているだけでリージョンを突破できる可能性すらある。無駄なファイトで無駄に散っていく相手チームを横目に、時にはキルポイントを横取りして稼ぐのだ。寝ながらにして入る収入が、他人が必至こいて稼いだものを横取りすることは更に素晴らしいのはApexも人生も同じである。何もない私がそれを手に入れようとするとそりゃあ大変、というのも同じ。
狙うポジションはチャンピオンポジションと安置端の中間、ポジションファイトが発生せず、その方向を現在の保有者によってカバーしてもらえる安置中央(理想は最終まで!)。そんなおいしいポジションは早い者勝ちであり……当然、その判断を誤ったならば言うまでもない。
どの安置であっても迅速に向かえるランドマーク、ランドスライド等のPOIも喜びとなるがその代償は貧弱な物資。迅速にポジションへ向かうため補充も見込めない。フラットファイトなんてもってのほか、ポジションファイトをする物資すら事足りないときもある。貧弱なランドマークで安置が寄ってしまうと、逆に不利となることすらある。限られた物資を最大限に生かすために、クリプト構成で常に状況を確認(ビーコンやコンソールも使える)するのはいいアイディアかもしれない。どうするにせよ、その瞬間を確実に生かせる優秀なプレイヤーが求められるだろう。いずれ訪れるチャンピオンファイトにも、勝てるに越したことはない。

早期にヴァルキリーなどを用いて入るか、ポジションファイトを前提とした構成で挑むか。第一希望ではなく、空いていたポジションで流れのまま座して受けるのみならば……。
?「ボールをよけ続けるドッチボールチームみたい」
というやつになる。

代表的な成功チームはNewJ。見事に彼らは成し遂げた。
NAではCCEがランパートを用いてこの構成でチャレンジをしている。

中端ムーブ(中キルムーブ)

中端ムーブは、早期にチャンピオンポジションを獲得するスタイルだ。そのためにポジションファイトが必要ならばそれを行うし、将来のリスクを減らすため付近のチームへアグレッシブに仕掛けることもある。

一番いいところを、一番先に取りに行く。
他のチームがいるならば、それを奪い取る……至極全うな狙いだ。

大まかな特徴
チャンピオンポジションを早期に獲得し、周囲のリスクをコントロールすることでチャンピオンを狙う。

利点
チームのミクロ能力を発揮しやすい。
チームのマクロ能力を最大限に発揮できる。
ランドマーク差を最大限に発揮できる。
安置が寄った際に効果大。

中端ムーブは、多くのチームが理想としているムーブといえる。優秀なランドマーク(物資、位置によるアドバンテージ)を最大限に生かし、早期にチャンピオンポジションを確保する。そのために立ちふさがる敵チームは薙ぎ払うし、将来的にリスクになりそうなチームにはアグレッシブにしかけ立ち向かえないようにする(欠けを作ってしまえ!)のだ。ゲームをコントロールし、全てを手中に収めたまま勝利する。外中ムーブが勇者の選択なら、こちらは王道の選択肢といえる。全ては我が手中の中に、というやつだ。
求められるものは外中ムーブに近く、全体的なチーム性能。優秀なマクロチーム……コーチやアナリストが共に助けになるか、スペシャルなIGLが担うのか。当然アグレッシブなファイトに勝ち切れる能力が必要だ。勝たなければチャンピオンにはなれない。ランドマーク争いはとても激しく、その差が勝敗に直結することも珍しくはない。スーパーIGLがプランを一手に担いファイトマンたちを率いているというチームなら、恐らくこれだろう。スペシャルと評価されるIGLが好む方法でもある。
柔軟な選択肢が常にあり、チャンピオンが叶わないとなれば現状の最大化が可能なことも外中ムーブと同じだ。違いは外を回るか、早期に中へ移動するかというと少し違うかもしれないが、おおよそランドマークの位置で決まる。

APACNにおいても多いように思える選択だが、空いていたら入りますというチームが多く、他チームの動向にも左右されるため一概には言えないが……。
?「ハイリスクローリターンの動きがない」
という某コーチのそれは、恐らくこの部分でもある。

代表的なチームはAPACNでいうと、世界での中入りFNATICだろうか。開幕前プロスクリムヒューズ構成時であったり、安置が寄った際もそれである。SweetのLGは、常にこれだ。

おわりなまとめ的なあとがきなそれ

基本的にどのムーブにおいても、選択しているチームが多ければ多いほどそこが不利になる。
中入りが世界では通用しない、というのではなく多くのチームが理想としているのは中端である。
よって理想論は常に中端ムーブだが、ランドマーク争いが激しく安置運にも左右される。よって常にチャンピオンを狙う外中ムーブが理論上は安定する。
ランドマーク差やいかなる安置でも安定させるための様々な工夫。それが中ムーブや外ムーブである。
ファイト能力、ミクロベースを必要としない方法は基本的にない。中ムーブには膨大なチームマクロが必要になり、別方向のミクロが求められる。
中端ムーブは純粋にマッチのアドバンテージを生かせるため、ミクロベースを補うこともできる。更に研究でそれを上乗せすることもできる。

なんにせよマッチ状況で適切なムーブは変わる。それを柔軟に選択できるチームこそが優位に立つのだ。
結局何が言いたいのかもわからない取っ散らかった文章で申し訳ないが、そういうことである。


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