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越境のための役割分担

今回は新規事業開発を進めていく上での「役割分担」についてまとめます。新規事業に向き合う中で「役割分担」や「連携」について課題を感じる方々にぜひ読んでいただければと思います。

「越境」の重要性と「表面的な越境」の結果

以前「新規事業で商売の感覚を得る」という記事で、新規事業は「人数が少ないために、一人ひとりが多数の役割や機能を担う必要が出てきます。具体的には、PM、リサーチ、マーケティング・営業、システム開発、採用・育成、ファイナンスなどを、主担当は決めつつも少人数でカバーしあいながら進めていく必要があります。」とお伝えしました。

新規事業はそれぞれの役割・機能をお互いに「越境」して進めていくことが必要ですし、重要です。一つの役割・機能だけを担うメンバーでチームを構成すると、それだけで人数の多い重厚なチームになり、コストがかさんでしまいます。また、メンバーが増える毎にコミュニケーションの経路が増えてしまうので、連携が大変になります。

そういった背景で「積極的に越境しよう」という掛け声に違和感はないでしょう。ただし、「越境」をするためには「境」が必要です。みなさんのチームは「境」が明確になっていますか?

「境」が不明確なために、チーム内で「え…これはあなたがやるんじゃないの?」「これは自分が越境するところじゃないだろう」となっていませんか?

「境」としての「役割分担表」

先述の通り「越境」のためには「境」が必要です。具体的に「境」を決める方法は、ベタですが、役割分担表を作成し、関係者で合意することです。

このように縦軸を機能/業務、横軸を役割/メンバーとし、誰が何を行うのか明確にします。

より明確に誰が何を行うのかを可視化する場合は、表中にR・A・S・I・Cを書き込むとよいでしょう。

RASICとは、

  • R : Responsible(実行責任)

  • A : Accountable(説明責任)

  • S : Support(支援)

  • I : Inform(報告先)

  • C : Consult(協業)

という役割を表しています。

どうしても一つの機能/業務を複数の役割/メンバーで対応することもあります。その場合、そこでお互いがお互いに「相手がやってくれるだろう」という「お見合い」を避けるために、誰が実行責任を持ち、誰がサポートし、誰と作業をともに進め、誰が、誰に対して説明するのか、を明らかにしておいた方がいいでしょう。

とは言え、最初から細かく定義するのは大変なので、まずはざっくり主担当・副担当を決める進め方をおすすめします。

「役割分担」の3段階

Relicで社内外さまざまなメンバーとプロジェクトを進めていく中で、この役割分担は3段階必要だということがわかってきました。

  1. 箱単位の役割分担

  2. 役割/専門領域単位の役割分担

  3. 業務単位の役割分担

1. 箱単位の役割分担

「箱単位の役割分担」とは、クライアント/パートナーと自社、あるいは自社内のA部門とB部門の分担を指します。会社もしくは部門という「箱」単位で基本的な分担を決めておく、ということです。3つの分担のうち、最も大きな分担です。

ここがうまく設計・合意できていないと、この後ご紹介する、より細かな分担は設計も運用も難しくなります。まずは先述の役割分担表を使いながら「箱単位の役割分担」を明確にしていきましょう。

2. 役割/専門領域単位の役割分担

次の「役割/専門領域単位の役割分担」とは、プロジェクトチーム内での役割分担です。「箱単位の役割分担」を踏まえつつ、個々のプロジェクトメンバーのスキル・経験や稼働比率を考慮して分担を決めます。

「箱単位の役割分担」では基本的にA部門が担うとしていたX業務を、メンバーの特性・状況を踏まえてB部門のCさんが担う、といった調整を行います。こちらも先述の役割分担表を使いながら分担を明確にしていきます。

ただし、縦軸の機能/業務は先ほどよりも細かく、横軸はこのプロジェクトの具体的なメンバー名になります。

3. 業務単位の役割分担

最後に「業務単位の役割分担」です。新規事業開発を進める中で新たに発生した業務や、当初想定していなかった業務の分担を指しています。プロジェクトの大まかな役割分担は「役割/専門領域単位の役割分担」を通じて役割分担表にまとめたとしても、それだけではカバーできない業務がどうしても発生します。また、基本的な分担は決めていても「今Aさんが複数の業務を並行していて、X業務まで手が回らない」といったことも出てきます。

これはその都度、チーム内で議論して分担を決めて対応していく必要があります。ただ、「箱単位の役割分担」「役割/専門領域単位の役割分担」を決めていれば、「業務単位の役割分担」はある程度発生を抑制できるのがポイントです。

冒頭に書いた「え…これはあなたがやるんじゃないの?」「これは自分が越境するところじゃないだろう」は多くの人が経験したことがあるのではないかと思いますが、まず「箱単位の役割分担」「役割/専門領域単位の役割分担」ができていないことが多い。

そして都度調整しなければならないことが増えてきて「あの人はあまり気が利かない」「こっちはもっと多くの仕事をしているのに」といった不満が積み重なり、コミュニケーションが減り、不満を解消する機会が減るという悪循環になりかねません。

まとめ

新規事業開発は何が答えかわからない、フットワーク軽く動くべき、という意見は正しいと思いますが、それを言い訳にして、既存事業では当たり前に実施しているであろう役割分担がないがしろにされているのではないか。そう感じることが多く、今回の記事をまとめました。

この記事も参考にしていただき、「越境」するために「境」を決め、メンバーのモヤモヤをなくし、チームの本質的な活動に注力することに貢献できたらこの上ない喜びです。

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