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地方創生とビジネスモデル考

先日、久しぶりに実家のある愛媛県松山市に帰省しました。

松山に限らず、ふと地方に来てみると、東京の普通が普通じゃないことを感じますね。海外でも同じことが言えて、言い古された話ですが、日本の普通が普通じゃないことがわかる。コロナ禍でこのような「相対化」の機会が減ってしまったので、これからちょっとずつでも意識して増やしていきたいものです。

さて、今回の記事ですが、地方創生において考えるべきビジネスモデルについて書こうと思います。地方創生、事業開発にご興味のある方、ぜひご覧ください。

地方創生の課題と対策

総務省・富士通総研社が出している「地域・地方の現状と課題」などのレポートを見ると、概して人口減少、労働力不足、産業の衰退が連鎖していると言えそうです。

松山では、巨大な工場が閉鎖になり、近くの飲食店・商店も閉まってしまい、さらに働く場所がなくなり…という状況があります。

同じく「地域・地方の現状と課題」によると、「地域活性化・文化振興」という課題に対して、

  • 地方自治体に関心のある人を抽出しマッチングする

  • 観光客の移動ルートを分析して、複数の観光地や交通事業者が協力して対策を実施する

  • 観光プランを最適化する

といった方向性が示されていますが、やや外部からの流入に頼った形に見えます。「国土交通白書 2020」の中の「地方創生・地域活性化に向けた取組み」でも同様のことが書かれています。

その他、「地方創生 事例集」では、輸出拡大の事例が多く、域外・国外からお金を外部から獲得するという事例が多く見られます

地域内乗数というKPI

地方創生の具体的な取り組み内容や事業によってKPIは変わってしかるべきですが、あまり知名度が高くなく、かつ、ある程度どのような取り組みでも意識したいKPIとして「地域内乗数」というものがあります。

ここの章は

に書かれていることをベースにします。

「地域内乗数」というのは「地域内でお金がどのくらい回っているか」です。例えば、自社が受け取った100万円が、地域内の労働者に35万円、地域内の仕入先に35万円、その他、地域外の関係者に30万円支払った場合、70万円が地域内に回ったことになります。1円稼ぐと1.7円地方に回り、地域内乗数は1.7と計算されます。

3巡目、すなわち自社を1巡目として、自社の仕入れ先の仕入れ先まで含めた地域内乗数を"LM3"(LMはLocal Multiplier=地域内乗数の意)と呼び、地域/業者の現状評価や比較をする際に使われているようです。

詳細はこちら。

「地産地消」ではなく「地消地産」

これも『地元経済を創りなおす――分析・診断・対策』に書かれている内容ですが、「地域内乗数」をKPIに置くと、「地産地消」ではなく「地消地産」が地域経済活性化に有効ということになります。

「このグローバル化した時代に国内外どころか地域内外にどこまでこだわるのか?こだわることができるのか?」という意見もあるかもしれませんが、すでに消費が明らかなものを域内で生産することで、食品であれば「新鮮・旬」につながるかもしれませんし、モノの移動が減れば、コストメリットにも、温室効果ガスの削減にもつながる可能性があります。

ビジネスモデル上の目配り

もう少し事業開発の具体的な話を。

事業開発の際に、ビジネスモデル図という形で「関係者」「関係者間のモノ・情報・お金の流れ」をまとめ、実現性や有効性を明らかにすることがあると思います。

その際、自社を中心とした仕入先だけでなく、仕入先の仕入先にも目を向け、自社の支払ったお金が地域内で何回転するのか。「地域内乗数」に目を向けていくことで、新たな事業による地方創生にも好影響を与えることができると思います。

地域創生の場合は、事業収入による収益化を諦め、補助金に頼る事業が多いという声もあります(参照:木下 斉 著『まちづくり幻想 地域再生はなぜこれほど失敗するのか』)が、その点については先述の「地消地産」という切り口も用いながらマーケットと事業を見定め、さらにビジネスモデルに目配り、いかに域内にお金を回すビジネスモデルを構築することが求められています。

まとめ

今回、自分の帰省をきっかけに記事を書きましたが、株式会社Relicでは地方企業を中心としたアクセラレータープログラムの運営を通じた事業開発やクラウドファンディング事業など、地方創生に関する取り組みも実行しています。

様々な関与/推進の仕方がありますので、ご興味のある方はお気軽にご連絡くださいませ。


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