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エンタメの新規事業の方向性

前回「製造業の新規事業の方向性」をまとめました。今回は「業界/領域毎の新規事業の方向性」シリーズの第2弾ということで「エンタメの新規事業の方向性」をまとめます。

エンタメに携わる方はもちろん、新規事業開発全般でより具体的な考え方・事例を知りたい方もぜひご覧くださいませ。

新規事業の方向性(おさらい)

前回もご紹介しましたが、「新規事業の方向性」を検討する際にはまず「新規事業開発の目的」と「狙う事業領域」を整理・検討しておきましょう。

目的や会社として狙うべき/狙える事業領域によって、新規事業の方向性は大きく変わるためです。

キーチャートだけ再掲しておきます。

新規事業の目的(名和高司 著『パーパス経営』を参考に作成)
狙う事業領域

エンタメ業界とは

前回の「製造業」もさることながら、「エンタメ」も非常に幅の広い業界です。

『事業構想』の記事では、「映画、劇場、興行、アミューズメント施設、ゲーム、テーマパーク、カラオケ、旅行・アクティビティ、遊技(パチンコなど)、公営競技などが該当する」としていて、この記事ではさらに「動画」「マンガ」「音楽」などを含めた、より身近な範囲も対象とします。

エンタテインメントより広い「余暇」の市場は、「2020年の国内余暇市場規模は55兆2040億円と、前年比23.7%の減少」(日本生産性本部「レジャー白書2021」)」とのことです。

エンタメの新規事業の方向性

それでは「エンタメの新規事業の方向性」を示す地図を紹介します。先述の通り、エンタメと言っても様々なビジネスが存在するので、ここでご紹介する切り口や方向性以外ももちろん存在しますが、検討のベースとしてお使いいただければと思います。

エンタメの新規事業の方向性

ここでは以下の3つの軸を用いました。

  • 「コンテンツ」はテキスト、静止画、音声など、消費者が受け取るモノ・コト

  • 「価値」は消費者が感じる情緒的価値 or 機能的価値

  • 「消費者の行動」はその名の通り。例えばYouTubeやTikTokは消費だけでなく生産ができるプロダクト

何を、何のために提供し、消費者はどのように楽しむのかを軸にした地図です。RelicのO西さん、アドバイスありがとう!

コンテンツは「軸」と呼ぶのがやや不適切だと自覚しており、少し補足します。

あるエンタメを分解すると、複数のコンテンツを用いている場合があります。例えば「動画」の中には「テキスト」「音声」が含まれることが多くありますし、さらに「ゲーム」の中には「動画」含まれているケースが多くあります。ここで言及しているもの以外にもコンテンツは存在するでしょう。

なので、コンテンツのあり方は様々ですが、新規事業のアイデアを考える1つの進め方である「強制発想」のために、便宜的に1つの軸の上に並べています。

エンタメの新規事業の事例

先ほどの地図を用いて3つの事例を見ていきましょう。各事例の詳細は、情報源のWebサイトをご覧いただけますと幸いです。

各社の元々の主力事業を原点に配置するため、軸の中身の順番は適宜入れ替えています。

事例① ウォルト・ディズニー社の事業展開

もはや「新規事業」と呼んでもピンと来ないほどに浸透しているディズニーですが、事業展開の長い歴史を追うと新規事業の参考になります。

世界初の長編アニメ映画「白雪姫」に始まり、「ディズニー・ワールド」という体験を提供し、今ではDisney+でアニメを提供していたり、Huluへ出資をしたりして動画コンテンツ事業を強化しています。「消費者の行動」は同じ「消費」ですが、「コンテンツ」が変わっています。

「価値」軸が前後に行き来ているのは、コンテンツ消費者が関連しています。映画が「主に子どもを楽しませるための娯楽の1つ」だったとすると、ディズニー・ワールドは「子どもだけでなく、大人もより楽しめる体験」と言うことができ、情緒的価値の側面が大きくなるという整理です。さらにDisney+等になると「家事を行う間に子どもに大人しく楽しんでもらう動画」という使い方が増え、機能的価値の側面が大きくなるという整理です。

事例② バンダイナムコ社のトンデミ/VS PARK

バンダイナムコ社は8社が統合してできたエンタメ企業です。統合元の会社の1社であるナムコ社はアーケードゲームからアミューズメント施設への展開を長く取り組んでいますが、近年もトンデミやVS PARKといった事業に取り組んでいます。

アーケードゲームも(基本的に)2名で行いますが、さらに多くの人数で遊べる(=消費者同士の共創あるいは競争?)体験コンテンツ事業を展開しています。

事例③ ANA NEO社 SKY WHALE

ANA NEO社は、ANAホールディングス社配下のバーチャルトラベルプラットフォーム「SKY WHALE」を開発・運営する企業です。

これまで旅客事業、すなわち人を遠くまで運ぶという機能が主な価値でしたが、3D CGの旅行体験を提供することで情緒的な価値も提供する事業です。さらにバーチャルショッピングや、さらにその先に「医療・教育・行政」等の提供を予定しているということで、ゆくゆく総合的なコンテンツ事業の展開が想定されます。

医療や教育が実現できれば、「消費者の行動」は「共創」の要素も含んできそうですね。

テクノロジーによる進化の軸

上記の地図では、

  • 「コンテンツ」はテキスト、静止画、音声など、消費者が受け取るモノ・コト

  • 「価値」は消費者が感じる情緒的価値 or 機能的価値

  • 「消費者の行動」はその名の通り

という3つの軸を用いました。軸の候補として迷ったのが、スマホの浸透やセンサーの進化などの「テクノロジーによる進化の軸」です。みなさんの企業が展開している事業によってはこの軸が有効かもしれませんので、ご紹介まで。

例えば、NETFLIX社はレンタルビデオ事業もストリーミング配信事業も、コンテンツは動画ですが、スマホ/タブレットの浸透、ネットワーク環境の進化により、コスト低減利便性向上を実現しました。さらにそこで得た収益を映像制作に投下することでバリエーション拡大も実現しています。

もう1つ、TVer社も同様の背景により、録画せずに好きな時間に観たい番組が観れるという柔軟性向上を実現しています。

この記事の最後に

今回も念のための繰り返しになりますが、新規事業案を検討するときには、ご紹介した地図での強制発想だけでは不十分です。成果目標を見据えた事業領域の選定や、企業として取りうるリスクや投資、自社の強みや資産を加味した案検討も必要です。

ただし、「地図」を用いて構造的・意図的に新たな事業案を検討することもまた有効です。

テクノロジーの進化により業界構造や実現できることが変わり、コロナ禍で大きく様変わりしたエンタメ。今後、さらなるテクノロジーの進化や、コロナの反作用などで新たなエンタメが生まれてくると思います。

弊社Relicにはエンタメに強いメンバーも多数在籍しています。何かお困り事があればお気軽にご相談くださいませ。


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