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新規事業における自社の強みの考え方

新規事業のアイデアを考えたり、アイデアを企画に仕立てたりする際、「自社の強みをどのように考えればよいのか」という質問をいただきます。自社のことだからこそ、認識するのが難しい「強み」。

製造業やエンタメにおける「新規事業の方向性」(製造業についてはこちら、エンタメについてはこちら)をまとめており、現業から軸をずらす「強制発想」の方法をご紹介していますが、単純にずらすだけでは新規事業のアイデアにはなりません。

自社の強みが活きなければ、勝てる見通しも立てられず、ひいては取り組む意義も見出しづらい。そのため、強みの認識はやはり重要です。

今回は「自社の強みの考え方」をまとめます。新規事業に取り組む方の参考になれば幸いです。

基本的な枠組み

いきなり一足飛びに「強み」を把握するのは難しいです。それは、強みは「自社に存在し、なおかつ、他社よりも秀でている」という前提が必要だからです。新規事業で活用する強みについては、さらに1つ要素が加わり、「自社に存在し、なおかつ、新規事業に転用・活用でき、なおかつ、他社よりも秀でている」という必要があります。

そのため、まずは自社に存在するものを把握していきましょう。強みを把握する最初の段階として「資産」に着目するのがおすすめです。その枠組みとして『「見えない資産」経営―企業価値と利益の源泉』のキーチャートが参考になります。

『「見えない資産」経営―企業価値と利益の源泉』を参考に作図

ここでは「見える資産」として「金融資産」「物的資産」が、「見えない資産」として「組織資産」「人的資産」「顧客資産」が挙げられています。

具体的な内容はぜひ『「見えない資産」経営―企業価値と利益の源泉』をご覧いただければと思いますが、次の章で少しヒントをご提示できればと思います。

抽象化~展開

「抽象化」は、強みの前提である「自社に存在し、なおかつ、新規事業に転用・活用でき、なおかつ、他社よりも秀でている」「新規事業に転用・活用」に関する部分です。

現在存在する資産は、既存事業を通じて形成され、既存事業に適した形になっている場合がほとんどです。直接新規事業に転用できるものもありますが、一度抽象化することで、転用先が拡がります。

図中では左下から左上に行き、右下に展開される矢印を書いていますが、実務的には右下のアイデア/企画に使える強みや資産がないか検討する順番も大いにありえます。

3つの検証

「検証」は、強みの前提である「自社に存在し、なおかつ、新規事業に転用・活用でき、なおかつ、他社よりも秀でている」「新規事業に転用・活用でき、なおかつ、他社よりも秀でている」に関する部分です。

本当に活用できるのか

新規事業のご相談に乗っていると「既存事業の顧客基盤を活かして…」という言葉が出てくることがあります。本当に顧客基盤を活かすことができればいいのですが、既存事業側からすると自社の取り組みとは言え、海の物とも山の物ともつかぬ新規事業に顧客データを渡したり、新規事業側から顧客にアプローチされるのが忌避されることがあります。

冷静に「本当に新規事業に活用できるのか」、もっと言うと「あなたはこの強みや資産を保有している部門にアクセスし、交渉し、転用・活用を納得させられるのか」チェックが必要です。

他社より強いのか

「強み」というからには、競合他社よりも秀でている必要があります。他社との比較をせずに、強みと認定してしまうケースがありますが、要注意です。できるだけ定量的に他社と比較して検証しましょう。

ただ、大企業の場合、資産や強みが非常に多く、他社比較をするとなると、かなり膨大で網羅的な調査が必要になるでしょう。

そのため、繰り返しになりますが、アイデア/企画に使える強みや資産がないか検討する方向でも検討することが重要です。

その強みは継続するのか

もう1つ、仮に他社より秀でていたとしても「強みが弱みに転換してしまわないか?」というチェックが重要です。例えば、リアル店舗を競合他社よりも多く持っていることは、かつて顧客接点が多いことを意味し、強みでした。銀行/ATMや自動車などの各種販売店が該当します。

ただ、ECや電子決済、Webでの情報収集が主流になるに連れて、リアル店舗は重たい固定費になっている部分もあると思います(もちろんこれを再び強みに転じられるよう、ブランディングや店舗での体験で差別化しようという試みもあります)。いずれにしても、強みが強みであり続けるのか、検証は必要です。

まとめ

今回、新規事業のアイデアを考えたり、アイデアを企画に仕立てたりする際に論点となる「強み」について解説しました。

記事の中で何回か言及しましたが、やはり自社のことはわかっているようでわからない部分が多いのではないでしょうか?

また、「これだ!」という強みが見つかったとしても、それをアイデアとつなぎ合わせて企画や戦略に仕立てていくには今回触れられていない障壁もあります。

具体的な事例や、みなさんのアイデアにおける強みの検討など、ざっくばらんに議論できればと考えています。お気軽にお問い合わせください。


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