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芸術学校バウハウスが、雑誌づくりと展示会を続けた理由

学校なのに、めちゃくちゃクオリティの高い雑誌をつくってるんだなあ……!

芸術学校バウハウスの美術館を訪ねまして、驚いてしまいました。

雑誌の発行と展示会を、開校してから閉校するまで継続してきたという一面が、とってもおもしろいなと思うのです。

しかもとにかく質が高い…!

教育機関であるにもかかわらず、バウハウスは、なぜ雑誌づくりと展示会を大切にしてきたのでしょう? 

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雑誌 / 生徒たちの研究作品を掲載

そもそも、バウハウスはどのような雑誌をつくり、どんな展示会を開催してきたのでしょうか。

バウハウス美術館には、数十冊にもわたる雑誌が展示されていました。

初期は新聞のような大判サイズでしたが、途中からは、今でいう雑誌のようなA4サイズの誌面に変わります。

内容は建築から家具、テキスタイル、キッチン用品、造形アートやグラフィックアートなど。

さまざまなカテゴリに渡り、それらはすべてバウハウスの生徒や講師の作品および製品化したものたち。

作品だけではなく、生徒たちが楽しそうに話しているカットなど、学校の様子がわかる誌面をつくっているのも印象的でした。

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展示会 / 作品・製品の展示だけでなく、ワークショップも開催

対して展示では、どのようなコンテンツを作ってきたのでしょう。

はじめの展示会のテーマは「芸術と技術 - 新しい統合」。翌年には「現代の主婦」をテーマにするなど、バウハウスの価値観を知ってもらうような展示をおこないました。

コンテンツは学生たちの作品の展示や、無料の絵画教室を開催。

徐々にその規模は大きくなり、巡回展を開催するようになります。

バーゼル、マンハイム、チューリッヒとさまざまな都市をめぐり、1938年にはニューヨークの近代美術館(MoMA)で大規模なバウハウス展を開催しました。

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バウハウスが雑誌づくりと展示会を続けてきた理由

雑誌づくりも展示会の開催も、目的は接点づくりです。

学生を惹きつけるとともに製品の宣伝をするためにおこなってきたと、美術館では示されていました。

学校、会社、地域、同好会……など、人の集まりは、中身がブラックボックス化しがち。デッサウにあるバウハウスのような片田舎にある共同体なら、なおさらです。

だからこそ校長のグロピウスは、バウハウス運営の重要な手段として、雑誌づくりと展示会を継続しておこなってきたのでしょう。

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展示会とは、バウハウスのことを知らない学生や親のもとへ出向く行為でした。

つまり、自分たちを発見し、思想に興味を持ってもらうための場です。

そして雑誌によって、興味を持った人がバウハウスに深く触れることができる。世界観を体験する場でした。

雑誌と展示会は両輪になっていることがわかります。どちらかが欠けると機能しないのです。

こうした設計によってバウハウスの存在を知り、深く共感した学生や親が、バウハウスの入学を決めたり、勧めたりしたのだと思います。

結果的にこの小さな芸術学校には、世界中から、もちろん日本からも意欲的な生徒が集まってきました。

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本当に、宣伝するためだけに運営してきたのか?

ここまではバウハウスのメディアの使い方と効果に着目してきましたが、本当に、学生を惹きつけるとともに製品を宣伝するためだけにメディアを運営してきたのでしょうか?

毎週土曜日はダンスパーティーを習慣にし、コスチュームコンテストを開催、冬は生徒たちが自らコンサートを企画……。

建築やまちづくりの枠組みを超えて、共同体づくりへの緻密な仕組みを築いていたバウハウスならば、雑誌や展示会の効果でさえ、内部から外部へ波及するように設計していたと見ることもできると思います。

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(講師が暮らしたマイスターハウスも隣接しあい、まるで村のように設計)

一旦、前半の話を整理したいと思います。

雑誌と展示会のコンテンツは ①生徒や講師の作品および製品 ②学校の情報です。

言いかえると、雑誌と展示会は ①成果と ②学生生活に必要不可欠な情報が載っている場と言えます。

当時、生徒たちはイベント情報とともに「自分や友人の作品が載らないだろうか」と、毎号誌面をチェックしていたのではないでしょうか。

雑誌も展示会も、生徒の話題になるようなメディアだったのかもしれません。

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メディアは集団を活性化させ、熱量を伝播させる道具

メディアとは、外への発信の道具であるという見方が一般的です。

しかし本来、メディアとは、学校、会社、地域、同好会……などの集団における人のはたらきを支援し、活性化させる道具なのかもしれません。

バウハウスは、学生たちのためにつくったものを外部へ展開したように見ることもできるからです。

集団のためにつくるモノ・コトづくり=メディアが、参加者を支援し、それによって強烈な世界観が築かれ、やがて大きな成果を産む。

(建築、家具、芸術と技術における理論など、さまざまな功績を挙げられますが、例えばFuturaという書体は誕生から90年が経つ今でも使われている)

その世界観は外部へと伝播し、共感を得られるような体験をつくるのではないか。

バウハウスのメディアの使い方は、そんなことを示唆してくれるように思います。

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これからデッサウにあるバウハウスへ行く方へ。

❏バウハウスミュージアムデッサウ

バウハウスミュージアムは、混雑を避けるために時間制を採用しています。11時に到着しても、じっさいに中に入れたのは13時〜でした。

なので事前に↓からオンラインチケットを買っておくと良いと思います!

❏世界遺産に泊まる

当時の学生寮はゲストルームとして開放されています。

歴史的な建築に一泊すると、ダブルルームで60€。コペンハーゲンやアムステルダムと比べると圧倒的にお得です。

予約に関するお問い合わせは、予約フォームまたはaccommodation@bauhaus-dessau.deまでお問い合わせを。

❏行き方を調べる

ベルリンから DB Navigator でチケットを買っていくのがおすすめ。二人で片道22€でした。

アプリを使えばすべてオンラインで済ませることができますよ。

❏バウハウスについて

1919年に開校した芸術学校。今日の暮らしをつくる建築やデザインに多大なる影響を与えています。


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