結局「誰が言うか」が大事な理由



若手~中堅の苦悩

自分は仕事を始めたばかりの頃、自分が発言したことに対するお客様や上司の反応を見る度に「結局誰が言うかじゃん・・・」と(勝手に)失望したことが何度もあった。同じように、若手のビジネスマンの方には下記のような悩みを持つ人もいるのではないかと思われる。

・そもそも発言ができそうな雰囲気になく、自由な発言を促してくれたり、若手ならではの素朴な意見に耳を傾けてくれる空気がない。

・にも関わらず、「社内の会議で発言しないのは悪」というようなことを言われ続け、「何でもいいからもっと発言した方が良い」と言われてしまう。

・勇気を振り絞って何かを発言しても、結局最後まで聞いてもらえずに途中で遮られて「それは違う」と言われてしまったり、自分の意見に対して、建設的ではなく常に批判的に聞かれているような感覚を持ってしまう。

・「若手は黙ってまずこれをやれ」「経験もない若造が何を言っているんだ」という雰囲気を感じる。

・新入社員の自分と、年次が上の同僚に対する態度が明らかに違う

上記のような悩みは「若手ビジネスマンあるある」ではないかと思う。自分も仕事始めたばかりの時は上記の感覚を持つことが本当に多かった。そのような中でどう価値を発揮していけば良いのか、というのは本当に悩んだことでもあり、未だにもがくこともあるのだが、最近気づいたことがあるので今回はそれを書いてみたいと思った。自分と同じように「結局誰が言うかが全てじゃん」と不満を思っている人に、何かしら参考になるようなことが書ければと思っている。

「誰が言うか」が大事な理由

ビジネスでは利益を上げる様々な活動をしていくのだが、全ての仕事に共通するのは「常に人を動かさないといけない」ということである。最終的なゴールは「顧客を動かす」なのだが、それに至るまでには「社内を動かす」「パートナーを動かす」など、最終的に顧客を動かすまでに巻き込まないといけない人がたくさんいる。人間は難しい生き物なので、そう簡単には動いてくれない。人が動くまでにはたくさんのハードルがあるのが普通である。

 人が動くために必要なことは、昔から研究されているみたいだが、まず間違いなく重要なのが「信頼」であると最近気づいた。動かしたいと思っている相手から見て、自分は信頼されているのか、ということである。例えば、自分の性格や志向を知って過去も度々お世話になっている「信頼できる人」のアドバイスと、初めて会ったよくわからない人のアドバイスであれば、どちらを聞くだろうか?おそらく多くの人は前者を選ぶのではないかと思う。

 なぜ信頼できる人の意見は受け入れて行動するのに、信頼できない人の意見は聞きすらしないのかというと、信頼できる人の意見を聞き入れた方が「ダメージを避けられそう」という生物学的な生存欲求があるからだと思っている。人によっては、信頼関係がまだ構築されていないにも関わらず、事実をベースとした意見を聞き入れ、アクションに移せる人もいるのだが、ほぼ全ての人は「何を言ったか」と同じくらい「誰が言ったか」を重視し、「信頼」にドライブをされて行動を決定することが圧倒的に多いように思う。これは簡単な理由で「信頼」があれば、失敗する可能性を減らし、成功する可能性(生物として生存する可能性)が増えるためである。少し極端な話にはなるが、宗教は人を動かすパワーを持っているのだが、それは「神」を信頼しているからであり、決して具体的なメリットがあったり、役に立つからではない(と自分は思っている)。人は「安定」「生存」を求めて、常に信頼できる絶対的な人間を探している「弱い」動物であり、でもそれが人間の生存戦略であるのだと思った。人は「信頼ができない人」には残酷なまでに厳しい。それは、生物として「当たり前」の反応だという理解をするようになってから、少し楽になったように思う。

 とはいえ、今でも「正しいこと言っているのにあの人は動かない」とか「どう考えてもこのアイディアは優れているのに、あのお客様は取り入れないなんてもったいない」などと思ってしまうことは正直ある。しかし、その原因は極めてシンプルであり「自分が信頼されていない」ということに尽きる。極論、信頼関係さえあれば、そこにロジックなんかがなくても人は動くのである。誰にでも「あの人がいうなら動こう」と思えるような信頼できる人が一人や二人はいるのではないかと思われる。「誰が言うか」が大事な理由は「信頼」こそが人をドライブするものだからである。

どうしていけば良いのか

特に若い頃は、目上の方と仕事をすることも多い。企業活動という枠組みにおいては、一緒に仕事をする上司や顧客を文字通り「上司」や「顧客」と捉えることがほとんどであると思われる。しかし、その「上司」や「顧客」も「人間」でもある。「利益を出さなくては」「組織を変えなくては」と口では言っているが、実際には「上から認められたい」「出世したい」「面倒くさいことを避けたい」「傷つきたくない」「なまけたい」と思っていることもある「超絶生臭い人間」なのである。したがって「行動をしてもらうまでのハードル」というのは、見えている以上に多くあると想定した方が良く、全ての会話は「建前である」と思うくらいがちょうどよいのではないかと思っている。どれだけ正しいことを言っても「やった方が良いと頭では分かるけど、それやると経営陣から批判されるしな」とか、「それは他部署が本来はやることなので・・・」とか「今はまだタイミングではないかな・・・」とか「やらない理由」がまず出てくるものである。そのような生臭い人間が、信頼をしている訳でもない若手のいち意見を真剣に聴いてくれると想定する方が無理があるのである。「生きるか死ぬか」の勝負をしている動物が、「死ぬ」リスクが高まる「信頼していない人の意見」を聞くというのは合理的ではない。したがって、人を動かすためには「何を言うか」と同じくらい「誰が言うか」が大事なのであり、「信頼関係を構築すること」は「人を動かす」ためには極めて大事な要素である。「自分は正しいことを言っているのにあの人は動いてくれない」と思ったら、まずは「自分は信頼されているのか」と問うようにしないといけない。「周りと信頼関係を築けない人間に、大したことはできない」という、残酷ではあるが本質でもある事実に目を向けて、日々の仕事に取り組んでいかないといけないと感じた経験があり、この気づきは誰かしらの役にも立つのではないかと思い書いてみた。



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