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今日、阪神は優勝する

今日、阪神が優勝する。何年待っただろうか。最後の優勝、つまり金本が阿部のライナーを捕ってこっそりウイニングボールをポケットに入れたあの日が2005年だから、18年ぶりということになる。当時12歳だった僕は30になってしまった。その間に僕は、実家を出て大学を卒業し会社を辞め、いまはオーストラリアにいる。2003年や2005年当時、阪神の優勝特番で「世界のファン」という特集で、海外から喜びの声をあげる阪神ファンを見て、いろんな人がいるものだなと思ったものだがまさかその一人に自分がなるとは。
え?今日阪神が負けて広島が勝てば、今日の優勝はない? そんな外野の声が聞こえてまいりました。僕ぐらいの阪神ファンになるとさすがにそのへんの嗅覚はある。阪神は今日優勝します。そして甲子園で岡田監督が8回宙を舞う。この見聞色の覇気のようなものは、長年にわたって鍛えられてきた技なので素人には真似できまい。

阪神というチームは弱い。どうしようもなく弱かった。そして選手に元気がない。数字だけ見れば2位や3位の常連なので悪くは見えないかもしれないが、この18年だけでも何度優勝できたシーズンがあっただろうか。つまり勝負弱いのだ。8月9月の勝負所で必ずといっていいほど自滅する。特に8月終盤に毎年行われる東京ドーム3連戦では、決まってボコボコにされるので「ああ今年の夏ももう終わりか」と風情すら感じる。
昨シーズンに関しては開幕から1勝15敗という記録的な逆快進撃を遂げ、勝率が大阪の市外局番「06」よりも低いとネットでいじられる始末。それでもずっと阪神ファンを続けていられるのは、僕がグランドに立つ選手たちの歴史やドラマを見てきたからだ。

例えば阪神のショートには木浪という今年キャリアハイを更新し続けている選手がいる。この木浪、新人の頃は1イニングで3つ連続やらかしてしまったり、走塁ミスをして矢野監督に公開説教されてベンチで泣いたりと、とにかく致命的なミスが目立つ選手であった。それが今年はどうだろう。常に笑顔でプレー、自信に満ちあふれている。投手への声かけも頻繁に行く。外野手や二遊間を組む中野拓夢と連携が取れていないと感じるとすぐにベンチで確認する。2年目以降からは守備力向上に目を見張るものはあったが、5年目になってこれほどまでに「頼りになるお兄さん」に成長しているとは、4年前は想像できなかった。

木浪はほんの一例だ。矢野政権あたりから感情を表に出してプレーする若手が増えたので見ていて楽しい。自分よりも年下の選手がほとんどになってきたいまはより一層、歴史とか成長に感動するようになった。いくら負けようがファンをやめれるわけないのだ。
その阪神が、今日優勝する。真弓監督時代に浸透してしまった外様体質を(真弓さんの打ちまくる野球は個人的に大好きでした)、和田金本矢野の3監督が「強い生え抜きのチーム」へと変え、岡田監督が今年それをAREへと実らせた。あとはその瞬間をiPad越しではあるが目に焼き付けるだけだ。

今日明日のタイガースファンは、何も頑張らなくていいでしょう。僕が許します。普段は飲まない酒を飲んでもいいし、仕事を早退して明日は休んでもいい。家のテレビの独占権も、定食屋のチャンネルを変える権利も、今日は阪神ファンが優先です。法律で決まっています。ただ口に出して「優勝」というのはその瞬間まで禁止です。「ARE」継続でお願いします。それは大阪府の条例で決まっていることです。

サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。