9月26日 「投げなかった3イニング」アマチュア野球における球数制限について
大谷翔平トミージョン手術、さらには浅尾投手の引退表明のニュースを受けて友人と「高校野球における投手の酷使問題」について議論。
その友達は「高校野球では球数制限を設けるべきだ」と言う。一つの手だと思うが、それは最終手段に留めるべきだ。チーム事情は異なるし、先の人生でプロなんて考えていない選手からしてみれば余計なルールになってしまう。
一番大事なのは選手の意思を尊重することだ。
そして選手が監督に何でも言える環境を作ること。どこが痛い、もう投げれない、そういったことをすぐに言える環境が必要だろう。そう、これは周りを固める大人たちの問題なのだ。
そんな環境が整っているかと言われると、間違いなく整備されていない。暴力や怒鳴り声で選手を脅し、グリップしてしまう指導者は星の数ほどいる。
しかし残念ながら、人間というのは歳をとるごとに頭が固くなるようで、従来のやり方をなかなか変えようとしない。時代は変わっているのに。
今年の夏の甲子園決勝で、連戦連投だった吉田投手が滅多打ちにあった。疲れからか、ストレートはまるでノビを欠き、本来の勢いを失っていた。放送席や、SNS上では「早く代えてあげて」と同情する意見で溢れていた。
いやいや、この決勝まで煽ってきたのはお前らだろう。マスコミだろう。バカな高校野球ファンたちだろう。苦しいのは予選の時から同じで、引き際を決める権利があるのは吉田投手自身だ。
一人で投げ続けているから偉いという訳では決してない。暑さ対策をワーワー言うよりも、高校野球の古臭い価値観を見直すべきではないか。
もちろんここまで吉田投手一人に投げさせた金足農業の監督の責任でもある。彼が「絶対に一人で投げさせてください!」と懇願したのなら別だが。
その決勝戦、僕は「本人が投げたいところまで投げるべきだ」と思いながら見ていた。同時に「この高校野球の悲惨な現状を大人たちが目に焼き付け、反省すべきだ」と思っていた。大人の都合で勝手にドラマ仕立てにしてはいけない。
一人では勝てないということが分かっただろう?
この日、吉田投手は5回でマウンドを降りた。自分で「もう投げれない」と言った。この「投げなかった3イニング」は今後の吉田投手の野球人生にとってプラスに働くだろう。
球数に関する問題はそれくらい根深い。最近で言うと元済美高校の現広島の福井優也、そして楽天の安楽、この2人は甲子園で投げまくっていた投手だ。斎藤佑樹も同様。
ただただ、これまで球数がどうとか叫ばれなかっただけで、無茶苦茶なことをやってきた歴史があるというのには変わりない。
ワイドショーで報じるのは美化された「田中vsハンカチ王子」というお涙頂戴の構図。「斎藤くんの疲労はこの酸素カプセルで取れたんだ!だからあんなに投げれたんだ!」と騒ぎ立てる。アホか。あんなもん気休めでしかない。
あの時に「投げすぎ問題」が広く考えられていれば、潰されずに済んだピッチャーが今の球界で活躍していたかもしれない。進歩には犠牲を伴う。彼らの犠牲を無駄にしてはいけない。
さて、ここで提案だが「プロ志望届を出している選手に限り、球数制限を設ける」というルールはどうだろう。現在、志望届の提出期間は夏の甲子園が終わってからおよそ2ヶ月だが、その期間を無くすのだ。言ってみれば、入学したと同時に届を提出できる仕組みにする。
そしてプロを志望している選手にのみ制限が適用される。どうだろう?参考の余地はあるのではないか。
何にせよ、「監督は絶対」「偉い人には逆らえない」という風潮は早急に取っ払うべきだ。上下関係なんて本当はいらない。邪魔なだけだ。
先日退任した智弁和歌山の高嶋監督がずっと第一線でやってこれたのは、御大自身が率先してグランド整備や練習の準備を行っていたからではないだろうか。ちなみに高嶋監督は現在メジャーでは主流となっている「フライボール革命」の第一人者でもある。
サポートしていただいたお金を使って何かしら体験し、ここに書きたいと思います。