現状維持の抜け方の気付き方
「デフォルト効果」というやつがある。
「死後に臓器提供しますか?」という質問を使った実験が有名だ。
①臓器提供する
②臓器提供しない
別の地域で、それぞれをデフォルトに設定した実験だ。
その結果、標準設定を「臓器提供する」に変えただけで、倍の人数が「臓器提供する」に変えたというものだ。
「デフォルト効果」は標準設定がないときにも作用する。
僕たちは「自分の過去」をデフォルトに設定し、「現在の状態」を神聖なものと決めつける。
それだけ人間はなじみのあるものが好きなのだ。
これまで通りか、新しいものを試すかと迫られると、人間は極めて保守的になる。
服を買う場所を変えられないし、iPhoneの設定はさまざまな着信音、シャッター音があるのに変えられない。車には「エコモード」「スタンダード」「スポーツ」というような運転モードが付いているが、延々とスタンダードで走ってしまう。
こうした「現状維持バイアス」はなぜ起きるのだろうか。
「ラクだから」という理由だけではなく、「損失回避」傾向のせいもある。
ひとは得をするよりも、損失をこうむることを避けようとする心理が働くのだ。
「何かを失うときの悲しみ」は「何かを得るときの喜び」の二倍強く感じられる。
そのため、イマある契約などについて、個人的なものであれ、国家間の契約であれ、再度交渉をするのは難しい。
自分側の譲歩はどれも損失に感じるし、逆に相手側の譲歩はすべて利益に思える。
しかし「損失に対する感情」は「利益に対する感情」の二倍強いため、再交渉自体がすべて損失のように感じられてしまうのである。
「もういっぺん話し合う」ということの難しさだ。
「デフォルト効果」は「現状維持バイアス」の特殊な心理効果だが、もちろんこれは感じ方に過ぎない。現状維持にそこまでのパワーは無い。
客観的に見れば、現状維持よりも新たな挑戦の方がうまくいくことも多い。
継続は力なり!という話もあるが、ときには意識的に思い切って環境を変えるだけで、人生が一転してラクになることもある。
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