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企画は大喜利⁉︎ レシートがお金に変わるアプリ「ONE」を生んだ、山内奏人さんの頭の中【サービスのTAKURAMI】

「TAKURAMI STORY」では、商品、映像、音楽、写真、物語など世の中にワクワクする企画を提案してきた方々をお招きし、業界や肩書に捉われず、その企みを紐解きます。今回登場するのは、レシート買取アプリ「ONE」を運営する株式会社WEDのCEO・山内奏人さんです。

「レシートがお金に変わる」という斬新なコンセプトが話題となり、2018年にローンチすると爆発的に利用者を集めたレシート買取アプリ「ONE」。スマートフォンでレシートを撮影すると、アプリ内のウォレットにお金が振り込まれます。

サービスを開発した山内奏人さんは当時、17歳の高校生起業家。小学生の頃からプログラミングコンテストで受賞するなど、幼い頃から天才プログラマーとして注目されてきました。

それまで世の中に存在しなかった「レシートがお金に変わる」という新しい仕組みをつくることができたのは、どういった発想や思考があってのことなのでしょうか? 山内さんに、企画の考え方についてお話を聞きました。


企画とは、面白いパンチラインを出す「大喜利」

──幼い頃から天才プログラマーとして注目されてきた山内さんにとって、「企画」とはどういうものでしょう?

僕はいつも、大喜利をしている感覚なんです。次々に生まれる新しい技術に対して、いかに面白い答えを出せるか勝負をしています。

たとえば、Apple社のiOSって年に一回はアップデートされていて、毎年夏に開発者向けのイベントが開催されます。いわば“お題”となる新しい技術が発表されて、それに対してアプリ開発者たちはどういうプロダクトをつくっていこうか“答え”を考えていきます。

人がコンピューターに指示を出す“インプット”に対して、どういうフィードバックを得られるかの“アウトプット”、そのインタラクション(相互作用)を設計することがプログラミングです。インプットとアウトプットを何にするかを考えるのが僕たちの仕事。時代や世の中の流れ、人々の行動を読み取って、一番面白い大喜利を出すということを、ずっとやっています。

──プログラミングを始めたのは6歳のときですよね。そのときからずっと「大喜利」している感覚なんですか?

そうですね。6歳のときに父親からパソコンをもらってプログラミングに興味が湧いて、いろいろと個人で開発をしてきました。コンテストに出場して賞もいくつかいただきましたが、いつもラップバトルをしているみたいで楽しかったですね。

コンテストのプレゼンでは、パンチラインを繰り出すラッパーのように、プロダクトのキャッチーなコンセプトを練り上げていきました。

──レシートアプリ「ONE」はまさに、「レシートがお金に変わる」というコンセプトがキャッチーです。開発しようと思ったきっかけを教えてください。

まず、「何かを読み取ってお金に変えたい」と思ったんです。ONEを開発する前に、クレジットカードをスキャンして仮想通貨にチャージするというアプリを開発したことがありました。それは結局うまくいかなかったんですけど、「何かを読み取ってお金に変える」ということ自体は、これまで世の中になかった新しい体験で、可能性を感じました。この仕組みを活用して、新しいアプリを開発したいと考えていました。

──読み取る対象をレシートにしたのは、どうしてなのでしょう?

最初は、読み取るものに海外の硬貨や切手をイメージしていました。海外旅行すると、現地の硬貨がだいたい余るじゃないですか。切手も使いきれなくて、残ってしまうことがありますよね。

「海外の硬貨が日本円に変わります」とか「切手がお金になります」とかわかりやすくていい気がしたのですが、ロジックとして理解しやすいからこそ、面白くはないなと気づきました。論理的に理解できず、「なんで?」という気持ちになるプロダクトのほうが、ユーザーの興味を引くはずです。それで、誰しも財布の中には入っているけれど、価値があるとは思われていない「レシート」にたどり着きました。

ロジカルな思考力と楽観で動ける行動力

──「ONE」のサービスはローンチ直後から人気となり、5年も続いています。成功した要因はどこにあると思われますか?

いいプロダクトを生み出せたからヒットできた、というわけではないと思うんです。プロダクトの企画は総合格闘技のようなもので、発想力やデザインだけじゃなくてあらゆる要素が複合的に求められる。それらをすべて携えて、マラソンのように走り続けてこれたから今があると思っています。5年間“耐えられた”という感じですね。

──走り続けるためには、何が必要なのでしょう?

エグゼキューション力(実行力)だと思います。

何かをやる前って、結果がわからないからこそ自信がなきゃ進めない。でも根拠のない自信だと上手くはいきません。わからない部分があるということを前提にロジカルに思考を重ね、わかることのほうが多くなったらある意味で楽観的になって、「やってみよう」と進み出す。進み始めたらあとは、忍耐強く課題を乗り越えていくことが大切です。

ただ楽観的な行動力だけを持って、ラッキーな気持ちだけで生きていたら、深く考えることがなくなると思うんです。なんで生きているんだろう、なんで働くんだろうとか、自分の内面と向き合って苦しい思いをできる人のほうが、思考に対して粘る力が強くなります。

0.01の段階で口にして、アイデアにしていく

──山内さんが新しいプロダクトをつくり出す原動力はどこにあるのでしょう?

ユーザーに新しい体験を届けることで喜んでもらいたい気持ちはありますが、僕の場合、あくまでも自分がつくりたいという気持ちがスタート。仕事という感覚もほとんどなく、ある意味“自己満足”なんだと思います。うまくいかなかったサービスもたくさんありますが、チャレンジし続けてきたことへの後悔はありません。

──新しいものをつくるには、発想力もポイントになるかと思います。山内さんはどのようにアイデアを生み出していますか?

多くの人が、アイデアは自分の頭の中だけで考えるものだと捉えている気がするのですが、それは絶対に違うと思います。自分の内側で思いついたものを外側に出して、行ったり来たりさせる行為が大事なんです。誰かに言ってみて、あれこれ言われた反応を受けて、自分の中でさらに考えを重ねる。そしてまた口にする。そうすることでどんどん考えが磨かれて、アイデアの輪郭が見えてきます。

──アイデアの輪郭が見える前に、思いついた段階で誰かに口にするのですね。

僕は思ったことをなんでもとりあえず口にしていますよ。思いついたことを誰かに伝えるスピードは、人より早い気がします。そこには何の障壁もないというか。

0から1を思いつけないと悩む人もいますが、ひとりで1にする必要はないんです。0.01でいいから、思いついたことを誰かに話してみてください。他者との対話を繰り返すことで、思いつきは磨かれて、しっかりとしたアイデアになっていくはずです。

■プロフィール

山内奏人
WED株式会社 代表取締役。2001年、東京生まれ。6歳でパソコンを手にしたことをきっかけに、独学でプログラミングを習得。11歳のときに「中高生国際Rubyプログラミングコンテスト」の15歳以下の部で最優秀賞を受賞、15歳でウォルト株式会社 (現WED株式会社) を創業する。2018年6月12日にリリースしたレシート買取サービス「ONE(ワン)」は、リリース後16時間でダウンロード数7万、買取レシート総数24万枚を突破。同年、Forbes 30 Under 30 Asia 2018に二部門選出された。


取材・文 冨田ユウリ
取材・編集 小山内彩希
編集 くいしん

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