街 8
〜外伝〜
俺の名は近藤勇二だ。想像通り親父が新撰組の大ファンで長男に勇ってつけようとしたら周囲から猛反対を受けて次男である俺にこの名前をつけた。小学生5年生からあだ名は局長。
何気なしに泊まりに行った友人の家であの人に出会った。その出会いは衝撃的だった。
友人の家族と夕食をする中で三つ上に兄貴がいることが話に出ていた。
話を聞く限り結構やんちゃなお兄さんなイメージだった。たぶん10時くらいには帰ってくるという話だったから、ちょっと楽しみにしてたんだけど帰ってこなかった。
友人が言うにはきっとどこかに泊まってくるのだろう、、、という話。
朝の5時。
バタン!っと玄関の戸が閉まる音で目が覚めた。もしかして、、、そう思ってトイレに向かうフリをして、玄関を覗く。
手から血を流し、泥酔したあの人が玄関で眠っていた。
話を聞く限り大柄のプロレスラーのような男を想像していたが、体は細くとても喧嘩するようなタイプには見えないが白のデニムに白のタンクトップをきて、スカジャンを羽織るその姿を見ては如何にもなヤンキーだ。
よく見ると拳は擦り切れて血が出ているので骨折やさし傷の類では無さそうだ。
「起きろ!」っと言って友人の母親はあの人の腹部を蹴る。
本当マンガのような世界。
僕はまだ中学生だったので怖くてとても声は掛けれず、そのまま部屋に戻り友人が起きるのを待った。
8時に2度目の起床した時にはもう玄関には居なかった。
電話がきて7時頃に出て行ったそうだ。
サウナに行くとかって言っていたが、面倒くさいから相手にしなかったとのこと。
友人曰く、別にヤクザでもチンピラでも無いから気にしなくて大丈夫だと。
9時を回りそろそろ出かけようとの話になった。玄関で靴を履いているとガチャ、、、
あの人が帰ってきた。
「なんだ友達きてたのか?朝方ドタバタして悪かった。またゆっくり来いよ!そん時は飲みにつれて行ってやるから。」
「兄貴の友達じゃないだから飲み屋に連れて行かれても困る」
「そうか。」そういって笑って部屋に入って行った。
友人はクラスの学級委員をしたり、成績も上位、なんなら模範生徒な感じだから余計にあの兄貴の存在が意外であった。
なんせくわえタバコで帰ってきてたし、今朝は酔っ払っていたし、聞けば3つ上だからまだ高校2年ではないか、、、この時興味が湧いたのは事実だが、数年後に取材をして回るほど惹かれることになるとは夢にも思わなかった。
あの人の抱えるものは重くて、冷たくて、、、だからなんだかとても暖かくて、人間味に溢れる人柄と裏腹に突如見せる冷徹な目が印象的だった。
ただの、不良とは違う。
この物語はフィクションであり、実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません
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