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なぜパリコレブランドでもオリジナルシューズを生産しないのか

昨日からメンズ2025SSのミラノコレクションが始まった。

今日は、小規模での靴生産がなぜ難しいかについて話す。靴のブランドを立ち上げたりそれほど売上規模の大きくないブランドが靴を生産するのは本当にデザイン的にも経営的にもハードルが高い。主に2つのポイントに分けて話す。

デザイン的な問題

まず、技術的な部分。靴作りの情報って、ネットや本にあまり落ちてない。特にスニーカーの作り方なんてほぼ皆無。革靴の作り方は多少あるけど、スニーカーとは違う。例えば、靴作りには木型が必要で、これは簡単に作れるものじゃない。プラスチックで作るのが一般的だが、もちろんこれは専門の工場でやってもらう必要がある。3Dプリンターでやる方法もあるが、それを使うための3D CADのスキルもいるし大きいため結構なコストがかかる。

木型の修正も簡単じゃない。服と違って、パターンを引き直すだけにはいかないし、修正が効きにくい。さらに、ソールとアッパーの接着にはセメント工法が使われるが、これを個人でやるのはほぼ無理。一つサンプルを作るにしても工場に依頼しなければならずコストがかかる。ピカソのように多くの作品を作り、その中から成功するものを見つける方法は靴のデザインでは難しい。冒険的なデザインを試す余裕がなく一発目から当てに行かないといけない。


経営的な問題

次に経営的な問題。少量生産に対応してくれる工場を見つけるのは難しい。日本の工場は少量生産に対応してくれることもあるが、その分コストが高いし、そもそも工場の数は少ない。生産費や関税を抑えようとするとインドネシアやベトナムでの生産を考える。しかし、これらの国での生産は最低でも2000〜3000足の生産を求められる。生産費は少し高いが日本よりは安い中国では一般的に最低800足くらいを求められる。100足から生産してくれる工場もあるが見つけるのはなかなか困難である。

また、もしあなたがシューズブランドを立ち上げてオリジナルでソールを作ろうと考えているのであればはじめはやめておくべきだと思う。オリジナルのソールを作るには金型が必要で、この金型を作るのに1サイズで15万から30万円かかる。そしてその金型を使って生産するには最低でも1000足程度の発注が必要。これだけの量を売り切るのは立ち上がって間もないブランドには難しいだろう。それでも私はオリジナルソールを製作したが…笑

さらに、既製のソールを使う場合でも、最低発注数が300〜500足と高めに設定されている。これもまた小規模なブランドには大きなハードルだ。

アッパーの生産だけでもMOQが多いのに加え、デザイン性にこだわりソールまでオリジナルにしようとすると難易度は跳ね上がる。

結論

こうした問題があるため、靴のブランドを小規模で立ち上げることは難しいし、ミラノやパリのコレクションに出るブランドの中でもまだ知名度の高くないブランドにとってシューズの販売はリスキーである。だからこそ、シューズブランドが他のアパレルブランドとコラボしてパリコレに出るという道は現実的な話だと言えるため私はそれを狙っている。。

今日は、私のブランドを小規模で運営する難しさについて話した。シューズブランドをはじめようと考えている人がいたら連絡してもらえれば私の知っている範囲でリアルをお伝えします。

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