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崩壊したデザイン組織を、もう一度チームにするためにしたこと(課題把握/経営との対話/ミッション設定編)

こんにちは、ココナラのデザイン責任者の外崎(@TakumiTonosaki)です。このnoteは正社員1人のチームに、デザインマネージャーとしてのジョインした最初の1年間の奮闘記になります。

マネージャーとしてデザイン組織立ち上げ・再生活動を自省もこめて振り返りたいと思います。


この記事について

◉参考になりそうな人
・デザイン組織を立ち上げる人
・デザイン組織に課題を抱えている経営陣

◉書いてあること
・デザイン組織崩壊後、再びチームとして機能するまでやったこと

この1年でやってきたこと

1.正社員は一人。デザイン組織崩壊後に入社

僕は2020年にエージェントを通じて、ココナラと知り合いました。当時の会社は創業8年目でビジネスは順調、組織も急拡大している中で「デザイン組織だけが上手くいっていない」と経営陣から率直に伝えてもらっていました。

その頃のデザインチームはコンディションが良くなく、退職者が続出。僕がジョインを決めた頃には正社員が一人しかいないという状態でした。(詳しくは下記の記事に書いてあります)

一方で、経営陣は明確なビジョンを持っていて、常にユーザーのことを考えながらプロダクトを作っている。メンバーもコミュニケーションを取りやすく、会社としての印象はかなりよかったの覚えています(これは今も変わっていないココナラの自慢ポイント)。

CtoCベースでデザイナーがイメージしやすいサービスも運営している。イベントを定期的に開催したり、ユーザーとの距離も近い。ユーザーの声を聞き、サービスを作っていくデザインの力を活かせるポテンシャルがかなりある会社だと思いました。

デザインの力で経営レベルでの事業貢献できる環境を探していたのもあり、「デザイン組織を立ち上げ・再生する」というミッションのもと入社を決意しました。

2.組織の課題を把握する

とにかく課題感を正確に把握しないことには、何も始まりません。すでに退職することが決まっていた人も含めて、メンバーやマネジメント、他チームからヒアリングを行いました。

1.メンバーから出た課題

■プロダクトやデザイン組織のビジョンの課題
・どういうUXを提供したいのかプロダクトのビジョンがない
・どういうデザインをしていくかチームのビジョンがない

■ワークフローの課題

・要件が不明確
・上流から入るフローになっていない・失敗した
・早くリリースすることが重視されていて、納得のいくクオリティで出せない

■採用時の期待値
・willと実際の業務があっていなかった

2.マネジメントや他チームから出た課題

・デザイナーのアウトプットのイメージが異なる
・デザイナーが上流から入って欲しいが、同じような視点や戦略・プロダクト理解でディスカッションできない
・デザイン自体の細かいクオリティが気になる

3.なぜデザイナーが活躍できないのか?

新しいプロダクトやビジネスを創るときは、ユーザーの声を聞き、課題を見つけ、具体化していくデザイン思考的な発想が求められます。基本的には新しい事業を作っていくスタートアップとの相性は良いはずです。

ただ僕がデザイン組織を見て来た中で、今回のココナラみたいにデザイナー側からは「プロダクト作りの上流から入れない」、「サービスのビジョンがわからない」という声をよく聞きます。

逆にマネジメント側からは「デザイナーから期待通りのアウトプットが出てこない」という状況もあるあるです。

こうしたデザイナーが活躍できない組織には、以下のような根本的な原因がある気がしています。

1.デザインがどのように事業貢献できるのか不明確(デザイン戦略やミッション化)

2.デザイナーのプロダクト・事業理解がマネジメントレイヤーに追いついていない(事業戦略・サービス理解)

3.デザインをどういうフローで組み込めば良いのかわからない(ワークフロー)

4.戦略をプロダクトやアウトプットに落とし込めていない(スキル不足)

デザイン組織を運営には、会社側のデザインに対する理解も求められます。一方でデザイナー側からも会社や事業を理解するアクションやデザインやデザイン組織のあり方を伝える努力する必要があります。

特に「デザインが大事なのは当たり前でしょ?だから好きにやらせて欲しい」というスタンスだと、常にビジネス的な結果を求められるスタートアップだと上手くいかなくなります。ココナラの場合もデザイン側からのアクションが足りていないと思いました。

3.デザインの価値を考えて、伝える

まずデザイン組織の戦略やミッションを考える上で、「デザインが会社経営にどう貢献できるのか」というところから考えました。

◎ デザインの価値の認識を合わせる

最近ではますますデザインの定義が広く、曖昧になってきています。事業会社におけるデザインの役割も、フェーズや組織、プロダクトに応じて異なります。デザインが組織として立脚するためには、デザインの役割を言語化して会社に伝えていく必要があります。

デザインの価値発揮のポイントが会社とズレていると後々お互いに苦労することになります。僕の場合は、入社前にデザインがバリューを出せることをまとめて、経営陣にプレゼンさせてもらいました。

デザインがバリュー出せること
当時のプレゼン資料の一部。今はこれ以上の幅広い領域において、デザインが貢献できる組織になっていると思います。

デザインは割と長期的な投資の側面もあるので、短期的に価値を出せるポイントも一緒に伝えました。例えばプロトタイピングによる戦略の具体化や検証は、割とデザイナーが少なくてもできることで、早期にバリューを出しやすいポイントだと思います。リソースがかからないところから始めて、成功体験を重ねて信頼を作っていくことも大切です。

上記はあくまで当時の状況を踏まえたもので、会社の事業や組織のフェーズに合わせて、デザインの価値発揮ポイントをブラッシュアップしていく必要はあると思います。

4.経営とのコミュニケーションを通じて、プロダクト・事業を理解する

プロダクト・事業戦略の理解がないと、会社と同じ方向を向いてデザインしていくことは難しいです。誰よりも会社のことを知っている経営と密接にコミュニケーションを取ることは、デザイン組織を作っていく上で不可欠になります。

僕の場合は創業者の新明と毎日1on1をさせてもらっていたり、代表兼プロダクトオーナーの鈴木とデザインやプロダクトについて定期的にディスカッションする機会もらっていました。ここではそのときに実際にやったことを紹介したいと思います。

◎ 1.Lean Canvas


リーンキャンバス

まずは事業全体を俯瞰してざっくり理解することから始めました。事業自体を理解しないと、当然プロダクトを作ることは難しいです。フォーマットはなんでも良いですが、個人的にはリーンキャンバスが慣れたフレームワークだったので、ざっと自分でかけるところは埋めつつ、CEOに添削してもっていたりしました。

◎ 2.カスタマージャーニー・ペルソナ

カスタマージャーニー

次にプロダクト理解のためにカスタマージャーニーを作っていきました。ここでも細かい内容というよりは、まずは全体俯瞰のための荒目のジャーニーを作っています。

ココナラの特徴としては、出品者と購入者にユーザー属性が大きく分かれること。そしてカテゴリにおける「深さ」があることが特徴だったのでそれを可視化しています。

カスタマージャーニー

続いて作ったのがペルソナです。ペルソナもそれ自体を作ることを目的とせず、ユーザーの全体像把握のために作っていきます。

カスタマージャーニーやペルソナのようなデザインツールを使うことで、ビジュアル化され、感覚的に捉えやすくなるため、経営の思想をデザインの言葉に翻訳してあげることができます。

ペルソナ

◎ 3.IR資料作成

IR資料

メッセージをわかりやすく印象的に伝えるため、IR資料にデザインを取り入れる企業が増えてきています。

事業計画や進捗をビジュアルで伝えるためにはIRや経営戦略の理解が必要になるため、資料を作る過程で日頃の業務とは異なる、事業経営目線で自社を理解をすることができます。

僕はプロダクトデザインにバックグラウンドのある人間でしたが、こうした会社の事業経営的な発信に関われて、いろんな視点が得られました。

(twitterでもお褒めの言葉をいただけました!)


5.組織のミッションを決める

◎ 1.事業フェーズを見据えて、課題を洗い出す

こうした活動の中で事業・プロダクト理解が深まり、デザイン組織で解決できそうことが見えてきました。その中でも、今後ココナラが特に解決しなければいけないことは以下の3つでした。

1.各機能をリニューアル・最適化していく中で、要件をより早い段階で具体化し検証していくこと

2.toCサービスから、よりマス層・ビジネス層へターゲットを拡大していくためのブランドイメージの転換
3.ユーザー層拡大による、プロダクトを横断でのUI/UX強化

1.に関してはサービスリリースから8年経過しており、多くのユーザーが使うベース機能は揃ってきていました。ユーザーは既存仕様に慣れているため、機能のリニューアルや新機能を出すことによるユーザーの反応が読めなくなってきていて、事前検証が必要になってきていました。

まさに不確かな状況でプロトタイピングを重ねながら、正解を見つけていくデザイン的なアプローチが求められていたのです。

事業・プロダクト戦略

2.は事業戦略的な話で、今までtoC中心だったサービスからマス層・ビジネス層へターゲットを拡大していく上で、ブランドイメージの転換が必要だったこと。

そして3.は実際の機能もtoBユーザーに対しても通用するような、サービス横断的にユーザービリティの高いUIや誰もが直感的に使えるUXが求められていたことがありました。

◎ 2.事業課題からミッションを決める

会社全体で見た時にこの3つの課題に取り組んでいくことが、デザイン組織がバリューを発揮できることだと考えて、以下のミッションを設定しました。

デザイン組織のミッション

ミッション設定にあたっては、①会社全体で多くの人が課題に感じていること、②デザイナー同士が中心となって推進できること③ミッション自体にワクワクできることを念頭に置きながらミッションを検討しました。

このうちのリブラディングPJは、チームから初のMVPを受賞するメンバーも出るほど会社や事業に対してインパクトが残せる結果となりました。

続き

後編では採用、チームビルディング、そして実際にどのようにして制作フローを作っていったかについてお話ししたいと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございます。Twitterでも毎日デザインやプロダクトマネジメント、おすすめの本や思考方について紹介しているのでフォローしてもらえると嬉しいです^^


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