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おいしいもの(短編小説集)

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食べ物が出てくる短編小説をまとめました。
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#お酒をのみながら

インドカレーの魔力(小説)

インドカレーの魔力(小説)

インドカレーは、全てを解決してくれる。

大学3年生、就活の足音がすぐそこまで迫ってきていることへの焦り。人見知りのくせに接客のバイトを始めた自分への嫌悪。

やる気のない学生とのグループワークで感じる胸やけ。「知り合い」くらいの関係の人とご飯を食べる時に起こる沈黙。親知らずを抜いた歯茎の痛み……

バイトや授業でモヤモヤしても、カレーを食べると晴れやかな気分で帰れる。一人でも、誰かと一緒でも、カ

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「肴荒らし」の会(小説)

「肴荒らし」の会(小説)

大学生になったら皆、気の合う仲間と飲み会をするものだと、昔の俺は思っていた。

だから4年前、関西の大学に進学して、入部した旅行サークルの忘年会で初めて飲み会を経験した時、少し興奮していた。
大学の近くにあるチェーンの個室居酒屋、飲み放題3000円の店。カラオケボックスよりもやや手狭な個室に総勢10名。店内には他の学生グループもいるのか騒がしく、個室の中でも2つ隣の人の声を聞き取るのもやっとだ。

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