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サッカーは生きていくためには必要ではないが、幸せになるために必要なモノ。いや、生きていくためにも必要なモノだ。


サッカーは生きていくためには必要ではないが、幸せになるために必要なモノ。

長友選手のこの言葉を聞いて、サッカー界隈で話題の「サンダーランドこそ我が人生」を観て感じたことを記したい。

この物語は130年の歴史を持つサンダーランドというプロサッカークラブがプレミアリーグ(英)から10年ぶりに降格してしまうところから始まる。
内容はサッカークラブで働くスタッフ(オーナー、代表、広報、食堂のおばちゃん等)、監督、選手、ファン、それぞれの視点からクラブについて語られるドキュメンタリーである。

新監督を迎え、プレミアリーグへの昇格を目指して、2部リーグを闘うのだが・・・そこには想像を超える絶望が待っていた。


※※noteではサンダーランドこそ我が人生の内容については細かく説明いたしませんので、気になる方は本編をご視聴ください※※

※※またこの作品を見て、かつてカモ扱いしていたサンダーランドに対して申し訳ない気持ちになりました。敗者に対してもリスペクトの気持ちを持って「勝たせてくれてありがとう」と伝えたい※※


ファンにとってサッカーとは?


ファンのひとりが言う。「サンダーランドは労働者階級の街であり、市民の生活は楽ではない。そういう街の娯楽はサッカーだ。サンダーランドはライフラインだ」。こいつは正気なのか?

他のファンの言葉からもサッカーが生活の一部であることがわかる。

「土曜日の試合に負けるとせっかくのホリデーが終日暗い気持ちになる」

「終了間際の同点ゴール!今夜は飲み明かすわよ!!」

「来年はやってくれると信じてシーズンパスを更新する。必ず歴史的なシーズンを送るんだ!それを孫の代にも見せてあげたくてね」

ファンの姿を見ると、サッカーのために必死で働き、毎週末の試合がまるで唯一の生きがいのようだ。
試合前には教会へ足を運び勝利の祈りを捧げに行く。
もはや宗教レベルの愛情に見ているこっちが恥ずかしくなる。

彼らは全く勝てずに苦しむチームを決して見捨てない。勝つチームが見たい、ただそれだけなのだ。

このパワーをホームスタジアムで声援に変えることができれば大きなアドバンテージだが(リバプールのアンフィールドのように!)、
負けが続くと「ユニフォームを着る資格がない、ヘタクソ、やめちまえ!」等の罵声が響き渡るスタジアムへ豹変する。
毎週末4万8,000人収容のメガスタジアムは天国と地獄を行き来する。

ファンの生きがいを背負ったクラブ経営層、選手、監督へのプレッシャーは計り知れない。漫然と生きてサラリーの入ってくるサラリーマンとはわけが違う。


プレミアリーグ降格の代償


ファンの落胆はさることながら、降格は経営面でも大打撃だ。
サンダーランドもこの「資金問題」が最後まで尾を引いてもがき苦しむことになる。

降格とは資金面でどのような影響が出るのか。
クラブの大きな4つの収益源から考えてみると、

①放映権収入は約半減 ※プレミアリーグの場合
②クラブスポンサーの撤退
③チケット売上の減少(来場者数の減少)
④グッズ収入の減少(マーチャンダイジング)

サンダーランドもダイレクトに収入減の煽りを受けることになる。

しかも経営層以外のスタッフは赤字を垂れ流していることに気づかない職場環境なのだから驚きだ。全く勝てない選手も選手ならスタッフもスタッフ。負の連鎖はスタッフにも伝播する。
※シーズン2で新オーナーが参画し、偉そうなエグゼクティブが現場の現状をボロカスに詰めまくり、ドラスティックに職場環境を変えていくシーンも見どころ。ウザって思う人もいそうだけどw

この減益の帳尻を合わせるためにやるべきは、
・スタッフの解雇
選手年俸の減額交渉
選手の放出
である。

降格したことで対戦相手の質は落ちるかもしれないが、

・新監督により大幅な戦略変更が発生し、適応に時間がかかる
・選手は①減俸を受け入れ切り替える者と②納得いかない者で調和が乱れ
・チームの得点源となる主力選手が上位クラブに引きぬかれる


これらを考えると昨年プレミアリーグに在籍していたとは言え、
昇格することが簡単ではないことがわかる。

結局、サンダーランドはこの負の連鎖を断ち切ることができず、ホームで
1年間も勝つことができないまま、3部に降格することになってしまう。


勝てないチームに対し、ファンは監督交代と新戦力の加入を求めるが・・・


勝つチームを見ることを生きがいにしているファンたちは、勝てないチームへ2つの要求をする。

①監督解任
②新戦力の獲得(オーナー自らの資金投入)

移籍デッドライン当日。経営スタッフの交渉はまさに死闘そのもの。
ただ、死闘の果て、大金をつぎ込んで獲得した選手が必ず活躍するとは限らない、という恐ろしい現実を経営層に突きつける。

デッドラインギリギリで獲得した選手はもはやギャンブルのようなものだ。
しかもサンダーランドに「フォワードの選手がいない」ことがわかると、サッカー選手エージェントは法外な移籍額を吹っかけて多額のマージンを得ようとする。

これにより、オーナーは自らの資産を削って、評価額が150万ポンドのフォワード選手を結局は450万ポンドで獲得することになる。

ただ不幸なことに、獲得した選手たちは放出した選手以上の活躍は見せず、

・シーズンの大半を怪我で苦しみ
・放出ストライカーの穴埋めはできず、ゴールができないスランプに陥る

と、結果としては投資金額以上の活躍はできずに終わってしまうのだ。

ファンのためを思い、チームを勝たせることにコミットした結果がこの有り様だ。クラブ経営とはなんと理不尽な現実を突きつけてくるのだろう。
300万ポンドも自腹を切ったのに・・・目を覆いたくなる結果である。


サッカーの持つ魔力は”生きがい”に他ならない


そんな悪夢のような現実をNetflixで突きつけられた中こう思った。

クラブ史上最大の危機を迎えるチームをどこまでも応援し続けるファンの愛情や、チームを勝たせるために、数億円の資産を削ってでも必死に選手を獲得するオーナーの姿を見ると、

「サッカーは幸せになるために必要なモノ」を超越した、生きる目的といっても過言ではない。

そう、勝つチームと生き続けることがファンやオーナーの生きがいなのだ。
使えるか謎な選手に数億円をつぎ込むなんて常軌を逸している。
サンダーランドは、サッカーの持つどうしようもない魔力の素晴らしさを教えてくれたのだ。


私はヴェンゲル監督就任後からアーセナルファンなのだが、約10年間、生放送を逃さず日本から声援を送っている。(twitterでアーセナルの事をリアルタイム(ほぼ深夜)でtweetしすぎると翌日フォロワーが減るのでアカウント変えることにした)。

明け方まで起きてムスタフィの哀れなプレーでロスタイムに同点ゴールを奪われる絶望や、3時キックオフの試合でバイエルンにボコボコにされ落胆する。そんな翌日は人の話が時々入ってこないほど、来週チームが勝つ姿を想像してフォーメーションを考えたりしてしまっている。
週末のテンションや、月曜日のビジネスにマイナスの影響を及ぼしてしまっているかもしれない。。

ただビッグゲーム、例えば最強ペップバルサに勝った試合や、前半ボロボロにやられていたが後半に息を吹き返したように逆転する試合では深夜にも関らず大声をあげて喜んでしまう。正直こんなに楽しい一人の時間は見当たらない。

そう、私の人生の中でアーセナルは生きていくためにも必要なモノなのだ。

勝てば翌週の仕事のパフォーマンスも上がるし、週末のマンシティとの試合のために仕事を頑張ろうと!と気持ちが乗れる。
※マンシティ戦の場合、デブライネひとりにチンチンにされるので翌週はげんなりですが・・・

サンダーランドこそ我が人生を見て率直に思った感想は「こんなに熱くなれるチームを毎週ナマで応援できて羨ましい」だった。

そして長友選手のこの言葉、

サッカーは生きていくためには必要ではないが、幸せになるために必要なモノ。

いやいや待ってくれ長友。サンダーランドのファンを命をかけて応援している。彼らにとってサッカーは間違いなく生きてくために必要なモノですぜ!

ということが言いたくてなぜかここまで書いてしまいましたw


Jリーグにもサンダーランドファンのように熱い思いを持った人が必ずいるはず。私はその数をもっと増やしてサッカーが人々に与える影響を最大限にするために、まずは今いる現場で成果を出し続けていきたいと思います。


早くスタジアムに足を運びたいものだ!

絶望をあじわいたい方はこちら↓


twitterもやってますので本件についてお話ししましょう~


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