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アーリーステージにCFOは必要なのか!?~これまでのキャリアと最近よく聞かれることについて~

スタートアップのCFOになり、3年3ヶ月が経ちました。スタートアップ界隈(VC含め)で、地銀出身者に出会うことがあまりなく(片手で足りる程度)、これまでのキャリアから考えると改めて稀有なことをやっているんだなと感じています。今回は、そんな稀有なキャリアについて触れつつ、最近よく聞かれることについて書いてみようと思います。回りまわって物理的な距離はどうであれ、地元企業で仕事をしたいな、戻りたいなと思っている人に対して、様々な選択肢があって、スタートアップもあるし、クアンドもあるよ!ということが伝われば幸いです。
なお、いろいろと書いておりますが、私自身、CFO1周目であり、模索しながら進めているのでその点ご了承ください。


これまでのキャリアについて

銀行員時代

出身地である熊本のごく普通の私立高校を卒業後、福岡にある西南学院大学商学部経営学科に進み、新卒で地元熊本の肥後銀行に入行しました。地元の高校→近隣の大学→地元に戻って銀行員。地方では、よくあるキャリアかと思います。

大学時代に経営や会計に興味があり、日商簿記2級を大学2年生の冬に取得するなど他の学生よりはおそらく真面目に勉強をしていました方だと思います。そういったこともあり、早くから財務諸表を扱う法人融資担当もしくは本部の融資やソリューションに関するセクションで仕事をさせてほしい旨を入行する前から人事に話をしていました(今考えると非常に厚かましいですね笑)。幸運にも先輩の異動なども重なり、1年目の夏から法人融資を担当させてもらうことができ、そこから3年間は企業の事業性評価、財務分析を中心に取り組むことができました(支店の起案する稟議、格付はほぼ1人で回してました(というか、人がいなかった))。しかし、「地銀マン」「若手」ということでそれだけにとどまらず、住宅ローン、預金・カード・生命保険・投資信託の営業も同時にやっていました(新卒の右も左もわからないときに極寒の中、1人で飛び込み営業したり、雨が降りしきる中、雨合羽をきて原付バイク(スーパーカブ)に乗り、集金したりなど、、、一定の精神力・タフさはここで鍛えられたのかもしれません笑)。

とにかく覚えることが多いし、定期的に受ける必要のある(銀行業務検定等の)試験もあったので、毎朝7時に近くのカフェにいって1時間勉強してから出社する生活を繰り返していました。10年前のことなので上下関係も体育会並みで理不尽なこともそれなりにありましたが、半期毎の業績達成に向けて、チームで取り組んで結果を出すこと自体はすごく達成感もあり(4期連続表彰されるような店舗にいたことも運が良かった)、同時にその中で成長もできたので充実した銀行員生活だったなと振り返って思います。

肥後銀行(2011年4月~2014年7月)

ファンド時代

その後、縁あって(というか大学時代からアプローチをし続けていた)ドーガンという福岡にある地方発独立系PEファンド兼アドバイザリー会社に転職しました。入社当初はわからないことだらけ。先輩方は、コンサルティングファーム、PEファンド出身者ばかり、見よう見まねで必死にくらいついていました。脳疲労を起こしあくびが止まらなくなったり、手に湿疹ができたりなど、能力以前に身体的にやっていけるのか?くらい働いていたように思います。大変な時ほど振り返ると成長しているもんだなというのを身をもって体験した気がします。

具体的な業務でいうと、1年目は、主に経営・財務コンサルティングで、事業・財務デューデリジェンスから事業計画策定、実行支援を宿泊業、食品製造業などに対して実施(セル/バイサイドどちらも)。2年目は、地銀が設立したファンドに出向しファンドマネージャーとして地域の中小企業に投資(主にメザニンファイナンス)、経営支援を実施。3-5年目は、ドーガンに戻り事業再生ファンドの立ち上げ(ファンドレイズ)から投資(第二会社方式を活用した再生投資等)、経営支援を行っていました。https://www.dogan.jp/topics/pdf/kpvf%20FinalClosePressRelease%20Final.pdf
このプロジェクトを通して、資金調達の大変さを身に染みて感じ、それが今にも活きていると思います。

5年間非常に多くの経験を積ませてもらいましたし、出会いも多く、それによって世界が広がりました。人生の転機になったと改めて思っており、感謝しかありません。退職後もメンバーと仲良くさせてもらっていますし、クアンドに対して投資もして頂き、オフィスも間借りさせてもらっていたり(ドーガンは同じビルの2F、ドーガン・ベータは同じフロアです)など様々な形でお世話になりまくっています。

ドーガン(2014年8月~2019年7月)

QA

Q1. なぜクアンドにジョインしたんですか?

A1. これまでは地域の中小企業に対して経営面や資金面での支援を通じて地域社会、主に九州地域に貢献しようと活動してきたわけですが、これからは「地域産業をアップデートする」というビジョンのもと、テクノロジーを駆使し、企業だけではなく産業を変革し、より社会的なインパクトを出していきたいし、九州地域の企業や産業が抱えている課題は、他の地域でも同様にあり、日本の課題そのものでもあると思えたからです。代表である下岡と長期的なビジョンが合致していたことやお互いのスキルを補完し合える関係にあったこともジョインした理由になります。詳しくはこちらの記事を読んで頂けると嬉しいです。

ちなみにはじめてプレゼンを聞いた翌日にメッセンジャーでこんなやりとりをしてました。2018年10月なので、クアンドが創業して約1年半の頃です。約半年間プロボノとして関与し(実際にデットファイナンスの設計、交渉、契約、着金を実施)、正式にジョインすることになりました。

Q2. アーリーステージでCFOがいらっしゃるのは珍しくないですか?必要か否かや、メリット・デメリットやどのようにワークさせることができるか教えてほしいです。

A2.アーリーステージでは確かに珍しいと思います。地方だと尚更いないなと感じています(CFOのタイプは様々なところで記事化されているのでここでは述べません)。必要か否かについては、スタートアップという前提で、経営陣のバックグラウンドやスキル、各社の方針(ここを決めるべきかと思います)にもよりますというのがどうしても回答になってしまいます(アートからサイエンスになりそうなタイミング、0→1が終わり、1→10もしくは10→100のタイミングと聞いたりもします)が、経験上役職はどうであれファイナンスに強いメンバーがいることはプラスになることは間違いないですし、これは投資家にもよりますが、チームを評価する際の加点にもなると思います。

アーリーステージからCFOがいる場合のメリットとしては、コーポレートまわりの90%以上を初期の段階からCEOが手放すことができ、CEOが事業に集中できることや状況に応じたファイナンスを適切なタイミング、適切な手法で実施できる点にあるかなと思っています(初期で必要以上に経営株主の株式保有割合がダイリューション(希薄化)しているスタートアップも少なくないと推察しています)。一方、デメリットとしては役割とコストが見合わない点にあるかなと思います。

ワークのさせ方として2つあると思います。
1つは業務範囲を限定的にし、副業などでCFO自身は生計を維持しつつ関与、企業側は一定期間許容する。
もう1つはこれまでのバックグラウンドを度外視して、業務範囲を広範囲にし、事業・その他あらゆるイシューに関与していくことです。
私自身、当初は前者でスタート、現在はコーポレートを主軸としつつ、事業、組織(採用)など開発以外の部分に首を突っ込みながら日々業務を行っています(とはいえ、「言うは易く行うは難し」でして日々インプットとアウトプットを繰り返しながらもがいている最中です)。事業(営業、開発)、組織、財務はそれぞれが連動するので、できる限り後者で行く方が望ましいかなと考えています。例えば、展示会に一緒に参加して前線で未来のお客様を開拓するなどもアーリーステージではやるべきだと思っています。

展示会での写真

Q3.株主や金融機関とのコミュニケーションはどうやってるんですか?

A3.株主については、毎月レターを送ることに加えて、報告会を定期的に実施し、コミュニケーションをとっています。それ以外でも困った時にはアドバイスを求め、連絡させて頂いています。金融機関については、定期的なコミュニケーションはとっていないのが実態です。顧客紹介やイベントを通じて対話させて頂いています。融資申込をする際は、クロージング直前ではなく前もって相談をするように心掛けています。

Q4. ピッチイベントって出た方がいいですか?

A4. 認知度が低いアーリーステージ(シリーズAまでを想定)においては出た方がいいと思っています。エクイティファイナンスは、投資家に対する自社株式のマーケティングでもあると思うので存在を知ってもらい、まずは話を聞いてもらえるようにしなければならないですし、ピッチイベントで賞をとり、こちらから出向かずに投資家の方々から声をかけてもらえるようにしていくべきだと思っています(ステルスでやりたい、やれるのであればもちろん不要ですが、それでやり切れる会社は少ないのではないかと思っています)。実際、先日、ICCサミットKYOTOB DASH CAMPで優勝し、多くの投資家の方々にお声掛けを頂いています。その他、先輩経営者との関係性構築が一気にでき、具体的な事業相談ができますし、視座があがり成長余地も拡大すると思います。出資をして頂き、心強い仲間になってもらえることも可能性としてはあり得ると思います。


B Dash Camp 2022 fall in fukuoka Pitch Arena 優勝

Q5.資金調達時のCEOとCFOの役割ってどう分けてますか?

A5.それぞれが持つスキルによっても異なりますが、エクイティファイナンスにおいてクアンドでは次のように役割分担をしています。まず、準備段階ですが、ピッチデックの定性的な部分はCEO、定量的な部分はCFOという形で役割分担。その他の資料については、すべてCFOが準備。方針については、CEO/CFOで話し合いつつ、その後回りながら固めていきます。次に、投資家との接点についてはリードVCとの面談は初回からCEO/CFOの2人で入り、フォロー投資家(VC、CVC、事業会社)の場合は、CFO1名で対応するようにしています。DDフェーズになるとほとんどをCFOが対応、マネジメントインタビューは2人で対応するようにしています。クロージングフェーズになるとCFOが対応します。CEOの資金調達にかける時間や労力を極力少なくすることもCFOの役割だと思っています。なお、デットファイナンスにおいてはCFOがほとんど動いて、最後面談をCEOがしてクロージングする傾向にあります。但し、上記についてはあくまでアーリー段階なのでミドル~レイターになるにつれて、CFOが担う役割が増えていくと想像しております。

最後に

政府は2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、年末までに「スタートアップ育成5か年計画」を策定する方針を打ち出すなど、世の中的にスタートアップに対する期待が高まりつつありますが、あらゆるリソース、特に人材が明らかに足りない状況です(以下が国内スタートアップの現状です)。日本全体でもそうだし、地方だとなおさら厳しいなと感じています。これを読んだ方の選択肢の1つにスタートアップが加わると嬉しいです。

日本のスタートアップを取り巻く現状
(第4回「産業構造審議会経済産業政策新機軸部会」(2022年2月16日)提出資料より)

クアンドについては色々記事があるので見て頂けますと幸いです!
少しでも興味がある方、近い将来あらゆるポジションができますのでまずはお話させて頂けますと幸いです。TwitterからDM頂けますと幸いです!https://twitter.com/TakumaSaeki0701
最後まで読んで頂きありがとうございます。


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