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地方発スタートアップ戦記

政府は、昨年、2022年を「スタートアップ創出元年」と位置付け、2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を発表しました。スタートアップへの投資額を2027年度に10兆円規模に、将来的にはスタートアップを10万社、ユニコーンを100社創出し、日本がアジア最大のスタートアップハブとして世界有数のスタートアップの集積地になるという壮大な目標を掲げるなど、国が本腰を入れスタートアップ振興に取り組んでいく計画となっています。
計画の中には、「地方におけるスタートアップ創出の強化」を行っていく方針が明記されており、最近はその類のイベントが開催されるなど、ますます「地方発スタートアップ」が注目されるのではないかと感じています。

地方創生ベンチャーサミット2023 https://netsui.or.jp/summit2023/

そのような中、いままさに地方発スタートアップのど真ん中にいるクアンドが現時点でどのように感じ、歩みを進めているのかをいくつかの観点からリアルに記したいと思います。

エコシステム
エコシステムそのものでいうと、東京と地方を比較するとエコシステムのレベル(量や質)が大きく違うなと感じています。東京だと、エコシステムのサイクルが2周以上機能している感覚があり、地方であれば1周目もしくははじまってすらいないなと感じています。ちょうど10年前の2013年、サムライインキュベート榊原健太郎氏が「日本版エコシステムができた」というコラムの中で取り上げていますが、この時から東京では回り始めていたんでしょうね。

スタートアップエコシステム
出所:ダイヤモンドオンライン「日本版エコシステムができた」

統計的にみても東京と地方の差が歴然となっていることが確認できます。

出所:ドーガン・ベータ・ラボ「ドーガン・ベータの歩みで振り返る、福岡市「スタートアップ都市宣言」からの10年」

地方におけるスタートアップエコシステムの必要性も以下のようにあげられています。

出所:経済産業省中国経済産業局「地方創生に向けたスタートアップエコシステム 整備促進に関する調査事業」

起業家ネットワーク
上記の資金調達社数からもわかるように地方と東京とでは圧倒的にスタートアップの数が違います。肌感覚としても当然にあり、地方の中で最もスタートアップが盛んになってきているといわれている福岡でも登壇するスタートアップや日頃コミュニケーションをとるスタートアップは固定化されてしまっているのが現状です。
クアンドではここに対してできる限り福岡内に閉じこもらずに東京のスタートアップとコミュニケーションをとる機会を意識的に作っています。
起業家ネットワークの重要性については、言わずもがなかと思うので、こちらをご参照ください。
GLOBIS知見録「起業家にとって人的ネットワークは強力な武器となる」

行政
ここに関しては有難いことに九州経済産業局、福岡県、福岡市、北九州市それぞれが気合いをいれてスタートアップ支援を行っており、クアンドはその恩恵を最も受けているスタートアップの1つになっているのではないかと感じています。自治体から委託され、実務で支えてらっしゃるトーマツベンチャーサポートさんらの力もあるかと思います!感謝。

投資家
各地方でも地域金融機関を中心としたVCや新興の独立系VCが少しずつ増えてきています。福岡でも、銀行系VCはもちろんのこと複数の独立系VC、CVCが生まれ、少なくとも10年前とは比べ物にならないくらい資金提供者が増えてきました。しかしながら、あくまでシード・アーリーが多く、ミドル・レイターにおける資金提供者が少ないのが現状です。クアンドでは、身近で相談できる地元の投資家を入れつつも、将来的にミドル・レイターでも追加で資金提供が可能な都心部を活動拠点とするVC(在京VC)からも集めるよう心掛けてきました。ちなみに在京VCの支援先同士で交流をする機会もあり(こちらからも声を掛けやすい)、これは先ほど述べた起業家ネットワークにもヒットしてくるのでどうしても地方だけに閉じていてはいけないなと感じており、多様な投資家を巻き込んでいきました。地方発スタートアップは初期から在京VCを巻き込んでおいた方がよいのではないでしょうか。

大企業
エコシステムの中ではバイアウトとしての意味合いで書かれていますが、ここでは協業やサービス導入という観点から書きたいと思います。コロナ前に関しては物理的な距離から東京と地方にいるスタートアップでは大きな差がありました。しかしながら、アフターコロナにおいてはオンライン商談が当たり前となってきており、ほとんど差はなくなってきているのではないかと感じています。クアンドもおかげさまで日本を代表する大企業の方々とご一緒させて頂く機会が増えてきております。EXIT先として地方の大企業が担っていくことは絶対数が違うことからなかなか難しいのではないかなと思っており、ここは東京だから地方だからという話ではないなと思っています。

SynQRemote(シンクリモート)導入企業(抜粋)

人材
エコシステムの図の中にはありませんでしたが人材という切り口をいれました。経営陣やメンバーを示します。多くのスタートアップがフルリモートOKとなってきた中で人材獲得には差が以前よりはなくなってきていると思います。しかしながら、すでに東京で働き、自身のネットワークや家族が構築されていることから、まだまだ差はあるかなと思います。有難いことに福岡は住みやすさの観点から移住者が増えてきており、他の地方よりも優位なことは間違いないかなと思っています。ただ人材獲得だけではなく、ちょっとしたオフラインでのイベントから生まれるネットワークも一定あり、そこで他社スタートアップのレベル感や視座を肌で感じる機会が経営陣だけではなくメンバーでも感じ取れる点はやはり東京の方がよいでしょう。このあたりは地方発スタートアップが工夫する必要がある点です。例えば、移住者の方々と接点を持てるような機会を創出したり、在京VCの投資先と共に勉強会をしたりなどが該当するかと思います。他にも案があればぜひ教えてください。どんどん取り入れていかねばと危機感を感じています。ちなみにクアンドでは現時点においては以下のような移住者コミュニティをつくってみたり、ALL STAR SAAS FUND ファミリーのロジレスさんやFanfareさんと勉強会をしたりしています。

福岡での横のつながりを意識したコミュニティ


ALL STAR SAAS FUNDの仲間たち

その他には、ネットワークを作っていく過程でスタートアップを経験したことのあるスペシャリストを巻き込んでいくことも意識しています。例えば、最近リリースした「元sansan CPO 大津氏がPdMとして参画」がそれにあたります。もちろん大津さん以外にも多くの方々に関わってもらっています。


一方でやはり東京と地方ではまだまだ層の違いを感じているのが現状です。直近2月にICCサミットやSTARTUP AQUARIUMなどに参加した代表は以下のようなことを話していました。

「ICCサミットFUKUOKA 2023やCaral Capital主催のSTARTUP AQUARIUM 2023のイベントに参加して、東京と地方(福岡)のスタートアップの厚みの差をとても感じた。福岡も日本屈指のスタートアップ支援があるし、上場スタートアップも出てきたけども、全然足りない。数ではなく厚み。同じ領域、同じプロダクトでも、どんなチームがやるかで大きく結果が変わるよなと。クアンドはそれが福岡、地方からでもできることを証明したい。そのためには支援者じゃなくて、圧倒的にプレイヤー側が成長して、厚い層にならないといけない。クアンドは全メンバーが全領域でトップランナーを地方・福岡で張れるようになり、情報をシェアして周りを引っ張ることができる存在になろう。高島市長をはじめとした各都市の首長の音頭もあり、福岡のスタートアップシーンの外側はできたので、中身をつくっていく。それがクアンドのDNAである「地域産業・レガシー産業のアップデート」に繋がる1つのアクション。でも、それを、苦しく窮屈にやるのではなくて、みんなで楽しみながらやりたい。」

クアンドのSlackより

上記の通り、きっと地方発スタートアップでの戦いは簡単ではないけれども、クアンドがこの突破口になれるようにやっていきたいなと思っています!

ぜひ、興味がある方はこちらも読んで頂けると嬉しいです。

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