2023 ATPファイナルズ)決勝、シナー対ジョコビッチ

2023 ATPファイナルズ)

決勝のシナー対ジョコビッチ観ましたけど、ジョコビッチつえー。

( ̄∇ ̄)

流石にハイレベルな試合を連戦して、セカンドセット中盤あたりからやや疲労感が出てミスがあったけど、それ以外はまさにパーフェクト。シナーにはほとんどチャンスがありませんでした…。

昨日のアルカラス戦と同じ様に、要所要所でシナーの鋭いショットを予測して先に回り込む。

それを感じたシナーが力む。もっと厳しいコースを狙う。打つ直前に迷う。

そしてミスが生じる。

そしてジョコビッチはシナーの速いタイミングでどんどんコースを変えてくるテニスを封じるように、今日は先手を切ってスピードボールを打ち込み、深く滑るようなボールを打つことでシナーの技術を封じ込めた印象でした。

昨日のアルカラス戦ではペースを落として様子をみていたのとは対照的で、ここにも戦術的な上手さを強く感じさせましたね。

シナーは以前からの高い技術力に加え、サーブ、ストロークともに全体的なスピードアップに成功しているんですよ。少しのスピードの差に感じるかもしれないけれど、それがワイドにサーブを打って、次のボールを逆サイドに打ち込んだような2本組み合わせた戦術の場合、以前なら相手に返球されていた場面でエースを奪えたり、追い込んでネットで仕留めるような違いとなって現れる。

でもジョコビッチはそれをさせなかった。

僕の感じたジョコビッチの勝因は大きく分けて2つ。

1)リターンの工夫

シナーのサーブを多くの場面でジョコビッチはセンター深くに返球していました。シナーのように器用な選手にとっては、相手から来たボールに角度があったり、少し追い込まれてコートの端から自分が打ったほうが、より次のボールが良いコースに打ちやすくなる事も多いのです。

でもサーブを打った直後に、体勢が前のめりになっている状態で頻繁に足元深くに低く滑るようなジョコビッチのフラット気味のボールが来ると、次のボールで角度をつけることが非常に難しくなる。逆に自分が甘いコースに打たされて、サーブのアドバンテージが一瞬でなくなってしまう。

深く来るリターンを警戒して、逆にサーブ&ボレーを仕掛けても、それを見透かしたようにジョコビッチは今度はリターンを足元に沈めて簡単にボレーさせてくれないですし、単純にオープンコートに送るようなファーストボレーをしようものなら、次のボールでジョコビッチは自由自在のコントロールで一発で抜いてくる。それが目に見えているから、ボレーで無理を強いられてしまう。ミスさせられてしまうのです。シナーはジリジリと土俵際に追いやられる力士のように、苦しくなってどこかでブレイクされてしまう展開になってしまいました。

2)ジョコビッチのサーブのコントロール力の高さ

ジョコビッチはサーブのコントロール能力で、完全に他のプレイヤーを頭一つ抜けた能力を持っていると思う。ほとんどがライン際、もしくはラインの外側半分を狙ってるんじゃないかと思うぐらいの精度で、ツアートップランクのリターン能力をもつシナーにまともな返球をさせないどころか、触らせもしない場面が多々あった。

セカンドサーブでもそのコントロールは全く変わらない。

セカンドセット途中まで、セカンドサーブでのポイント獲得率が100%という驚異的な数字。ブレイクされる危険性はほとんどなかった。

◆    ◇    ◆

淡々と冷静にサーブをいとも簡単にキープできるジョコビッチに対し、シナーは自分のサービスゲームでポイントを先行することすら難しい。

セカンドセットでは多少もつれた場面もありましたが、結果ストレートでジョコビッチの勝利。マッチポイントはシナーのダブルフォルトで幕を閉じましたが、あのセカンドだって、普通に入れたらもうポイントを取れる気がしないシナーが、無理を承知でダブルファースト的に打って(というか打たされて、ですね)の失敗です。もうあんなギャンブルを打つぐらいしかシナーには選択肢が残されていないんですよ…。

◆    ◇    ◆

ジョコビッチはこれでツアーファイナル優勝回数6回で、同立一位だったフェデラーの記録を抜いて7回の優勝による単独首位を決めました。また一つ、前人未到の記録を打ち立てたわけです。

グランドスラムだってウインブルドンでアルカラスに負けて準優勝だったのを除き、他の3大会で優勝。

そしてツアーファイナルでも優勝。

今年の勝率は一体どのぐらいになるのか。

こんな成績を叩き出すプレイヤーが36歳だなんて信じられないことです。

一昔前なら20代後半ぐらいが選手として一番脂の乗った時期と言われ、30を過ぎたあたりから能力がぐっと落ちて30代前半で引退するプレイヤーが多かったものです。70年代に一時代を築いたボルグなんて確か26歳で引退しているんですよ。

それなのにジョコビッチは36歳にしてこんなものすごい成績を叩き出している事に、もうどんな言葉で称賛を送って良いのか分からなくなります。現役を続けているだけでも称賛されるような年齢で、次世代のエース格と言われる20歳のアルカラス、そして21歳のシナーを倒してのツアーファイナル制覇ですから。よほど日頃からフィジカルの管理に気をつけ、節制した生活をし続けていなくては、こんな事ができるわけがない。試合では見えない日々の努力が絶対にあるはずです。

数年前までGOATと呼ぶべきなのはビッグ3の誰なのかという話題がテニスファンの間で度々持ち上がっていましたが、今はもうそれがジョコビッチであることを疑う人はいないのではないでしょうか。

フェデラーが引退し、ナダルもツアーを離脱。ジョコビッチの独走状態がいつまで続くのか。そしてジョコビッチを来年倒すことができるのは誰なのか。

来年はパリでオリンピックも開催され、未だオリンピックではメダル獲得していないジョコビッチは、目標の一つとして必ず金メダルを狙ってくるでしょう。

来年のテニスツアーも間違いなくジョコビッチを中心に回っていくのだろうな、という確信を、あらためて感じさせる、今年のツアーファイナルでした。

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