見出し画像

#12 精神疾患等の二次障害に対する早期介入を実施することは可能か?⑤

これまでの整理の中で、精神疾患等の二次障害に対する予防的な介入について、以下の重要なことがわかってきた。

「脆弱性の軽減」「ストレングスの増強」が重要

この2つの要因について、幼少期・学齢期から意識した関わりや支援、仕組みをどれだけ広げることができるのかがポイントになってくる。以下に、前回同様「わが国における予防精神医学の歩みー脆弱要因の減弱とレジリエンスの増強ー 小椋力」予防精神医学Vol.2(1)2017からの引用を用いてこの2点について整理する。

スクリーンショット 2020-07-09 20.44.52

上記の中で、現在子ども支援、保護者支援に携わる中で、療育的視点として大事にしているものも多い。
例えば、「子ども支援」だと、「自己肯定感・自尊感情」、「報酬体験」
「適応能力」「運動」「社会とのつながり」
などはTASUCのプログラムでも重視していることだ。
 そして、「保護者支援」だと、「家族の子どもの将来に対する希望」は早期から伝えることにしており、キャリアファンタジーを描く、という言葉を使っている。「家族レジリエンス 増強プログラムへの参加」で言うと、家族会活動やペアレントメンター制度、研修会等の仕掛けを行っており、保護者支援も「ストレングスアプローチ」としてたすくメソッドの中に位置付け、大事な視点としている。このポイントは、もう一度スタッフをはじめとして、支援に関わる人が皆で共有したほうがいい。「大事だ」とは文字ではわかっているが、実際に日々の行動に意識的に実行できていないこともあるからだ。

一つ一つの項目について、具体的なプログラムの落とし、その「仮説と検証」を淡々と実行していくのが望ましい。すぐに結果が出るよなものでもないし、結果的に「精神疾患にならない」方が当然良いのだから。

民間支援機関としてできることは、「日々の新たな挑戦とスピード感」であるし、将来的にスタンダードになる取り組みを先進的に実行して結果として出していくことだと思っている。

今後の予防に対する課題

小椋は予防に対する今後の課題を以下のように述べている。

わが国では精神障害の予防を語れなかった時代を乗り越えることができた。
研究・実践活動は活発化し、本学会活動は定着した。さらなる進展のために課題を述べたい。
1)生物学的基礎研究は活発で、バイオマーカーを用いた高危険者研究には国際レベルのものもある。しかし、前方視的コホート研究、長期追跡研究、無作為対照試験などの分野で不十分である。
2)一般的に研究対象者が少ない
3)早期介入においては、主として関係者の努力により、個々の施設内で小規模に実施されており、行政の関与は少ない。
4)地域活動の活性化とレジリエンスの増強には、看護師、臨床心理士、精神保健福祉士などとの多職種協働が強く求められている。
5)国の精神保健制度の見直しを含む行政の理解と協力が欠かせない。予防活動は費用対便益の面からも有益であることはデータとして示されている。
6)「ストレスチェック制度」は発症予防を目指した介入であり、目的が果たされることが期待されている
7)精神障害の発症率、有病率を下げる夢に向い、倫理面を重視しながら慎重に、かつ積極的で楽観主義的(resilient) challengeが望まれよう

 医学分野での取り組みに限らず、教育・児童福祉分野における取り組みも今後必須になってくる「予防」の視点である。
そして、この「予防」について論じる際には、小椋の7)にも記載してある倫理面を重視しながら慎重に、、、実行しなければならない。
 映画の「マイノリティリポート」のように、「あなたは将来犯罪するから先に捕まえます」といったような「あなたが精神疾患になるからいまのうちに入院、または薬を飲んで」といったことは人権的に無理だからだ。

 一人一人の適切なアセスメントをもとに、本人・家族・社会といった面での「脆弱性の軽減」と「ストレングスの増強」についてコツコツを取り組みをしていくべきだ。

今後も研究についてはアンテナを広げていき、実践との比較、振り返りを通して、より理解の深まる社会を目指していきたい。

おしまい








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?