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#10 精神疾患等の二次障害に対する早期介入を実施することは可能か?③

 前回、予防の考え方や自分が発達領域に向かった流れについて書いたので、今回からは具体的に精神疾患に対する予防の考え方について書いていく

1次予防の考え方

 1次予防とは、すなわち疾患になる以前から精神疾患になるリスクを回避することである。その際に大事なのが、どうやったら精神疾患になるリスクを回避できるのか?という視点である。つまり、医療の視点を持っていると、すでに疾患になった場合に接点があるのが通常である。(早期介入の視点:2次予防)
 そして、検診のような形で発見するような場合、生活習慣病との大きな違いで、「あなた精神疾患になりますよ」と告知することが果たして良いのだろうか?(あくまで私見)。
 

予防精神医学について

 今回は、「わが国における予防精神医学の歩みー脆弱要因の減弱とレジリエンスの増強ー 小椋力」予防精神医学Vol.2(1)2017の抜粋を用いながら、現在の考え方について整理していきたい。

 精神障害の予防、とくに再発予防については、日常臨床の中で常に考えられていたであろう。しかし一次予防については、我が国では「大学紛争」などの影響もあって一次予防の研究自体がハイリスクとの考えがあった。したがって、「精神障害の予防」が学会等で議論されることはなかった。

 この記載にあるように、1960年頃の精神医学会では、一次予防の議論は全くなされてきていない。そもそも、統合失調症の名だたる先生方の本において、そもそもそのメカニズムが解明されてこないまま、䑓弘(うてなひろし)先生の「生活臨床」という考え方や、中安信夫先生の「初期分裂病」などで、その症状や過程について議論がなされてきた。

 1960年頃の「安保闘争」「大学紛争」「反精神医学」の時代は、大学自体の研究があらゆる分野で停滞し、旧来の精神医学のもつ強制性と拘禁性に強い批判を向け、精神疾患が客観的な疾患ではなく、社会的家庭の産物であるなどと主張した。

 精神疾患への社会的な偏見、症状自体がよくわからないための監禁・拘束のようなことが一般的な見方だったのかとも思う。

予防精神医学の歴史

引用ではあるが、ここで予防精神医学の歴史に触れていく。

1950年代後半〜1960年代(欧米)
 統合失調症の高危険児研究が、米国、イスラエル、スウェーデン 、デンマークなどの欧米を中心に開始され、追跡調査によって、脆弱要因が明らかになり、「脆弱性ストレスモデル」が出された。

 このモデルは、大学時代に精神医学を習っていたときにも用いられていたモデルである。人によって発症しやすい気質やある一定の値を超えるストレスが組み合わさったことによって精神疾患が発症するという考え方である。
「まじめな性格だとうつになりやすい」などと言われていることも、こういった素因についてのイメージだろう。
 高危険児研究によって、いったいどういった要因が「脆弱性」と言えるのかが明らかになってきた。

「脆弱要因」とは

下記に統合失調症の脆弱要因として挙げられているものを載せた。(出典は冒頭のもの)

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 これらを見ることで、各ライフステージにおいて脆弱要因をいかに除外していくかが1次予防の中では重要な視点なのかもしれない。
ただ、この表をみたときに、「本人」自体への関わりや地域資源に対して介入しようとしても難しいと思ったのが率直な感想である。

 自分自身で意識して変えられるものが圧倒的に少ない、ということを感じないだろうか。

 じゃあ、精神疾患に「なる人はなる」「しょうがない」という解釈で良いのか?と言ってしまうとそれは違うわけで、この1次予防に対して、何か人や地域資源、プログラムやコミュニティ、教育などのレベルで関わることはできないだろうか。

この視点が、次回触れる「レジリエンス」という考え方から触れていきたいと思う

つづく



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