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人生最後のサラリーマンとしての出社


 人生最後の「サラリーマン」としての一日を夢の中で過ごした。それまで訳あってずっと休んでたのに最終日だけ何故かわざわざ出勤したのだ。久しぶりに席に着くと、近くにまた上司の差金であろう、おそらく親会社から新しい人が移ってきてた。SEなのかネットに詳しい男である。こいつが部下に当たる人物なのか後任にあたるのかはよくわからない。愛想のいい人だった。
 いつも細やかな指示ばかりしてくる社長はその日は休みだった。直属の上司は出社してたとおもうが直接コミュニケーションはとってない。やけにしずかな一日だった。みな目の前の画面に集中していた。あるいは社長がいないからみな仕事をしてないように思えた。毎日こんな日なら辞めなくても良かったのに。
 この日は座って一日なにをしてたのだろう。何か考えながら何かをしていたふりだ。部下も余計なことを私にはしてこない。部員といっしょにどこか別のフロアにいって会社の歴史に触れたりしてたようだ。こんなことてよければずっとホワイトカラーしてたのにな。そんな風に思った。
 さて退社時間に近づいてきた。最後に同僚や部下に声をかけようかどうしようか。何を言おうか。そんなことを考えていたらトイレで目が覚めた。本当にこの前日は最後の在籍日だった。
 スマホをみると会社の総務人事からメールがきていた。席に残置物があったから宅急便で送ったという。コーヒー淹れっぱなしで誰かが洗ってくれたはずである。私は礼を返すと共に手当金申請の方法について聞いていた。それと会社に保険証を返納しなければならない。
 月曜日からは「自営業者」となるための学習の日々が始まる。前の会社は直近しばらく通わず頭の片隅から記憶が消えてたのに夢とは不思議なものだ。夢ではわりと鮮明な映像が流れていたので記憶がまだ豊かなうちにこれを記す。

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