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【ホテルログ⑤:Hotel Covell】 スモールビジネスだから出来る「夢の実現」に自分を重ねる

5回目のホテルログ。
コロナで旅はおろか、外出すら出来ない昨今だからこそ、またいつか来る旅の瞬間に備えてホテルログを書きます。

今回は、アメリカで新型コロナが流行する直前、3月に行ったLAのHotel Covellについて。

長年恋い焦がれてきた憧れのホテルは、僕の中の自己ベストを更新してしまいました!

スモールビジネスだからこそできる、やりたいことの実現にこだわった空間。

将来自己資金でホテルを作りたい僕にとって、一番ロールモデルになるインディペンデントホテルでした。

Hotel Covell, Los Angeles, USA

このホテルを知ったのは3年程前。
いつも通り、海外のインテリアデザインメディアを眺めていて、Covellの記事を見つけました。

アートとクラフトがバランス良く組み込まれた空間に目を引かれて記事を読むと、その独特なコンセプトに惹き込まれました。

Hotel Covellは、LAのヒップなローカルが集まるエリア「Silver Lake」にある9室の小さなホテル。架空の小説家「George Covell」のライフストーリーを辿るというコンセプトのもと、客室を「Chapter : 章」として、Covell氏が成長する過程で暮らしていた部屋を空想してデザインされています。

面白いテーマ設定。

9室の客室は、一つとして同じものはありません。
Covell氏が幼少期を過ごしたOklahomaを皮切りに、 NY、Parisと移り住む過程で、その都市毎に異なる文化的背景がそれぞれの部屋のデザインに落とし込まれています。

すごくワクワクするコンセプトですよね。
一度泊まっても、再訪して別の部屋に泊まってみたいと思ってしまいます。

だけどこのコンセプトを実現するのは、言うほど簡単ではありません。
その理由や、部屋の詳細を、たっぷりの写真とともにお届けします!


エントランス & 廊下エリア

Hotel Covellは、LAで飲食店を経営していたDustin Lancasterの初めてのホテルプロジェクト。

元々Bar Covellというナチュラルワインバーがあり、2Fのスペースが空いたタイミングで5部屋のホテルを始めたそう。

その後、隣の建物の2Fにも空きが出て、そこに客室を4部屋増築したという背景も等身大で親しみ深い。

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この建物の1Fがバー。2Fがホテル。
この隣の建物も、1Fに2店舗同じオーナーが経営する飲食店があり、2Fがホテルになっています。

予定調和無く生まれたホテルだから、客室までのアプローチが複雑。
宿泊者向けのエントランスはありません。
バーの裏口から入るとそこに小さなレセプションが有り、鍵を受け取りもう一度外に出て、外階段を使って客室まで歩くという一風変わったスタイル。

▼ホテルの裏口

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一部の部屋には、こんな風に通りに面した扉も。どこに繋がってるのかわかりません。笑

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わかりにくいし、エレベーターはもちろん無いけど、そんなところがむしろ、冒険のような高揚に変わります。

ROOM / 客室

部屋は本当に、本当に良かったです。感動の連続でした。

このホテルの設計・デザインは、LAベースのETC.etera というデザインファーム。代表のSally Breer自らデザインしています。


どこを見渡しても、インスピレーションの源がわからない、オリジナルな空間を作っている人。
単体だと「これは微妙じゃない?」と疑問が出そうな要素を成立させるセンスが唯一無二です。

Covellにも彼女のセンスの魅力が余すこと無く発揮されています。

9つの「Chapter : 章」のうち、今回宿泊したのは、Chapter6。

メインキャラクター"George"の娘で、80年代のカルチャーを愛する"Isabel"の部屋を空想してデザインされたスイートです。(これも全て設定)

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シックな黒い扉を開けると、鮮やかなカーテンが飾られたベッドが目に飛び込んできます。

この光景が、Chapter6のキービジュアル。
アイコニックなカーテンは、デザイナーSallyが自らペイントしたDIYだそうです。

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このアイデアを成立させるセンスと実行力、凄すぎませんか?

一歩間違えると「あ、そっち系ね...。ちょっと違うかな...。」となりそうなアイデアなのに、見事に部屋の印象を形作るアイコンになっています。

横から見たイメージはこんな感じ。
ベッド脇には同じテイストのビンテージライトが両サイドに。
サイドテーブルはDIYでした。

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部屋は広く、室内で45㎡くらい。
同じくSallyがペイントしたビンテージのソファもあり、ゆっくりくつろげます。

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広いキッチンエリアが備わっていて、暮らすように滞在が可能。
ホテルというより、Airbnbの雰囲気に近いですね。

冷蔵庫は憧れのイタリア製SMEG。各部屋に必ずSMEGが設置されています。
冷蔵庫を開けると...

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中スッカスカ。笑
贅沢なソーシャルディスタンスを取りながら飲み物が並んでいます。

そう、この冷蔵庫、本当に無駄なんです。
キッチンがあると言っても、ガスコンロはないので料理ができるわけではない。となるともっと小さい冷蔵庫で十分。

それでも!
SMEGを設置する。「わかるでしょ?」と言わんばかりに。わかる。

一台25万円くらいする無駄に大きい冷蔵庫を設置するところに美学を感じます。笑

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カウンターは黒と白で上品に作られたテラゾー製。
最近、各国で上品にアップデートされたテラゾー使いが見られますね。僕も大好きで、自分のお店と事務所にも使ってます。

モノトーンテラゾーもいいな〜。

※テラゾー(テラゾ)とは、大理石や花こう岩を粉砕した粉(これを種石という)をセメントや樹脂と練り混ぜ、なめらかに磨いて大理石のような美しい模様に仕上げた人造石(擬石)のこと。 イタリア語で「Terrazzo」という。

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ソファ前に設置された小さなテーブル。ピンクの天板が上品に。

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テレビ下のビンテージキャビネットもかっこいい。中には特に何も入ってませんでした。笑

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キャビネットの上にはビンテージのレコードプレイヤー。
音、めっちゃ飛びました。笑

家具のセレクトは基本的にビンテージに、ところどころDIYを取り入れていて、再現性のない楽しみに溢れた空間になっています。

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壁や床など白を基調とした空間に、黒く統一されたドア。
空間自体はモノトーンなのに、所々に飾られたアートワークが差し色となり温かい雰囲気を作り出しています。

今回泊まったChapter6には、部屋にバルコニーが付いていました。
2Fなので眺望はないものの、LAの青空が楽しめます。

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隣の塔には、ホテル宿泊者全員が使えるバルコニーも。
ここが昼も夜も最高なんです。

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夜にこのバルコニーでイベントを開催したりもしているそう。
個人的に、このバルコニースペースが憧れ。
ホテルを作る時、こういうラフなルーフトップテラスを作りたい。

小物類

僕がこのホテルで感動したトピックの一つに、小物類がありました。
隅から隅まで、客室で扱う全ての物が、ちゃんと理由があってセレクトされているんです。

まずはこれ。
キッチンスペースには、1Fに併設するBar Covellセレクトのナチュラルワインや、ハンドドリップコーヒーセットが無料で用意されています。

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最近は小型コーヒーマシーンが置いてあるホテルが多いけど、ここはしっかり豆とハンドドリップ。

真鍮のカトラリー、うすはりのワイングラス等、食器類にもこだわりが。

安さや効率よりも、高くても自分達の好きなものをゲストに提供する。
刺さるなーこういうところ。

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ソープ類はLe Labo。見ますよね、ソープ類。

飲食店でもホテルでも、お客さんをどれくらい大切にするか、思想が表れやすいところだと思うので、いつもチェックしてます。

(イケてるお店なのにソープがキレイキレイだったり、イソップのボトルに他のソープ詰め替えちゃってたり、あれはげんなりポイント。笑)

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トイレットペーパーのストックまでこだわり。抜かりない。

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これはバスルームのタオル掛け。
スケボーのウィール部分?でカスタムして作ったオリジナル。
色合いもかわいいし、アイデアが面白いです。

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ライト一つ一つにもこだわりがあります。

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ルームキーやグッズ類。
おみやげに持って帰りたくなるデザイン。

最後に、スタッフのサービスはというと、言うまでもないかもしれませんが、最高でした。

長年の友達を向かい入れる感じで、ラフで超フレンドリー。

おしゃれな若いスタッフ達はホスピタリティに溢れていて、今まで僕が泊まったホテルの中で一番好きな対応でした。

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部屋に入ると、手書きのメッセージが。
わざわざ手書きしてるのが嬉しい。

一貫して、自分達が作った大好きな空間にゲストを出迎える、という感じ。
空間からも、スタッフの対応からも、気持ちがストレートに伝わってきました。

冒頭で好印象があると、例えばエレベーターが無かったり、水道からお湯が出なかったりしても、全然嫌な感じはしないし、むしろ愛らしくなりますよね。

沢山のホテルがデジタル化し、効率や便利さを追求しているけど、不便だからこそ愛着が湧いたり、楽しめることは沢山あると思います。

不効率でも好きなことを追求できるのは、小さなチームの、小さなホテルの魅力ですね。

他の客室について

今回泊まった部屋はChapter6一つですが、他にも8種類の異なる部屋があります。

それぞれ一つひとつ、全く異なるデザインで作られています。


どこかで見たことあるようなデザインの焼増しではなく、ちゃんと歴史的な要素を取り入れてモダンにアウトプットされていて、オリジナリティがあります。

シンクや蛇口まで一つとして同じものなく選び抜かれているのが本当にすごい。

Hotel CovellのHPに各部屋のデザインが掲載されているので、是非見て欲しいです。

Sally Breerのデザインは、見たことない形状や合わせ方ばかりなのに、格好良く成立していて、異次元のセンス。
この空間は自分には作れないなーと関心しきりでした。
固定概念を軽々飛び越えているように見えるけど、どんなふうにインスピレーションを得てるんだろう。

経済合理性を無視したアイデアだからこそ、唯一無二の色が生まれる。

Hotel Covellは、世界中どこを見回しても無い、ここにしかないホテルとして、強く記憶に残りました。

でも、このコンセプトは、大きなホテルプロジェクトでは再現が限りなく不可能に近いものです。

空間の作り手としては、「一部屋毎にレイアウトもデザインも家具も変える」のは、時間とコスト効率が悪すぎるため中々できません。

規模の大きいホテルになると、経済合理性を意識してデザインする必要があるので、必然的に客室のデザインは統一化されます。

Hotel Covellは、経済合理性(安い、便利、使いやすい)を一旦無視して、
自分達が面白いと思うもの。
あったら良いよねと思うもの。
本当に使いたいもの。
を追求して、自ら手を動かして作った空間だからこそ、唯一無二の個性が生まれているんだと思います。

もちろん予算制限はある中で、どこまで理想を追求するのか葛藤はあったと思いますが、ここまで作りきっていることは本当にすごい。

ホスピタリティは人だけでなくて、空間を構成する全ての物を通して現れるんだなと身を持って体感したし、「こんなホテルが作りたい」と、自分の夢を重ねてしまいました。

僕がこのホテルをすごく好きだったのは、何より作り手達のライフスタイルや好きなもの、価値観に、自分が強く共感したからです。
でも、やっぱりそういう人のところに泊まりたいですよね。

最大公約数に好かれるものを作るのではなくて、「世界の中に、少なくても確実に存在する自分と同じ趣味嗜好の人達」に届くものを作る。

多様化していく世の中で、大切にしていきたい価値観です。

滞在情報

最後に滞在情報です。

Hotel Covellは前述のように9室部屋タイプがあり、宿泊は一泊315ドル(約34,000円)〜。
僕が泊まったChapter6は、395ドル(約42,400円)と、値段は少し高めです。

それでも、ここで得られないインスピレーションに溢れたホテルなので、見返りは十分にありました。

Silver Lakeエリアは、LAの中でもヒップなエリアとして注目されているので、カルチャーやクラフト好きな人達は是非行ってみて欲しいです。

早くコロナが終息して、世界を旅したいですね!

<Hotel Covell>
HP:https://www.hotelcovell.com/
Instagram:https://www.instagram.com/hotelcovell/
Address:4626 Hollywood Blvd, Los Angeles, CA 90027 アメリカ合衆国
Price:一泊 315ドル〜

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