表現の土台

『ニック加藤のハワイアンシャツ』

今週は、引き続き『小林秀雄全作品』を読むとともに、『文にあたる』（牟田都子）、『存在と時間』（ハイデガー著）、『なるほどの対話』（河合隼雄・吉本ばなな著）を読んでいます。

今度、久しぶりに海外へ行く予定で、色々な情報やお話を聞いている中で、ニック加藤さんというハワイのレジェンドのことを知りさっそく本を借りてみました。こんなカッコいい人がハワイ島に住んでいるんだ！　と思いましたが、このハワイアンシャツについての話も面白い。僕はハワイへはオアフ島に10年近く前に1回行っただけですが、その後もたまにハワイの観光はもちろん、文化についての本を図書館で借りて読んだりしていましたが、ハワイについての本は思いのほか少ない。この本も他の図書館から取り寄せてなんとか借りることができたものです。

この本はその名前の通り、ニック加藤さんのハワイアンシャツについてのこだわりについて書かれている本。こだわりというと何か主観的なものに感じるかもしれませんが、この本にはハワイアンシャツの歴史についても触れられております。でも、やっぱりこの主観というか、ニック加藤さんとハワイアンシャツの歴史と物語が面白いのです。単なる良し悪しの話ではなく、もう物語ですね。

ニック加藤さんがハワイアンシャツに出会って恋をしてしまう。まさに人がなんでかわからないけど好きっていうのは、恋みたいなものですよね。それから、ハワイシャツを集め、そして、服なので当たり前ですが、着続ける。着続けることでそれは愛に変わっていく。そんな変遷、それもまたその人の物語、彼と彼女（ハワイアンシャツ）との物語になっていくのです。

そうして長い間一緒にいると、お互いの色々なことがわかってくる。それは必ずしもいい部分だけではなかったでしょう。でも、ずっと一緒にいたからこそ、わかることがあった。この本はそんな二人の秘密をちょっとだけ公開してくれている物語のような感じがするのです。

そこから生まれた言葉がまた格好いい。
でも、これはたしかにそう感じたし、そうとしか言えないのではないかと思うのです。

ハワイアンシャツは「風を着る」こと

一度でもハワイへ行ったことのある人は、きっとその意味がわかるのではないでしょうか。僕も一度しか行ったことがないのですが、その時に風の心地よさを感じました。そして、海の美しさ。こんなにも観光客がたくさん訪れるのにどうしてこんなにも美しい海が残っているのか。何だか神秘的な島。それこそ神に守られている島ではないだろうか、と感じたのです。そんなことを感じるなんて他の国ではなかったので本当に不思議です。

ハワイという言葉の意味、諸説あるようですが、
ハワイの正式名称は「Hawai'i」で、
Hawai'iはHa＋wai+'iに分けられ、Haは呼吸（する）・生命の意味。

Ha・wai・iのwaiは水を表す。
最後の「i」は場所の意味（＝英語で言う「at」）。

つまりハワイは「生命と水がある場所」の意味するという説があります。

そして、ハワイは漢字で「布哇」と表します。
「布」、そして「吐く」という意味の「哇」の組み合わせです。

これもまた面白い。ハワイアンシャツの歴史については詳しくは本書を読んでみていただければと思いますが、そんな名前をつけた人たちもハワイアンシャツというものが生まれるなんて想像もしていなかったのではないでしょうか。

ニック加藤さんがハワイアンシャツを着る4つの理由があると言います。

風を着る
アートを着る
思い出を着る
アイランドを着る

そして、「ハワイアンシャツは、ボクのライフスタイルそのままだ」と語ります。

この言葉を聞くだけでも、なんだか心を動かされるものがありますが、「ライフスタイルそのままだ」という言葉通り、それはニック加藤さんの生き様でもあるのです。

僕は普段はあまり着る服へのこだわりは強くはありません。どちらかと言うと機能性だったり、最近ではオーガニックの素材だとか、トレーサビリティ、サスティナビリティとかを考えて、買うことが多くなってきました。もちろん選ぶ中では、デザインや着心地も気にしますが、僕の個性、ライフスタイルと呼べるかというと、そこまでの感覚で選んではいないような気がします。

でも、ニック加藤さんの言葉を聞くと、そういう選び方、いや、それこそ人生の楽しみ方、出会いの神秘がそこにあるような気がするのです。

ハワイに行ったら一着くらいはハワイアンシャツに出会いたいですね。北海道だとほとんど着る場面はないかもしれませんが、またハワイへ訪れることを願って、そして、もしかしたら僕の新しいライフスタイルはそこから始まるのかもしれません。そんな出会いを期待せずにはいられなくなる、素敵な本ですね。ああ、ハワイへ行きたい！