片山義幸《タイトル不明》製作年不明

3つの対立軸の静かな調和。

片山義幸は映像作家だが、文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品に選定され、FRANCK MULLER ART GRAND PRIX『求ム、創造の天才。』のグランプリを受賞した《草虫時図》といったインタラクティブな作品も制作している。(残念ながら《草虫時図》はAdobe Flashを用いていたため現在は体験不可能)
授賞式でFRANCK MULLER本人が「花には花の、虫には虫の時間があることを気がつかせてくれた」と語っていたように、花と虫の時間を組み合わせた美しい映像作品の《UMWELT》など自然と時間を扱った作品が多い。


その片山のサイトのPC版トップページには鉱物の標本箱のように風合いの異なる9つの石が格子状に並べてある。一見、ただの画像のようにも見えるが、それぞれの石にカーソルを載せると、あたかも水面のように流れる空を映し出す。これに気がつくと、いつの間にか石を撫でるかのようにそっとカーソルを載せてしばしば見入ってしまう。
ここには3つの対立軸を内包されている。一つ目は石と空、足元の存在と見上げる存在。二つ目は変化と永遠。移ろいゆく空は決して姿を止めることはなく消えゆくが、この作品では再び石に触れることで何度でも再現することができる。そして最後の三つめはバーチャルなデジタルとリアルな自然。インターネットというバーチャルな世界にありながら、石と空という人ならば人種や年代を問わずに必ず感触を想起できる題材が取り入れられている。この3つの対立軸を静かに調和させた作品と言えるだろう。

---メタノート---
自分もFRANCK MULLER ART GRAND PRIXには入賞したというご縁があり、片山さんとは少しだけメールのやりとりをさせていただいた経験があります。Adobe Flashを用いた作品が体験できなくなっているのが残念ですが、インタラクティブで美しい作品を制作されるアーティストだと尊敬しています。

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