エストニアで急性心筋梗塞・闘病記(完結編)
一応、
エストニアで急性心筋梗塞・闘病記(3)|Takumin|note
の続きではありますが、実は今回闘病記を書こうと思ったのは、この完結編の内容を書きたかったから。つまり、
いままでは前ふり
ですごめんなさい(笑)。
心筋梗塞発症前はどんな健康状態だったのか
2020年の初めに(数値的に)かなりひどい糖尿病を発症していたことに気づき、幸いなことにまだ合併症はほとんど出ていなかったので、最低容量のインシュリンと投薬と、鬼のような食事制限でかなり「正常値」に近いところまで1年ぐらいかけて戻すことに成功していた。
そして、ここ2年ほどはそれを維持し、直近では半年ちょっと前の8月で、HbA1c(3カ月平均での血糖値)が6.5だったので、近所のかかりつけ医では「もう(糖尿病の)薬は飲まなくていいよ」とは言われていた。ただ糖尿病とは関係なく、もともとコレステロール値(LDL)は高めだったので(これは母親も同じなので遺伝的形質?)、これまで通り食べ物でコントロールしつつも引き続きコレステロールを下げる薬は飲み続けたほうがいいと。
糖尿病発症時点でかなり細かい検査をしており、動脈硬化も「大動脈中でわずかに石灰化がみられる」という程度で、血圧はもともと低いのだけれどずっと110/70かそれ以下、あたりを維持し続けていた。血圧は家でも定期的に測定していたけれど、安静時で110を超えることはめったになかった。
つまり、急性心筋梗塞が起きやすい条件ともいえる、
高血糖
高血圧
動脈硬化・石灰化
のいずれも、
「傾向はあったが進んではいなかった」
といえるのではないか、と思っている。また遺伝的要因や喫煙・飲酒・ストレスも原因として挙げられるらしいが、親族中に心筋梗塞になった人は一人もいないし、たばこは生涯吸ったことがない。飲酒ももともと飲めないし、糖尿病になった3年前からはゼロだ。
今回の診断では…
ICUのドクターと、どれが主原因だったんだろうという話をしてみたのだけれど、彼も検査結果や数値を見ながら首をひねり、搬入時に少し高かった血糖値/HbA1cが「唯一の」説明しうる原因じゃないか、とは言っていた。実際治療レポートにはそれが書かれている。
といっても、救急搬入時のHbA1cは
7.28%で、確かに高いものの、いろんな文献を読むと8.0%以上で致命的な合併症を併発するリスクは高まるが、7.0%以下でほぼリスクはなくなり、7.5%以下でも8%以上よりは数分の一になる、とされている。つまりその辺に閾値があると考えてもよいと思う。
(参考: 日本糖尿病学会「糖尿病診療ガイドライン2019」など)
動脈硬化の進行具合については、搬入直後のCTスキャンの結果では、
確かに冠動脈で "tillukesi" な石灰化がみられる、とは書かれている。問題は "tillukesi" がどの程度を表すか、で、DeepLやGoogle Translatorでは「小さな」もしくは「微小な」という表現に翻訳されるが、実際どのくらいの感覚なのかはちょっとエストニア語のネイティブスピーカーでないとわからないかもしれない。
ただ、冠動脈といえば相当太いし、今回「患部」に挿入したステントも径3.5mmという結構大きなものだ。それがほんとに「詰まる」ぐらいの石灰化だったのか?もしくは他からプラークがそこに「たまたま」流れてきたのか?
つまり狭心症ならともかく、今回のようにいきなり大き目の冠動脈が詰まって壊死し、心不全から心停止となるような致命的な症状を、「いきなり」起こすのはどうも不自然な気がしてならない。ステップをいくつか飛び越えてしまっている感がある。専門家ではないのでそう思うだけなのかもしれないが。それまでに不整脈やそれに近いことが全く起きない、ということがあるだろうか?
また、ドクターとの問診中にそれまでの二つの懸念点を聞いてみたのだが、
Q.「今後同様な症状が再発する可能性はあるか」
A.「きわめて低い」
Q.「(他の)冠動脈が詰まるのを避けるために外科手術は必要か」
A.「全く必要ない」
と彼女は全く躊躇せずに断言していた。だからこその早期退院だったに違いないし、日常的に心電図を計測する必要性と同様、定期的に検査をする必要性すら彼女は言及しなかった。
これは何を意味するのだろうか。
思ってもみなかったリスク
ICUを出た週末あたりで、仰天するようなニュースを目にすることになる。
カロリーゼロの甘味料、心臓発作や脳卒中リスク増大と関係 米研究 - CNN.co.jp
ここで問題にされているのが「エリスリトール」という甘味料で、実はこれは「人工」ではなく自然界・一部のフルーツや、体内でも生成される物質なのだが、これがある一定量以上血中に含まれる糖尿病やほかのハイリスク群では、心筋梗塞や脳梗塞などの血栓による症状のリスクが「倍になる」という研究結果である。
特筆すべきは、もともとエリスリトールの危険性を調べていたわけではなく、血栓のハイリスク群の血液中で共通成分を探していたところ、たまたまエリスリトールの血中濃度が高い、ということが分かったと。
ここで私が愕然としたのは、自分の「高血糖克服法」がまさにこれだったからだ。
ITエンジニアがHbA1cと闘ってみた|Takumin|note
ここで、血糖値低減にいちばん聞いた食べ物としてあげているのが、
これはほとんど砂糖と同じ甘さでかつ同じ風味で、料理やお菓子にも「砂糖の完全な置き換え」として使え、それでいて摂取後も「まったく」血糖値があがらない(リアルタイム血糖値計で測定したので確か)という、高血糖に苦しむ人々にとっては「夢のような」甘味料で、2020年の糖尿病発症発覚後から積極的に砂糖をこれに「完全に置き換えて」、それこそ煮魚や煮物や料理の味付けから、ホームベーカリーでのパン、煮小豆やお汁粉や水ようかんやフルーツゼリー、ココアに至るまで、ありとあらゆる飲食物でこれを使っていた。
おそらくそのおかげで、甘いものに飢えずに比較的楽に血糖値をさげ、副作用として家族まで一緒に痩せるという利点まであった。
特に心筋梗塞発症前の1月は、日本に一時帰国していて、普段よりもはるかに大量のこの甘味料をありとあらゆるものに使っていた記憶がある。
で、この主成分が、
エリスリトール
なのだ。
論文中ではだいたい30g/日ぐらいの量を取り続けると血中エリスリトール濃度が上記のリスクを増大させるようだが、正直日によってはそれを超えるくらいの分量のエリスリトールを取っていた、と思う。そして、記憶はそれほど鮮明じゃないのだが、少なくとも当日か前日朝に、プレーンヨーグルトに小さじ2杯(=10g)のこの甘味料をかけて食べたことは間違いないと思う。
まだ調査が必要だが…
これは単に私の限定的なケースにすぎないし、もしかしたら他にもっとリスク要因があったのかもしれないが、もしそうならエストニア最高峰の循環器系ドクターが二人とも見逃すはずはなく、それに応じた治療になっていたはずだ。ということで、この甘味料が、たまたま適度な濃度で、たまたまタイミング悪く、問題とされる効果が「出てしまった」という可能性は、少なくともゼロではないんじゃないかと思う。
この甘味料は世界的に使われているし、日本国内でも「食品として」使われているので、添加物と違って必ずしも原材料として明記する必要もない。知っている限り、大手製菓会社の「ローカロリースイーツ」として使われているのを知っている(どちらも食べていた)し、国内大手の化学メーカーからも食品材料として製品化されているので、相当数の食品の中に含まれる可能性がある。
問題はそれを摂取する人がもともとハイリスク群であり(でなければこんな高価な甘味料はわざわざ使わないだろう)、かつその血中濃度がリスクがあるとされるレベルを「知らず知らずのうちに」超えかねない、というところで、結論としては、
ハイリスク群の人は今すぐ摂取・使用をやめる
べきだ、と思う。少なくとも今後しばらく、いろいろ明らかになるまでは。
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