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副業を当たり前にするための新サービス「クラウドリンクス」の、コンセプト設計のプロセスを全公開。

この記事は、2020年1月10日に作成された記事です。

みなさんこんにちは、UXデザイナーの八尾です。

2020年頭から新サービスのリリースという嬉しいニュースを発表しました!

今日は、私がプロダクトマネージャー兼UXデザイナーを務めた、新サービス「クラウドリンクス」について書いてみます。
これまで発表できなかったので書きたいことはすごくたくさんあるのですが、その中でも今日は、初期に非常に重要になる、プロダクトコンセプト作りについて裏側やプロセスを紹介します。

ユーザーと向き合い、プロダクトづくりの指針となるプロダクトコンセプトを作ることはサービス立ち上げ初期時点でのデザイナーの大きな仕事の一つだと思うので、今後新規事業に携わる方の参考になれば幸いです。

この記事でいうプロダクトコンセプトは、

・プロダクトビジョン(プロダクトを通じてどのような世界を目指すか)
・プロダクトのコア体験(プロダクトを通して提供する根本価値は何か)
・プロダクトパーソナリティ(プロダクトの振る舞いや人格はどんなものか)

とご理解ください。

クラウドリンクスとは?

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クラウドリンクスは一言で言うと、課題をもった企業と、仕事をしたいハイクラス人材のマッチングプラットフォームです。

特徴としては、タスクベースではなく課題ベースで企業と個人がマッチングすることに重きを置いていることです。
企業は、要件もきれないような抽象的な課題を掲載することができ、個人は、タスクベースではなく自分のスキルを発揮できる課題ベースのプロジェクトに参画できます。

すでに2000名以上のハイクラスな方にご登録いただいており、

・「Pairs」を運営する株式会社エウレカに、株式会社メルカリのデータアナリストが、データ分析/UXリサーチで副業として参画
・男性向けスキンケアブランドを展開する株式会社BULK HOMMEと、元ユニ・チャームのフリーランスマーケターが、海外展開の戦略担当で参画

など、多くの事例が生まれています。

そんなクラウドリンクスは、

「一人n個の職を持つことが当たり前にし、正社員/パートタイム/派遣に次ぐ第4の採用を作る」

というサービスビジョンを掲げています。

個人は副業解禁をはじめ、複数の会社と仕事をするのが当たり前になる時代と言われていますが、実態としてその実現はまだまだです。企業側も人材採用難の時代になりながらも、副業やフリーランスの受け入れは進んでいません。

ハイクラスな個人がより流動的に価値を発揮できるよう、日本の働き方を変えなければ個人も企業も幸せにならず、国力の低下にさえ繋がると思っています。
なのでクラウドリンクスを通じて働き方をアップデートさせます。

ここからが本題で、どのようにクラウドリンクスのプロダクトコンセプトが生まれたのかをご紹介します。

クラウドリンクスのプロダクトコンセプトができるまで

今回、新規事業を作るにあたって、大きく以下のプロセスで初期のコンセプトづくりを進めました。

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phase0=アイディエーションフェーズ(事業アイデアを出す)
phase1=プロダクト検証フェーズ(プロダクトに落とし込み、検証する)

phase0 アート思考×フレームワークで、とにかくアイデアを出す

phase0はアイデア出しです。事業アイデアを出す上で、より大きな市場の転換を測るため、初めからユーザーヒアリングで共感から始めるデザイン思考的に考えることはしませんでした。

世の中の全体的な流れを踏まえた上で、「世の中こうあるべき!こうあると面白いよね!」という、いわばアート思考的にアイデアを出しました。

この記事ではアイデア出しのフェーズには詳しく触れませんが、phase0-1で、PEST分析やシナリオドライバーなどのフレームワークを用いてざっくり「働き方」についての世の中の大きな流れを理解しました。

その上で、phase0-2に入り、バイアスブレイクブレスト(参考にしたのはこちら)という、業界の思いこみを切り口に変換してアイデアを出す手法を使って、コンセプトアイデアを1週間で100個以上出しました。

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↑アイデアたち

バイアスブレイクブレストというフレームワークの特徴と、数を重視したこともあり、中にはかなり馬鹿げたものも多く出ましたが、それだけ幅広く「働き方」について考えることができました。

phase1 妄想に近いコンセプトアイデアを具体的なプロダクトコンセプトに昇華させる

phase1では、具現化する価値のありそうなアイデアを選び実際にプロダクトコンセプトを固めていきます。

このタイミングでユーザー候補のペルソナ設定や、プロトタイピングからのユーザーヒアリングでの検証を徹底的におこないました。詳しい説明は割愛しますが、デザインスプリントという手法を使い進めました。

ただ、phase1に入るタイミングでは、まだまだアイデアは荒削りでふわふわしています。自分たちがどのようなプロダクトを作りたいのかも曖昧な状態でした。

そのような状態からプロダクトコンセプトという形で具現化させるためにおこなったことを紹介します。

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phase1-1 ワークショップで共通認識を取りながら見えるようにする

まずやったことは「誰をどのように幸せにするのか」を明確にすることです。そのために、

・簡易ペルソナ
・UXフロースケッチアップ
・UXコンセプトツリー

こういったツールを利用して、自分たちのイメージを具体化させていきました。まだ曖昧な状態だからこそ、メンバー全員の考えていることを具体化し、共通認識を取ることを徹底しました。上記の手法はそういった目的においては高い効果を発揮します。

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↑初期の簡易ペルソナ

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↑UXフロースケッチアップ

各個人で、作成したペルソナが、どのようにサービスを体験して価値を得るかを6コマ漫画で作成し、それらを統合する形でメンバー間の認識齟齬を無くしました。ここでふわふわしたイメージを一段階具体化させることができました。

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↑UXコンセプトツリー

6コマ漫画でできたイメージ像を言葉で再度言語化、どのように実現するかというプロダクトイメージの具体化をするために、UXコンセプトツリーを作成しました。これも個人で作成→統合というアプローチをとったことで、全員が共通認識を持ちながら言語化をすることができました。

これらによって、作り手の中で「誰にどのような価値をどうやって提供したいのか」というイメージを固めることができました。

phase1-2 デザインスプリントで検証、ユーザーと会う 

次は当然ユーザーに会います。目的は、ペルソナがあっているのか・課題の仮説はあっているか・提供したい価値はあっているかということを検証するためです。プロトタイプを用いたユーザーヒアリングを通じて、課題の確からしさを確認しました。

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↑初期のプロトタイプ

ここで大事にしていたことは、現状の仮説にこだわらないことです。まだまだ作り手が勝手に考えているだけの仮説なので、その仮説にこだわってしまうと最初のコンセプト段階で全く刺さらないものができてしまいます。

また、ユーザーと話をする上で、課題、ソリューションどちらが良い(または悪い)のかを見極めることを重視しました。ユーザーからの声は「良いですね!」だとしても困っていることがわかってくれているから「良い」といっているのか革新的っぽいアプローチを「良い」といっているのかでは全然違います。
ここを丁寧に紐解きながらユーザーの理解を進めていきました。

このコンセプトレベルの検証はプロダクトを作るフェーズに入ってからも常に疑いを持って続けてきました。

phase1-2-2 事業性評価と共に、あらゆる観点でのサービスの相対比較

メンバー間で認識を合わせ、ユーザーとのすり合わせをおこない、かなり具体的なプロダクトになってきました。これらのデザイン的なアプローチに加え、もう一つやってよかったことが、あらゆる観点でのサービスの相対比較です。

競合を理解したり、差別化を図ったりするために、よくマトリクスで他社サービスや自社の他サービスとの比較をおこなうことはあると思います。
自分たちも最初は事業性評価のためにおこないましたが、結果として自分たちの作るサービス像を明確化でき、何を大事にするべきかを明確にできました。

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↑比較の一例

こういった比較を何度も繰り返しおこない、誰もが知っているサービスと比較することで自分たちが作ろうとしている何かを浮かび上がらせることができます。

最終的に導き出されたコア

そんなクラウドリンクスのサービス構想時に作成し、プロダクトづくりの指針としたプロダクトコンセプトを紹介します。

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↑プロダクトコンセプトのアウトプット

プロダクトビジョン
プロダクトビジョンは、冒頭でも記載していますが、「一人n個の職を持つことが当たり前にし、正社員/パートタイム/派遣に次ぐ第4の採用を作る」です。

このビジョンはユーザーヒアリングや、今のマクロ的な流れを踏まえて決めました。

プロダクトコア体験
上記のビジョン実現のために、プロダクトのコア体験を、「今まで出会えなかったはずの企業/個人との上質な出会い」としました。

プロトタイプを元にユーザーヒアリング、事例づくりを重ねた結果、ユーザー(企業も個人も)の課題は良い人材、面白いプロジェクトとの出会いがないと言うことがわかりました。

そして、実際にマッチング事例を作っていく中で多く得られた声は、ユーザー側、企業側共に「こんな人(仕事)なかなか出会えないので繋がれることがすごく嬉しい」ということでした。
この出会いを提供していくことが、既存サービスとのシナジーも高く、ユーザー価値も高いということで出会いにフォーカスした体験、ビジネスモデル設計をしました。

プロダクトパーソナリティ
プロダクトの提供価値を定めた上で、実際のサービスのトンマナや、見せ方、自分たちの振る舞いを考慮する上で、プロダクトパーソナリティを定めました。

あらゆる観点からの相対比較やユーザーの声を元に、ハイクラスにこだわりたいという思いや、あらゆる職種の人が登録するサービスにしたいという思いを込めて、キーワードとして「洗練」「個性豊か」「対等」「誠実」という4つ抽出しました。

こう言ったプロダクトパーソナリティを初期に決めていたことで、営業メンバーとも、「それはリンクスがやるべきじゃないよね」という共通認識が常に取れている状態を実現できました。

最後に 

こうして、半年の月日を経てクラウドリンクスはプレスリリースを迎えるに至りました。

これまでを振り返ると、総じて、クラウドリンクスは丁寧にプロセスをふみつつも、最速で60点を取り続けるということにこだわっていました。

プロセスのなかでなんどもやり直しをしたこともあり、実装までおこなったMVPを1から作り直すこともありました。ブランド部分の定義もまだまだ粗いですし、足りない機能も山ほどあります。

それでも、メンバーともユーザーとも認識を合わせながら60点をとり続けたことで、現在プレスリリースを経て100点を取るための動きができるレベルになったのかなと思っています。
上記の記事のどのトピックをとっても単体で記事にできるようなものばかりですが、プロダクトコンセプトの全体像を紹介しました。

新規事業づくりやプロダクトづくりにおいて何か少しでも参考になれば幸いです。

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