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【書評】FACTFULNESS ハンス・ロスリング 僕たちは世界を誤って理解している!!

■はじめに

あなたはこんな風に世界を捉えていないでしょうか?

「世界では戦争、暴力、自然災害、人災、腐敗が絶えず、どんどん物騒になっている、金持ちはより一層金持ちになり、貧乏人はより一層貧乏になり、貧困は増え続ける一方だ。何もしなければ天然資源ももうすぐ尽きてしまう。」

僕は『正しいでしょ!!』そう思っていました。

しかしこれは『誤った思い込み』であると、本書の著者ハンス・ロスリングは言います。

なぜそのような『誤った思い込み』が起きてしまうのか。

それは人間が古来から持つ『本能』の影響によるものだそうなんです。
※詳細は後ほど

■読み終えた後、世界の見え方が180度変わる

先進国に住む全ての人が読むべき本であると感じています!
それくらいの衝撃を得た1冊でした。

世界の見え方が180度変わります。

誤った認識により、『誤った選択』や『誤った意思決定』をしていた過去の自分に気づき、世界を正しく認識することの大切さを教えてくれます。

■著者 ハンス・ロスリングについて

■経歴
・1948年生まれ。カロリンスカ医科大学 グローバルヘルス 元教授
・スウェーデン・ウプサラ大学で統計学と医学を学びインドのバンガロールにある聖ヨハネ医科大学で公衆衛生を学んだあと、1976年に医師となる。
・1979年から1981年まではモザンビークのナカラで地域担当の医師として働き、それまで知られていなかった神経が麻痺する病気「コンゾ」を発見。
・この病気の調査と研究によって1986年にウプサラ大学で博士号を取得。
・1997年からはストックホルムにある大学病院でグローバルヘルスの教授を務める。
・専門は、経済発展と農業と貧困と健康のつながりについての研究。カロリンスカ医科大学で新しい授業科目を開講し、提携研究を立ち上げ、グローバルヘルスについての教科書を共著。
・2005年には、息子のオーラとその妻のアンナと共にギャップマインダー財団を設立。
・スウェーデン科学学会の国際分科会メンバーであり、スイスの世界経済フォーラムのグローバル・アジェンダ・ネットワークにも所属する。
・2009年にはフォーリン・ポリシー誌からグローバル思想家100人のひとりに選ばれ、2011年にはファスト・カンパニー誌から世界で最もクリエイティブな100人のひとりに選ばれた。
・2012年にはタイム誌が選ぶ世界で最も影響力の大きな100人のひとりに選出。
・2017年他界。

ハンス・ロスリングが本書で伝えたかったことは

『世間は、世界を知らなさすぎている』  ということです!

なぜ人は正しく世界を認識出来ていないのか。

正しく世界を認識していないと、起こるリスクはどういうものか。

世界を正しく見る為にはどうすれば良いのか。

その方法を人間の『本能』『心理学』の観点から教えてくれます。

残念ながらハンスは2017年に他界をしています。
人生の終わりを遂げる最後の最後まで本書の執筆を続けました。

よくあるただの知識本ではなく、一人の男の執念に近い想いを、五感で感じ、味わうことが出来る一冊となっています。

きっと、この先の人生もずっと、この本は力になってくれるでしょう。


■本の構成と読みやすさ

目次
イントロダクション
第1章 分断本能 
「世界は分断されている」という思い込み
第2章 ネガティブ本能 
「世界がどんどん悪くなっている」という思い込み
第3章 直線本能 
「世界の人口はひたすら増える」という思い込み
第4章 恐怖本能 
「実は危険でないことを恐ろしい」と考えてしまう思い込み
第5章 過大視本能 
「目の前の数字がいちばん重要」という思い込み
第6章 パターン化本能 
「ひとつの例にすべてがあてはまる」という思い込み
第7章 宿命本能 
「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
第8章 単純化本能 
「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
第9章 犯人捜し本能 
「だれかを責めれば物事は解決する」という思い込み
第10章  焦り本能 
「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
第11章  ファクトフルネスを実践しよう
おわりに

全体のボリューム感は350ページほど(脚注以降除く)
読む人にもよりますが、集中すれば3時間程度で読み切れるかと思います。

忙しい人は1日3章ずつなど、チャプターごとにじっくり読み進めるのもおすすめです!!

それでは、世界を正しく見る為に知っておきたい本能について軽くご紹介!!

■分断本能

『分断本能』とは物事や人々を2つのグループに分け、その間には決して埋まることのない溝があると決め付けてしまう本能です!

世界が『お金持ちグループ』と『貧乏グループ』に分断されているという思い込みをしてしまうのも、分断本能が影響しているそうです。

しかし、多くの場合はそこに分断はなく、誰もいないと思われていた中間部分に大多数の人がいるというのです!
※本書では世界の経済レベルは4つのレベルに分けられるといいます。

成功か失敗か、良い人か悪い人か、金持ちか貧乏か
2項対立はシンプルで分かりやすいですが、多くの場合はそのどちらにも当てはまらない場合が多いとハンスは言います。

世界で最も多くの人が住んでいる国は高所得国でも低所得国でもなく、中所得国だということを多くの人はご存知ないのではないでしょうか!?
僕は知りませんでした!

話の中で、『分断』を示す言葉に気がついた時、注意が必要だとハンスは言います。

多くの場合は分断はなく、誰もいないと思われていた中間部分に大半の人がいるのです。

■ネガティブ本能

『ネガティブ本能」とはものごとのポジティブな面よりもネガティブな面に意識がむいてしまいやすいという本能です!

世界は、日に日にどんどん悪くなっている。という勘違いが多くの場所で起こってしまうのも、このネガティブ本能の仕業だといいます。

確かに、地球温暖化やテロ、感染症などの解決すべき問題はいくつかありますが、間違いなく世界は良い方向に進んでいるとハンスは言います。

世界の人口のうち『極度の貧困状態』にある人の割合は過去20年で約半分になり、『世界の平均寿命』は約50年で20歳以上伸びました!!

ちなみに現在の世界の平均寿命は73歳を超えています。

『悪い』と『良く』なっているは両立しているとハンスは言います。

悪いニュースの方が広まりやすく、世界がますます悪くなっていると『感じている』だけなんだそう。

ネガティブな面は強く映るということを肝に命じて生きて生きたいですね!!

■直線本能

『直線本能』とはまっすぐ直線に伸びてきたグラフは、これからもこのまままっすぐ伸びていくだろうという思い込みです!

分かりやすい例が『世界の人口はひたすら増え続ける』という勘違い!!
下のグラフは総務省統計局が出している世界の人口の推移です。

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これまで右肩上がりに爆発的な人口増加が起こってきましたが
2100年頃にはこのグラフは横ばいになり人口は安定すると言われています。

すでに子供の増加数は横ばいです!!

他にも不動産の価格は上がり続ける!株は上がり続ける!世界は成長し続ける!など

合っているかどうかは置いといて、人間はものごとを直線グラフで考えがちだとハンスは言います。

直線本能に惑わされないようにする為には、グラフの種類にはたくさんの形があることを認識しておくことが大切だそう。

世界のデータにまつわるグラフは直線でないケースが多く、S字型やこぶ型、滑り台形のグラフが合致するデータも少なくありません!!

何もかもこれまで通り、一直線に上昇(下降)していくだろうという思い込みには気をつけましょう!!

■恐怖本能

『恐怖本能』とは危険でないことを恐ろしいと感じてしまう本能です!

地震、戦争、難民、病気、家事、洪水、テロ、リストラなど
めったに起きないことが頻繁に起こることよりもニュースになりやすく
人は世界中で頻繁に起きていると錯覚してしまうとハンスは言います。

これは日常生活でも気をつけたいし、多くの人に気をつけなければいけないポイントだと思いました!!

多くの企業は私たちの『恐怖本能』を刺激し購買を促すような商品販売戦略を取っていることがあるのではないでしょうか。

例えば保険の場合、、、

『最悪のケース(恐怖)』を想像させ『恐怖本能』を刺激し高い手数料を払わされてしまう。こともある、、、

良い面ももちろんありますが気をつけたいところです。

世界は危険と思い込む前に現実を見ることが大切だとハンスは言います。

リスクを想定する際は『危険度』『頻度』を確認する必要があるそう。

恐怖と危険は違い、恐ろしいと思うことはリスクがあるように見えるだけで、危険なものは確実にリスクがあるというのです。

■過大視本能

過大視本能とは目の前の数字や、ひとつの実例を重要視しすぎてしまう本能です!

メディアは過大視本能を利用することが得意で
さまざまな事件、数字、データを実際よりもさも重要であるかのように伝えたがるから注意が必要だとハンスは言います。

2016年に世界で420万人の赤ちゃんが亡くなりました。

この数字だけみると、かなりの人数が亡くなっているように見えますが
ハンスはかなり小さな数字だといいます。

420万人という数字は2016年のものですが、

2015年は440万人

2014年は450万人

年を追うごとに、少しずつ減少していることが分かります。

1950年まで遡ると赤ちゃんの死亡者数はなんと1440万人

約70年で赤ちゃんの死亡数は約1000万人も減少しているのです!!

どうでしょうか??

420万人という数字は、先ほどと見え方が変わってきませんか?

確かにひとりひとりの赤ちゃんを想像すると、世界で420万もの小さな命が消えてしまっているという事実は涙なしには受け入れられません。

一方でひとつの数字を過大視してしまうと世界の本当の姿を把握できなくなってしまうのも事実なのです。

目の前の出来ことや数字を判断する時は、他のデータと比較することが大切ですね!

■パターン化本能

『パターン化本能』とはひとつの例が全てにあてはまるという思い込みです!

ある青年がインドに訪れた際に、閉まりかけのエレベーターに乗ろうと、手をドアの隙間に入れたところ、ドアはそのまま閉まり、大怪我をしてしまったという事故があったそうです。

めちゃくちゃ怖い!!

人はいつも、何も考えず物事をパターン化し、それを全てにあてはめてしまうとハンスは言います。

ただ、人が生きていく上でパターン化は欠かせなく、それが思考の枠組みになります。

どんな世界も、パターン化せずに新しく捉えていたら、疲れてしまいます。

一方で、世界のあらゆる事象すべてを、パターン化で判断してしまうと思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあるとハンスは言います。

パターン化の罠には気をつけたいですね。

■宿命本能

『宿命本能』とは、持って生まれた宿命によって、人や国や宗教や文化の行方は決まるという思い込みです!

アフリカはこれからも貧しいままだし、それがアフリカの宿命なのだという意見をあなたはどう思いますか??

世界でもまだ多くの人がこの意見を信じている人が多いとハンスは言います。

確かにアフリカ大陸全体を見れば、ほかの大陸より発展は遅れています。

しかし、アフリカの大陸の中でもチュニジア、アルジェリア、モロッコ、リビア、エジプトに注目をしてみると、この5カ国の平均寿命は全世界平均の73歳を上回っているそう!!

ひどい飢餓や紛争があった時代には、中国も、経済発展などありえないと思われていましたが、世界経済を牽引する大国となりました。

インドだってこの30年で急速に発展を遂げました。

今ある状態が、昔からそうだったわけではなく、これからもそうあり続けるわけではないとハンスは言います。

世界の色々なものごとが、変わらないように見えるのは、変化がゆっくりと少しずつ起きているからだそう。

知識をアップデートし続け、小さな進歩をしっかりと追いかけたいものですね!!

■単純化本能

『単純化本能』とは、世界の様々な問題に、ひとつの原因とひとつの解答が当てはまるという思い込みです!

シンプルなものの見方に、私たちは惹かれます。
難解なものごとをシンプルに理解出来たり、ひらめいたりすることには快感を覚えますよね。

パッとひらめいた『シンプルな解』が、他のたくさんの事柄にもぴたりと当てはまると思い込んでしまうのは、よくあることで

それによって、全ての問題はひとつの原因から生まれているに違いないという錯覚を生み出してしまうとハンスは言います。

例えば『平等』というシンプルで美しい概念は、『格差』があらゆる問題の元凶だという単純すぎる考え方に繋がってしまいます。

そうなると、どんな場合でも『格差』は良くないし、資源の再分配によって何でも解決出来るのではないかと思い込んでしまうようになってしまいます。

自分の見方に合わない情報から目を背け、本質的な理解や判断が出来なくなってしまうように『単純化本能』によってコントロールされてしまっているのだそう。

単純なものの見方と単純な答えには、要注意ですね...!!

■犯人探し本能

『犯人探し本能』とは、何か悪いことが起きた時、誰かを責めれば物事は解決をする。という思い込みです!

それは、正しい問題解決方法ではないし、誰かを責めてもまた悪いことは繰り返し起こるとハンスはいいます。

例えば、飛行機事故を睡眠不足のパイロットのせいにしても、次の事故は防げません。

当たり前かもしれませんが、次の事故を防ぐには、なぜパイロットがウトウトしてしまったのかを探るべきでしょう。

世界の深刻な問題も、日常で起きるトラブルも、問題を引き起こすシステムを見直さないといけない。

犯人探しをしている場合じゃない!!
とハンスは言います。

誰かに責任を求めるのではなく、真の課題を探求する勇気を持つことが大切ですね!!
若者よ、選挙に行こう!

■焦り本能

『焦り本能』とは、今すぐ手を打たなければ大変なことになる、という思い込みです!

昔、モザンビークのある町で原因不明の病気が流行した時、感染拡大を防ぐ為に、当時の市長が道路の封鎖をしたことがあったそうです。

その付近の村に住んでいた女性や子供たちは、毎日、20人ほどでバスに乗り作物を売る為に市場に出かけていました。

しかし、道路封鎖でバスが来ないことを知った彼らは、ボートに乗り市場に向かわなければなりませんでした。

全員が乗り込んだその小さなボートは波にさらわれ、漁師を含め、女性と子供たちは溺れ死んでしまったのです。

後日、空気感染をすると疑われていたその病気は作物からの毒によるものだと分かったそうです。

今すぐに手を打たなければならないというという焦りは
思考を停止させ、正しい情報を知る前に、誤った行動を助長してしまう危険な本能だとハンスは言います。

今すぐに決めなければいけないと感じたら、自分の焦りに気付き
事実を確認し、事実をもとに行動をすることの大切を学びました。

※最後だけ思いの外悲しいエピソードと悲しいトーンで終わってしまった...!!

■まとめ

いかがでしたでしょうか!

今回書評で紹介させていただいた『本能』による思い込みのエピソード例は
本書に記載されている内容の5%くらいの内容です。

ここには書ききれないほどのスケールの

『全人類』の世界に対する『誤解』

その背景やストーリーが本書には描かれています。

少しでも気になった方は是非本書を手にとって頂きたいと思います!!

10の『本能』による思い込みを乗り越え、世界を正しく見る方法を
身につけませんか?

きっと、世界の見え方がガラリと変わります!!

それでは、最後までご覧いただきありがとうございました!



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