見出し画像

ADHDの部下と5年間付き合った経験

はじめに

私はこれまでにADHDの部下と5年間仕事をしてきました。正直なところ、未だに完全な解決策は見つかっていません。このエッセイは、現在ADHDの部下を持つ上司や、職場でADHDに関連する困難に直面している方々に向けて書いています。読者の皆様が不快に感じないよう、可能な限り配慮して記述しておりますが、至らない点がありましたらご容赦ください。


部下の居眠り問題

私には20代の若い男性の部下がいました。彼は頻繁に居眠りをしており、1対1の会議中にも寝てしまうことがありました。会議で話している最中に寝てしまうこともあり、それが原因で他の人に不愉快な思いをさせ、怒られている時ですら寝てしまうことがありました。


最初は睡眠障害なのかもしれないと考え、産業医に相談しました。産業医からは、運転中に居眠りをしてしまった場合、自分だけでなく他の通行人の命にも関わるため、医療機関の受診を勧めるべきだと言われました。


医療機関の受診拒否とその後

私はその助言を基に、彼に「居眠りは危険だから、病気かもしれないので医療機関を受診してみた方がいい」とお願いしました。しかし、彼は「僕は病気ではありません」と言い、受診を拒否しました。本人が拒否する以上、強制はできないため、その件は一旦諦めることにしました。


その後も彼の居眠りは続きました。会議での議事録を取らせても、支離滅裂な文章になり、仕事をお願いしても、例えば午前中に案件Aを翌日までにやって欲しいと依頼し、午後に案件Bを今週末までにやって欲しいと依頼しても、案件Aを忘れてしまい、案件Bだけを覚えている状態でした。結果として、翌日案件Aについて確認すると、「何のことですか?」と返されることが頻繁にありました。


メモを取る指示とその効果

そこで、彼にメモを取るように指示しました。彼は私の指示を受けて、依頼されたことを箇条書きでメモに取っていました。私は彼がメモを取るのを見て、「よし、これで問題は解決する」と思いました。しかし、状況は改善しませんでした。再び指示を忘れてしまい、「指示されていません」と言われたので、「メモを取っていたでしょう?メモを見返せばいいじゃない」と言うと、「メモをどこにしまったか忘れました」と返されました。


ADHDの疑いと診断

この時点で、いよいよおかしいと思い、再度産業医に相談しました。産業医からは「ADHDの可能性がある」と言われましたが、それを本人に伝えるには親を呼び、上司から説明してもらう必要があると言われました。私は「成人している子に対してなぜ親を呼ばなければいけないのか?」と感じましたが、それがルールだと言われました。


ADHDとは何か

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、注意力の不足、多動性、衝動性を特徴とする発達障害です。これにより、仕事や日常生活での課題に取り組むことが難しくなることがあります。


医療機関の再度の受診とその結果

結局、親を呼ぶのはハードルが高すぎるため、再度彼に「会議中に居眠りしてしまうのは危険だから、病院に行ってみてくれないか」とお願いしました。今回は了承してもらい、彼は睡眠外来を受診しました。検査の結果、彼の睡眠時の脳波には異常があり、睡眠の状態の脳波になっていないことが分かりました。そこで薬での治療を開始し、1ヶ月間は支離滅裂なこともなく、会議中も起きていることができました。


薬の自己中断と元の状態への戻り

しかし、1ヶ月後、再び彼は居眠りを始めました。薬を飲んでいないのかと尋ねると、「僕は病気ではないので薬は要りません」と自己判断で薬をやめてしまい、通院もやめてしまいました。結局、元の状態に戻ってしまいました。


ADHDの人へのアドバイス

- 自己理解を深める:ADHDの特性を理解し、自分の行動パターンや困難点を認識することが大切です。具体的には、自分がどのような状況でミスを犯しやすいか、集中力が続かない時の対策を考えることが重要です。

- メモやタスク管理ツールを活用:アプリやデジタルツールを使って、タスク管理を徹底する。例えば、リマインダー機能を活用し、期限を設定することで忘れ物を防ぐ。また、定期的にメモを見返す習慣をつけることも効果的です。

- 定期的な医療相談:定期的に医師やカウンセラーと相談し、適切なサポートを受ける。治療法や薬の効果を継続的に評価し、必要に応じて調整することが大切です。

- 自己肯定感を持つ:ADHDの特性により、自分を責めてしまうことが多いですが、自己肯定感を持ち、自分の強みや成功体験に焦点を当てることが重要です。自己啓発書やサポートグループを活用するのも一つの方法です。


ADHDの上司や同僚への対処方法

- 明確な指示を出す:口頭だけでなく、書面やデジタル形式で指示を提供し、確認し合う。例えば、メールやチャットツールを使ってタスクをリスト化し、期限や優先順位を明確にする。

- フォローアップを行う:定期的な進捗確認とフィードバックを行う。例えば、週次ミーティングやデイリースタンドアップミーティングを活用し、タスクの進行状況を確認する。また、進捗に対するポジティブなフィードバックを忘れずに行う。

- 理解と共感を持つ:ADHDの特性を理解し、批判ではなくサポートする姿勢を持つ。例えば、失敗した場合には原因を一緒に探り、次に同じミスをしないための対策を共に考える。

- 柔軟な対応をする:必要に応じて業務の調整やサポートを行う。例えば、複雑なタスクを細分化して依頼する、集中力が必要な作業には静かな環境を提供するなど、個々のニーズに合わせた対応を心掛ける。


結論

このようにして、彼と5年間の上司と部下の関係が続きました。彼との仕事は辛いこともありましたが、どちらが悪いわけでもありません。ADHDの人々とその上司や同僚が互いに理解し、協力してうまくやっていくことが重要です。それぞれの特性や困難を認識し、サポートし合うことで、共に成長し、働きやすい環境を築いていきましょう。共に理解し合い、協力し合うことで、より良い職場環境を目指していきましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?