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ボトムアップの変革は【イシューセリング】から

現場を指揮しているミドルやPMのところには、関係者とのコミュニケーションによって、日々さまざまな情報が集まってきますよね。その中から新しい製品・サービスのアイデア、現行のプロセス改良のアイデア、発生している問題を解決するためのアイデアなど生まれてくることがあると思います。

しかし、リソースが足りず行動に移そうにも移せない。上層部の許可や協力を得たいところであるが、どうすればいいだろうか。

そんな風に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。そんな方のために「イシューセリング」を紹介します。「イシューセリング」は、ファースト・セカンドラインマネジャーやPMの立場から、GMやエクゼクティブ、そしてトップを動かすのに欠かせないスキルです。ここでは「イシューセリング」とはどんなものなのか、どのような効果があるのか、どうやって「イシューセリング」するのか、ということについて書いていきます。

・イシューセリングとは?

イシューセリングとは、ジェーン・ダットンと、参考図書の共著者のスーザン・J・アシュフォードが提唱した概念です。英語の直訳そのもので、イシュー(解決しなければならない課題)をセリング(売り込む手段)ことです。

つまり、ミドル層がトップ層に対して、自分が重要だと捉えたイシューを理解してもらい、実行するため許可やリソース(ヒトモノカネ)の獲得を目指すアクティビティのことです。提案やプレゼンテーション、根回し、協力者の探索などがそれに当たります。

・イシューセリングの効果

イシューセリングの効果として挙げられるものは当然実行の許可をもらえるということはもちろんですが、実行していく上でとても大きな効果があります。主な効果を3つ紹介します。

・現場のイシューが事業や会社全体の戦略イシューになる。

これまで一つの現場が抱えていたイシューに対して、上層部の理解や協力を得られるようになれば、内外への発信力が強化されます。上層部の一人から社内や社外へのコミットする場面において、「これをやっていく!」という発言をしてもらえれば、これはもう一つの部門のイシューではなく事業や会社全体のイシューに様変わりです。こうなれば、関わっているメンバーのモチベーションも高まるでしょう。

・周囲の関心を引き協力者を募ることができる。

戦略イシューだと周囲が認識すれば、自然と関心が集まっていきます。そうすると他部門からの自発的協力者が現れてくることもあります。協力してくれる人たちから、さらに良い情報を手に入れることができたり、リソースを提供してもらうことができると、さらに活動が活発化していきます。

・抵抗勢力への抑止力となる。

新しいことや変革を実行する際には、必ず抵抗勢力となる人たちがいます。既存のプロセスで既得権益を持っている人たちが主にそうです。そういった人たちを抑え込むのには、上層部の許可をもらっているという、いわゆる「お墨付き」がとても有効です。「役員の許可をもらっています。」みたいなことを言いすぎると印象が悪くなってしまうデメリットもあるので、ここぞというときに使うのをお勧めします。

・どうやってイシューセリングするか?

それでは、どうやってイシューセリングを成功させていけば良いのでしょう。DIAMOND ハーバード・ビジネスレビュー論文で、スーザン J.アシュフォードとジェームズ・デタートによって書かれた「イシューセリング:中間管理職の必須スキル あなたの上司を動かす7つの戦術」では、イシューセリングを成功させた中間管理職を調査し多用している7つの戦術があることを明らかにしています。ここではその中の一部を紹介します。

・売り込み方を工夫する

戦術1として、売り込み方を工夫するとということが書かれています。取り上げられている事例のミドルマネジャーは、

「自分のアイデアがCEOの収益予測にの達成にいかに貢献するかを示さなければならないと思った」

戦術1 売り込み方を工夫する より

トップの目標達成と自部門が抱えているイシューの解決が整合性を訴えることで、上層部の理解と協力を得ることができるということです。これは非常に効果的なアプローチだと思います。これをするためには、日頃から自部門の役割が経営目標とどのように結びついているかを考えていることが前提になります。

・感情をマネジメントする

戦術3として、感情をマネジメントするというものがあります。イシューセリングをする上で、強烈な感情が行動の源にとなることは間違いありません。ただし、本書では、

意思決定者は意見をあげてくる部下にネガティブな感情があることを察知すると、その部下を「変化を起こす人」ではなく「愚痴をいう人」と見なす傾向があるのだ。

戦術3 感情をマネジメントする より

という見解が書かれています。逆の立場で考えてみればわかることですが、確かにその通りです。ポジティブな感情で提案された方が意見を受け止めやすいのは明らかですね。

また、自分だけでなく、意思決定者の感情のマネジメントも重要だとということが書かれています。
特に、既存のプロセスの改良や変革イシューのセリングに関しては、今までのやり方を否定しないことがとても重要なポイントです。なぜならば、既存のシステムを構築し成果を出してきた人がおそらく上層部の誰かだからです。それを否定しまってはその人の顔に泥を塗ることと同じになってしまいます。
その時点ではその選択が最適あったこと、現時点では新たな情報が入ってきたこと、ビジネスの環境や前提条件が変わってきていることを丁寧に説明し、意思決定者のポジティブな感情を引き出せるようにすることが望ましいです。

・適切なタイミングをとらえる

戦術4として、適切なタイミングをとらえるとあります。

イシューセリングの成功例を語った人はこの点にはるかに敏感だった。中でも大きな成功を収めた人は、自身のイシューとつながりのある大きなトピックやトレンドに関心を向ける人が増え始めたタイミングを察知し、その「波に乗る」形で自分のイシューを提示したと説明した。

戦術4適切なタイミングをとらえる より

どんなに良いアイデアだったとしても、時期を見極められないと採用されることはありません。外部環境・内部環境の変化を観察し続け、上層部の関心事が変わったタイミングでイシューセリングすることが重要だということです。思いついたアイデアを温めておくのは我慢の必要なことですが、良いアイデアだと思うのであれば尚のことタイミングには気をつけたいですね。

・まとめ

企業内で新しいことや、変革をおこなっていく上で「イシューセリング」がとても重要だと、私自身も改めて思いました。今、BPR・DX関わる仕事をしていますが、思い返すとイシューセリングが成功しこの仕事ができたのだと、しみじみと感じています。

新しいことを始めたい、上層部に理解してもらいたい、そう感じている方は「イシューセリング」をご活用してみてはいかがでしょうか。

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