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【今月の映画(2021年12月)】ブラウンバニー

読書以外の僕の趣味の記事です。日曜更新。
毎月オススメの○○をご紹介していきます。

第1日曜 映画
第3日曜 ウイスキー

あらすじ

バイクレースで各地を巡業するレーサーのバド・クレイ。ニューハンプシャーでのレースを終えた彼は、黒いバンに自分のマシンを積み、次のレース開催地であるカリフォルニアへ向かう。その道中である日、かつての恋人デイジーの母が住む家に立ち寄るバド。そこでは、デイジーとの幸せな思い出の象徴だった茶色い子ウサギが今も変わらぬ姿で飼われていた。動揺しながらも再びアメリカ横断の旅に出たバドは、それぞれ花の名を持つ女と出会っては立ち去ることを繰り返す。やがて、デイジーと一緒に暮らしていたロスの小さな家に辿り着くのだが…。 


さて、映画がそれなりに好きな人は「バッファロー"66」という作品をご存知の方も多いだろう。
「バッファロー"66」は、孤独な男が拉致した女に愛してもらえるという男にとって夢のような物語で、多くの男性映画ファンを魅了して作品だ(偏見)。僕も「バッファロー"66」は大好きである。
で、この「ブラウンバニー」は「バッファロー"66」の監督であるヴィンセント・ギャロの第二作目にあたる作品なのである。

この「ブラウンバニー」は「バッファロー"66」とは違った方向で話題になった作品で、前作と同じく愛を知らない孤独な男が主人公の話なのだが、カンヌ映画祭で大論争を巻き起こし、ある批評家には「史上最悪の映画」とまで酷評された作品なのである。

そして、論争の的になったのが終盤のラブシーン。
役者同士が実際に行為に及んでいる、のである。
見方を変えれば、監督であるギャロが主演なので、カメラの前で女優に監督相手に行為をさせて、自分自身はそれで気持ちよくなっちゃってる、と言う事も出来る。
監督権限で女優に何させとんじゃい!と観る人が怒っても仕方がない。



さて、ここまではネットを調べればすぐわかる話である。

ここからは僕個人の感想を書くのだが、結論から言えば僕はこの作品はかなり好きである。
その理由はこの映画の存在自体に価値があるように思えるからだ。

"作品"や"芸術"については、よくこんな意見の対立を目にする。
「作品は、自分の表現したいものを作れば良い」という、"作品"というものは自分本位なものであると考える人々と、
「作品は誰かの目に触れて初めて作品となる」という、"作品"は他者に認められる事で存在すると考える人々との対立だ。
この問題は非常に複雑で明確な答えを出す事は難しい話である。

僕自身どちらが正しいとも考えていないが、「ブラウンバニー」は圧倒的に前者に該当する作品なのである。あまりにも振り切り過ぎたナルシスト映画である。
とにかく自分が撮りたいと思ったものを撮った。観る人の事なんて考えてない(少なくとも普通の感覚を持った人なら、人に見せる事を意識してこんな作品を作らないと思う)。
そんなギャロの自分本位さが全面に出ているような気がして、一周回って僕は好きなのである。

ただ、映画として面白いか、と聞かれれば「退屈な映画」だと答える。面白い映画ではない。

ただ、こんなナルシズムの塊のような映画は存在する事に価値があると思う。(ギャロ本人にそんな気があるのかは知らないが)この映画の存在自体が芸術、作品、表現、に対して一つの問題提起となっていると思うのだ。

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