見出し画像

【齋藤孝のざっくり!日本史】著者は日本人を信じている

オススメ度(最大☆5つ)

☆☆

僕は高校生の頃、理系に進んだおかけで日本史や世界史を一切やらなかった。もともと、年号を覚えたりする、いわゆる"暗記モノ"の科目が非常に苦手だったことや、一時ニュースにもなった"履修漏れ"世代であったこともあり、日本史・世界史の知識は中学生以下である自信がある。

それでも、大人になった時に歴史の話がわからないことで、少し焦りを感じ、歴史の勉強しなきゃなぁと思っていた時に書店でこの本を見かけた。

「ざっくり」というタイトルは、ほぼ初学者に近い僕にとっては非常に魅力的だ。
歴史を学ぶきっかけとして、この本を手に取ったのだった。

〜ネタになる部分だけをつまみ出す〜

本書は、教科書のように時系列に日本史の出来事を並べるのではなく、著者が面白いと思った点をまとめて書かれている。

かな文字というテーマ1つについても、中国から漢字が伝えられた時代から明治の文豪の時代まで横断して、著者の考えや面白さが書かれている。

著者はこの本の冒頭で「外国人に対して、ネタとして日本史を語れるようになるのが好ましい」と書いている。本当に「日本史って知ると面白いでしょう!?」と思いながら本書を書いているのがわかる。

それだけに、大まかな日本史の流れを知り一般的な日本史の教養を知りたい、という僕の欲求は満たす事はなかった。
あくまで、著者の考える日本史の文脈が書かれているものであり、読み物としては面白いが、知識を得るという点では物足りなかったのが正直な感想である。

〜真似して都合よく取り入れてきた日本人の歴史〜

著者は、日本は、漢字に始まり仏教や資本主義など、歴史の中で外国からの文化や仕組みを取り入れて、アレンジを加えてくる事を何度も何度も行い発展してきた、と語る。
いわば、外から来たものに対して「これすごいな!」と受け入れてしまい、自分たちの都合のいいように作り変えてきた歴史があるのだ。

島国ゆえに、こう言ったところを"ガラパゴス"なんて自虐する人も日本人の中にはいるが、筆者は日本人のそういうところを非常にポジティブな面として捉えている。

この考えは僕は非常に面白いと思った。日本人らしさ、と言われる文化はそもそも海外から来たもので、それを自分たち流に作り替えているのだ。なんという図々しい国民だろうか笑

〜歴史を知り、日本人を信じる〜

著者は、第二次世界大戦後の"占領"された時代についてまで、ポジティブに考えている。
"占領"されていた事が日本の高度経済成長のモチベーションになった、とまで言ってしまっている。

たしかに、戦後の日本について自虐的・悲観的な考えをよく聞くし、自己否定する歴史観が世の中には多く広がっているように思う。歴史の知識が無い僕には、少なくとも歴史を語る人の話にはネガティブさを感じていた。

しかし、著者は日本の歴史についてかなりポジティブだ。そして、本当に日本人のことが好きで信じている事がこの本からわかる。

著者は、歴史に対する「自己否定癖」が日本人の良いところを失ってしまっている、と言う。戦後の教育改革で、日本人のパーソナリティが奪われてしまった、というのだ。

著者は日本人の、外からの刺激に興味を持ち、自分たちの敵わない文化や技術に対して悔しがるどころか「いいな、これ」と言ってしまうのん気さ、そして、自分たちの良いようにアレンジしてしまう図々しさとポジティブさこそが、日本人らしさである、と語っている。

歴史の暗い部分から学ぶ事もたくさんあるが、「いや、日本人って面白いんだよ」とのん気な気持ちで楽観的に学ぶ事も良いものだ。
外国と競い合いと肩を並べる事ばかり考えるのではなく、「自分たちは自分たちらしく」と違う視点で世の中を見るきっかけになるかもしれない1冊だった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?