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Kayak & SUP 1日で小豆島1周 その5

岬を回り込むと、これまでの穏やかな海から一転。一面白波の世界となった。

しかし次の目標地点である岬の先端部まで、大きな湾となっているため、風を避けて進むようなことはできず、ここを突っ切っていくしかない。

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(時間に余裕があれば、岸沿いを北上し、湾の奥側を進むルートもとれたのですが、今回は1日で島1周という時間の制限があったため、湾口を突っ切るルートをとらざるを得なかったのです)

強い向い風のため、力いっぱい漕いでいるにもかかわらずカヤックは遅々として進まない。おまけに波に翻弄され、進路を保つのも難しい。

「ウォオー!」

思わず叫ぶ。

何も考えず、とにかく遠くに見えている岬の先端に向かって漕ぎ続けるしかない。

まぁ、カヤックは波の中でも、漕ぎ続けることでうまくバランスがとれ、ひっくり返るようなことはまずないのだが、SUPの大地は、強い波をくらって何度かボードから落とされ、おまけにその波の中で再乗艇しなければならず、かなり手こずっていた。

というのも、大地が今回使っているSUPは幅が細めのレース用のもの。ただでさえバランスをとるのが難しいSUPなのに、荒れた海ではさぞかし大変だろう。(と思う。僕は乗ったことないので・・・)

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が、「あいつは大丈夫。自分でなんとかする」と信じ、それを横目にただ淡々と漕ぎ続ける。

(本当は、人のことを構っている余裕が僕にはなかっただけなのですが・・・)

僕らが今漕いでいる小豆島の南側には三都半島と田ノ浦半島という2つの半島が南へ伸びていて、その湾口(半島と半島の間)は約8kmある。

(小豆島が横を向いた牛の形だとすれば、ちょうど前足と後ろ足の部分)

その湾口のちょうど真ん中あたりに、いい具合に福部島という小さな島がある。

風を遮るもののない湾口において、その島の周りだけが唯一の避難場所。まずはなんとかそこまでたどり着けば、休憩することができる。

目の前にポツンと浮かぶオアシスを目指し、僕らは遮二無二漕ぎつづけた。

しかし、体は正直だ。朝から漕ぎ続け疲れているのに加え、この強風の中でのほぼ全力漕ぎ。背中がギシギシきしみ始め、悲鳴を上げ始めた。

2人の顔もかなり険しい(と思った。後ろから必死についていっている僕には見えないので後ろ姿からの想像ですが・・・)、苦しいのは自分だけではないと言い聞かせ、ただただ機械のように漕ぎ続ける。

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そして、もー限界、という一歩手前で、なんとか福部島の小さな浜辺にたどりつくことができ、やっと一息つくことができた。

時刻は午後4時。太陽が傾き始め一気に気温が下がり始める。

夜に向け、防寒着を装着し、ヘッドランプとフラッシュライトを準備し、再び漕ぎだす。

風は相変わらず吹いてはいたが、目標地点である岬に近づけば近づくほど、陸地が風を遮ることで風が弱まり、カヤックは少しづつスピードを取り戻して岬の先端に近づいて行った。

午後5時。三都半島先端到着。

小豆島1周ゴールまでここから残り約7km。いよいよゴールが見えてきた。あとは半島を北上しゴールへとまっしぐら!風も向かい風から横風になり、これまでよりも幾分楽になる。

と思っていたのだが、岬を回り込むと風は西から北に変わっていた・・・。

つまり、風は再び向かい風、相変わらず風と波に翻弄され続けることに。さらに日が暮れ、辺りはだんだん暗くなり、視界も悪くなってきた。(この時期、日が沈むと一気に暗くなります)

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暗闇の波の中、舟を漕ぐことは難しい。

感覚を研ぎ澄まして漕いでいく。が、やはり波のため、水をうまくキャッチできない。

大地も暗闇の海に何度か落ち、とうとう立って漕ぐのをやめ、膝立ちで漕ぎ始めた。(膝立ちの方がバランスを取りやすい)

それにしても向かい風、波、暗闇、気温の低下というのは、体力と精神力をどんどん奪っていく。

穏やかな海であれば1時間半もあればたどり着けるであろうゴールが1時間漕いでも一向に近づいてこない。

僕らは本当にゴールまでたどり着けるんだろうか。

半島の半分くらいのところにあるでっぱり部分を回り込み、集落の小さな明かりが遠くに見え始めたときには正直ちょっとホッとした。

しかし、見え始めた集落の明かりが、漕いでも漕いでも一向に近づかない。

「タヌキに化かされとんちゃうん」

佐倉さんがつぶやく。

その時、ゴールだと思われる地点に2つの明かりが灯った。

「あそかも」

今回、陸上サポートをしてくれていた大地のいとこのゆうまくんがヘッドランプを海に向けて点灯してくれたのだった。

萎え始めていた僕らの気力が再び燃え上がる。

が、疲れた体はどうすることもできない。

そのまま牛のような歩みで僕らは漕ぎ進んだ。

それでも、その小さな明かりは少しずつ大きくなり、だんだんと光の強さを増していき、とうとう浜辺からの声が聞こえてき始めた。

「おーい、とーたん。かえってこーい」

もしや、みゆきちゃんと花太がいる?

さらに近づいていくと、浜辺にみゆきちゃんと花太の影がはっきりと見えた。

「がんばれー!」

他にも何人か応援の人たちが手を振っている。

ザザッ。

大地。佐倉さん。僕。

3人横並びになって浜辺に上陸した。

午後7時30分ゴール。14時間で小豆島1周。

カヤックの方にみゆきちゃんと花太が近づいてきた。

フラフラで、よろけて転ばないように、慎重にカヤックを降りる。嬉しくって2人に抱きつきたかったけど、びしょ濡れだったので、ハイタッチで喜びを伝える。

そして一緒に1周した大地と佐倉さんと固い握手を交わす。

11月の風の中、小豆島を1日で1周。やればできるんだ。やったー!

でも、1日で1周はもういいや。次回はのんびりゆっくりキャンプでもしながら1周しよう。

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一緒に漕いでくれた大地、佐倉さん。素晴らしい写真と映像を撮ってくれた坪佐さん。サポートしてくれたみなさん。迎えに来てくれたみゆきちゃん、花太。ゴールを迎えてくれたみなさん。そして温かいタコ焼きを差し入れてくれたおねぇさん。みんなのおかげで無事に1周できました。ありがとう!

                          写真提供 島空撮

小豆島1周 その1
小豆島1周 その2
小豆島1周 その3
小豆島1周 その4
小豆島1周 その5(最終回)

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