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4-3 筑波大学の意味とは

前回は

筑波大学の設立と「新構想大学」

 筑波大学以降に設置された大学は、「新構想大学」と呼ばれています。

 特徴として、学長への権限の集中、教授会の権限の縮小、学外者の大学運営への関与が挙げられます。特に、今までの大学が教授会を中心に運営される、ボトムアップ型の組織であったのに対して、学長や副学長などによって構成された評議会に、権限を集中して運営するトップダウン型の組織に変えた事が革新的とされました。また、学長の選出も、単純に教員の投票だけで決まるのではなく、教員の投票で挙げられた候補から、評議会が選出する形態を取るという形に変わりました。

 ここまで述べると分かる人もいるかもしれませんが、今の国立大学の運営方式を、何十年も前に実践したのが筑波大学だったのです。正に「新構想大学」の名にふさわしいモデル大学でした。

 実験的な意味合いが強かった為に、学長の専横が度々目立つという問題点はありましたが、着々と実績を重ね、その後に設置された国立大学でも、この制度が取り入れられていきました。

国立大学法人化がもたらしたもの

 国立大学の法人化が行われた時に、国立大学全体に「新構想大学」の制度が応用され、評議会の権限強化や学外者の大学運営への関与が取り入れられました。そして、近年の改正では、学長の選考を学外者も含めた選考会議で行う事に改められ、教員の投票は意向調査という扱いになり、ここに筑波大学の開学から始まったトップダウン型の大学運営の方式が全ての国立大学で完成形に向かう事になります。

 東京教育大学の争議を発端として大学運営方式への問題提起がなされ、筑波大学では新たな運営方式が採用され、これが大学運営のモデルとして育まれました。

 そして、ある意味外圧的な国立大学法人化の過程で、このモデルが他の大学に持ち込まれました。その結果、理想的なトップダウン型の運営形態に国立大学の全てが倣うという形で、現在の新しい大学の運営形態が完成したのです。

 国立大学法人化により全ての国立大学が「新構想大学」化する事になり、ここで、「新構想大学」は国立大学そのものとほぼ同義となったのです。

東京教育大学の閉学の意味するところ

 こうして、全ての国立大学が「新構想大学」化しましたが、東京教育大学の閉学の時点で、学部自治に根差した古の教授会自治は、終焉を迎えることを予定付けられていたのかもしれません。

 トップダウン型の運営形態は、現代の急速な時代変化に対応する為に必要な事ではありますが、あくまでトップが有能で賢い事が前提にあります。今の国立大学は本当にその精神の上に運営されているでしょうか?

 最近では旭川医科大学の学長の専横的な行為が問題となりました。

東京大学でも学長選考で問題が起きています。

 以上は一例で、スクラップだけで何ページも埋まるほどに各地で国立大学の運営に問題が起きています。

 私自身は国立大学法人法の改正に肯定的な意見を持っていましたが、すみません、間違っていました。これほどクレバーでない人々が運営に関与する事になるとは思っていませんでした。

 過去に国立大学の中にいた者としては恥ずかしい限りです。東京教育大学の閉学と筑波大学の開学の段階に立ち返って、大学運営について考え直す必要がありそうです。

 筑波大学の存立の意味を考えることは、国立大学で今起きている事を考える事と同義であると思います。そして、大学運営の本質に立ち返って、本来の有能で賢い人によって大学が理想的に運営されることを願っています。



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