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給与を支払うことは従業員のモチベーションを下げることに繋がる?
「アンダーマイニング効果」という心理学の用語があります。
これは、何かの行動や課題に対して外部からの動機づけ(外発的動機づけ)が伴うと、内発的な動機づけが損なわれてしまうことを指しています。
例を示したものとして”行動経済学まんが ヘンテコノミクス”という漫画で落書きをしている少年たちに小遣いをあげつづけ、ある日突然小遣いを渡さなくなると外発的動機づけが失われ落書きをしなくなる、という漫画が描かれていました。
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子供に勉強を頑張ってほしいと思って「100点とったらゲーム買ってあげる!」といった物で釣る形をとっていると、いずれその子供は何か物がかかってないと頑張れなくなる、という話もよく聞きますね。
過去に在籍した会社でこのアンダーマイニング効果を引き合いに「人間は報酬を与えられると自発的なモチベーションが下がる!」と、暗に給与やボーナスを引き上げない理由として社長が発言していたことがありました。
なお、冒頭で紹介した記事でもアンダーマイニング効果を生じさせないための対策として”物質的な報酬ではなく、言語的な報酬を与える”としています。
では極端な例として、給与やボーナスを極限まで低くすると、働いている人間の内的な動機やモチベーションは上がるのでしょうか?
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誤解を避けたいので先に結論を書いておきますが、答えはNOです。
給与を支払うことは、モチベーションを低下させることと繋がりません。
一部はそういう実験もあるが…?
人間は課題や作業に対し適切な報酬が与えられない時、あえて課題・作業自体に対して価値を見出そうとしたり自らモチベーションを起こすことがあります。
これは認知的不協和と言われ、行動と認知(報酬の低さ)のギャップによる不快感や矛盾を解消しようとする心理的な働きです。
では、適切な報酬を与えずにずっと雇い続ければ常に高いモチベーションで社員が働くんだ!というと、そうはなりません。
認知的不協和は状況によりますが長期的に続かない場合があります。
もちろん長期的に続かせるように働きかけることもできますが、それは一般的に”マインドコントロール”や”やりがい搾取”と呼ばれ、昨今ではブラック企業が好んで使う手法となっています。
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さらに、この様な手法で社員を働かせた場合、何らかの理由で一度離れた際に、絶対にその人材は戻ってきません。
それどころか周囲に「こんな風に使い潰された」「あの会社はダメだ」とネガティブプロモーションをされてしまいます。
そのため適切な報酬を与えずにモチベーションを上げる方法は、不健全かつ不適切で相応のリスクが伴うということになります。
衡平理論や自己決定論でも解釈ができる
労働と報酬、という観点であれば衡平理論というものがあります。
衡平理論は、集団の中で労働と賃金のバランスが釣り合う・釣り合わない場合のワークモチベーションの変化について述べている理論です。
この際、労働に対して報酬が少ない場合は、意図的に労働に手を抜いて(サボって)報酬とのバランスを取ろうとする心理が働きます。
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自己決定論では自律性の高さにより外発的動機づけがどのくらい影響するかが示されています。
この場合、自律性が低い場合(課題や作業をやらされている場合)は外発的動機づけが低くなるとモチベーションが損なわれる影響がより大きいものとなります。
ただし、自律性が非常に高い場合、例えば「課題・作業をすることで自分の欲求を満たすことができる(“統合”の段階)」や「課題・作業をすることが当たり前で楽しんでいる(“内発的動機づけ”が完成している段階)」の場合は、外発的動機づけにモチベーションは影響されない(極めてされにくい)ものとなります。
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この2つの理論から考えても、単純に報酬(給与やボーナス)を与えること = 内発的動機づけを損なうことには繋がらない、ということが言えます。
どう捉えるといいのか?
ここからは専門家ではないので個人の所感ではあるのですが、
外的動機づけ(報酬)"だけ"に頼ってモチベーションを形成したり維持することはあまりよくない
(もちろん"だから報酬は低ければいい"という話ではない)報酬は労働の結果に対して適切なバランスとなる様に設定する
内発的動機づけは、課題や作業が自身の目指す目標や理想(自己実現)にどう繋がるかを結びつける形で育む
ということなのかな〜と思います。
もちろん人それぞれに矜持のあり方が違うので、お金でのモチベーションアップが一番良い!という人も居れば、この仕事を極めていくこと自体が目標だからもっと仕事くれ!という人も居ると思います。
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あくまで一つの考え方ではあるのですが、安易に「報酬を下げればモチベーションが上がる!」といった誤った方法に飛びつかないことが、大切なことなのかな?と思います。
人は皆、かならずしも完璧なマネジメントができるわけではないので、おごらず・サボらず・人や状況に真摯に向き合っていくことが大切ですね。
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