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ITインフラは業務環境を整え売上を上げるための「投資」である

このテキストは、2020年7月に発売の書籍『売上が上がるバックオフィス最適化マップ』(クロスメディア・パブリッシング)の「第1章」をnote用に編集したものです。

本書は、読んで字の如く、バックオフィスや、その他企業内の業務をITによって最適化する手法をお伝えするものです。近年、ITによるバックオフィス最適化を考える企業は増えていますが、ITサービスの導入などに苦戦するケースも同様に多いです。そのような悩みを持つ経営者やIT活用を推進されている方々に、IT活用・導入に必要な考え方や方法論をお伝えします

この記事の前提となる話(本では「はじめに」にあたる話)をまだ読まれていない方は、まずはこちらをご参照下さい。

このテキストでは、「なぜ多くの企業でIT活用が進んでいないのか」という点について、さまざまな観点から解説していきます。

まず、みなさんにぜひ認識していただきたいのは、バックオフィス最適化のために発生する、社内インフラの整備やITサービス等の導入にかかる費用は、売上や利益を上げるための「投資」であるということです。

導入・運用につまずいているだけで、IT活用の重要性を認識している方には言うまでもない話だと思いますが、多くの経営者は、IT導入で新たに発生する出費を「コスト」としか考えていません。大半の企業では、IT活用によって改善されるのは「現場の業務」であって、「経営者の業務」ではありません。

たとえば新たに経費精算システムを導入して、現場の社員の経費精算の手間、経理処理の手間が大幅に減ったとしても、経営者本人の経費精算が秘書や総務任せなら、その恩恵を理解できない可能性が高いのです。

さらに、経営者は財務諸表を見て、ITサービス導入にかかった費用の増加は認識できます。その結果として、人件費等が減ったり、売上が上がっていたりする可能性もあるのですが、バックオフィス最適化がそれらの原因と考えられる知識・発想がない方には、単なるコスト増に映ってしまいます。

このように、多くの経営者は「直接的なコスト」は見えていても、現場で発生している「間接的なコスト」は見えていません。そんな方々の認識を変えるには、間接的なコストを可視化させ、それがITによってどれだけ解消できるのかを提示することが大切です。

経費精算を例にとると、手作業でエクセルに入力し、それを印刷して領収書と一緒に経理に提出する。経理はそれを目視で手入力する――といった作業に1カ月あたり1人30分かかっていたとしましょう。40人の会社で経費精算システムを導入して、その作業を10分でできるようになったとしたら、全社で月に800分、約13時間の節約になります。正社員の時給を3000円とすると、時給換算で約4万円。経費精算システムは1人あたり月500円程度で利用できるので、導入費用が2万円ならすでに得をしている格好です。

さらに、その時間が減ることによって、残業代などの人件費が減りますし、いちいち紙に印刷する機会が減るので消耗品費も減ります。残業がそもそもない会社なら、その浮いた時間で新しい取り組みを始められるので、売上アップが期待できるわけです。

ポイントは、数字を盛り込んで説明する ことです。このような見えにくい間接コストを可視化し、それがどう変わるのか――という事例や試算を見せてください。優秀な経営者ならば、たちどころにITシステム導入費がコストではなく投資だと実感するはずです。

また、このような間接コストの負担が現場にあることを理解せずに、働き方改革を受けて「早く帰って」「残業代はこれ以上出せない」などと言うだけではどうにもなりません。笛吹けど踊らず、社員のみなさんのモチベーションが下がるだけです。

見方を変えれば、多くの日本企業には、最新のIT技術でバックオフィスを最適化すれば、大幅に削減できるムダがたくさん残っているということです。

かつてその作業は、ムダではなく、必要な手続きを最も効率よく進める手順であったのでしょう。しかし、時代と技術の変化は、それらの〝作業〟を〝ムダな作業〟に追いやってしまいます。これは、経費精算等に限ったミクロな話ではありません。「はじめに」で触れたように、この変化に気づかずに間接コストを支払い続けている(間接コストに対する人件費こそ、最もムダな「コスト」です)企業は、マクロな視点で見ても「いずれ競争力を失い、苦しい状況へ追い込まれていく」に違いありません。

バックオフィス最適化のための費用は、コストではなく投資である――。
この認識をもとに、本書を読み進めていただければ幸いです。



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