スムージーに対する圧倒的偏狭な愛

トースト1枚、シリアルちょっとが僕の朝食だった。

朝はなるべく時間をかけたくないから。

朝の時間は仕事に捧げたい、そう考える僕は29歳だった。

母から届いたミキサー

暖かい場所にいると全身がピリピリする、不思議な症状が出たのは高校生の頃。たぶん心理的なストレスが原因の蕁麻疹かなにかで、それ以来、加工食品の成分表示が気になった

でも、もともとストイックな性格じゃない。ざっと添加物を見て、特に気にならなければ食べた。今でもカップラーメンをたまに食べる。

そんな僕は30歳を目前にして、からだのことが気になっていた。

何の気なしに母に不安を話したのだろう。忘れた頃に、母からミキサーが届いた。野菜と果物は信頼できる。スムージーでも作って飲んでみれば、とのこと。

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スーパーでバナナと小松菜とヨーグルトを買った。朝起きて、それらを一口大にカットする。ミキサーにかけて飲んでみる。

・・・おいしい。

しかし面倒だ。がんばってみるものの、忘れる日が何度か続く。バナナは黒ずみ、小松菜は傷んでしまった。

これがAunaの前身、NICE n EASYをつくったきっかけだ。

NICE n EASYはクラウドファンディングで製品化して、Aunaになった。

次の夏でちょうど3年、スムージーを作り続けている。

からだに沁み渡るスムージー

最初は飲む時に喜びを感じたまでだった。

トロッとしたカラフルな液体が、喉をゆっくりと通過していく。一瞬の余白を感じた刹那、からだに沁み渡っていく。

不思議なことに、いつしか作る過程にも喜びを感じるようになった。

ミキサーに材料を入れる時も、スイッチを押す時も、グラスに注ぐ時も、それぞれに嬉しい感情があるのだ。

回転する小さな刃がシュイィイィィーーーーーーンという音ともに、さっきまで原形をとどめていたバナナを巻き込み、Aunaやヨーグルトと混ざり合う。

Aunaの色が回転する渦と共に全体に広がり、濃淡が生まれたと思ったら、次第に均一に溶け合っていく。

スムージーに対する圧倒的偏狭な愛

もし原体験を一つ挙げるなら、小さい頃、危ないからとミキサーを触らせてもらえなかったことを思い出す。

僕はミキサーでいろんなものを混ぜてみたかった。スイッチを独占する母を、うらやましいと思っていた。

そして時は経ち、母は「触らないで」と言ったミキサーを僕に贈ってきた。愛の形は時間の経過と共に変化する。

「朝の時間は仕事に捧げたい」と考えていた僕は32歳になり、「なるべく仕事よりも自分を大事にしたい」と思っている。

ミキサーでスムージーを作り、そして飲む喜び。

これを偏狭な愛と呼ばず、何というだろう。

スムージーに対する圧倒的偏狭な愛。

さて、共感してくれる人はいるのだろうか。

P.S Aunaスムージーの作り方はこちら。この体験は独り占めできない。


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