ツールドフランス2024 第4ステージ(Pinerolo - Valloire) 考察
ツール・ド・フランス第4ステージはイタリアからフランスへ。
今大会2回目の山岳ステージは距離が139.6kmと短いものの、獲得標高が約3600mあり最後に超級のガリビエ峠を越えてValloireの街に下ってフィニッシュする厳しいコース。
今回さすが!と思ったのは、1つ目のスプリントポイントがスタートからすぐの18.9km地点に設定されていたこと。スタートしてから1つ目のKOMまでプロトンの動きが活発になるので、ナイスなところに設定されているなと思って見ていました。またこのスプリントポイントはKOMがスタートしてから設定されていたので、「そういうのもありなのか!」と新鮮な驚きもありました。
案の定、プロトンはスプリントポイントに向けて"そこですでに遅れる選手が出るほど"活性化していきました。その後のカウンターアタックで2分31秒差の選手が2名入る17名の逃げグループができたことを考えると、総合勢のチェックは当然入っていたとは思いますが、注意するチームが入ってなければよいくらいで、そこまで選別しきれなかったのではと想像します。
そのため逃げグループとプロトンとのタイム差は2分前後をキープで進みましたが、UAEはここからすでに強かった。他のチームも牽引していたかもしれませんが、見た感じほとんどUAEの1〜2名で17名のグループとのタイム差をキープ。そしてガリビエ峠に入ってからは別次元のスピードで逃げグループとのタイム差を縮め、逃げが捕まってからも多くのアシストを残し、それぞれのペースメイクで多くの総合勢を脱落させ、最終的に3名を先頭に残す。
アシスト5名でそこまでの展開を作ることができるのは、まさに世界最高クラスのバジェットと選手から構成されたチーム。アシストがすでに他チームのエースより強いという話もあります。(これは過去にもありましたが、アシストで強い選手がそのチームを離れて他のチームでエースになると、それまでの力が出ない選手が多いのも謎な部分で、プロサイクリングあるあるですが。)
ステージ優勝したポガチャル選手はいつも通り上りでも下りでも安定した強さで、まさにボスの走り。(フィニッシュのポーズからも!)すでに存在自体がレジェンド化しているので、まだしばらくは「いかに彼を倒すか」がプロサイクリングの世界の目標として掲げられるのではないかと思います。昨日の走りを見る限り、あまりすぐに倒せる気がしませんが・・・。ともあれUAEは全てのおいてパーフェクトな日でした。
一方、同じ世界最高クラスのバジェットのあるVismaは早い段階からアシストを失ってしまい、ヴィンゲゴー選手は孤立してしまいました。しかし頂上までポガチャル選手から遅れることなく走れたことは、これまで彼の置かれていた状況を考えるとすでに神がかり的な走りだと思います。ポガチャル選手が山頂付近までアタックしなかったのもなんでかなと思って見ていましたが、ヴィンゲゴー選手の強さを知っているからなのかなと。
ポガチャル選手が余裕そうに見えたので、周りの総合系の選手が遅れた段階でタイム差をつけたいならもう少し早くアタックしたほうがよいのではと思いましたが、後のインタビューで(ブラフかもしれませんが)まだ本調子じゃないと語っていたのを聞いて、やはりギリギリまで警戒していたのかなと思いました。たった8秒差、されど8秒差。
ヴィンゲゴー選手については上りより下りのほうがきついように見えました。下りの序盤ではタイム差をキープしていましたが、下っていくにしたがってタイム差が開いていき、走りを見てもペダリングにあまり力が入ってないように感じました。以前のどこかの記事でケガの影響でタイムトライアルバイクの姿勢がきつい、というような話を見かけたので、下りの低い姿勢で走るのがキツく、あまりトルクがかけられてないのかなと思いました。本人もツールを走りながら調子を上げていくような発言をしていて、上りで8秒差だったのは自信になっていると思うので、この後はしばらく山岳ステージもないので、どれくらい戻してくるのかは気になるところです。
リーダージャージのEFのカラパス選手については、第3ステージでチーム一丸でスプリントに絡みマイヨジョーヌを獲得したのですが、自分の中では、チームもコントロールする必要が出てくるし、山岳ステージ前にそこまでしてマイヨジョーヌを取りに行く必要はあるのかと思っていましたが、ポガチャル選手やヴィンゲゴー選手とやり合うにはちょっと自信がなかったのかなと感じました。だからマイヨジョーヌを着れる時に着ておく、というやり方だったのかなと思います。
アシスト選手もヒーリー選手以外は逃げが吸収される前にほぼ遅れてしまっていたのでチームとしても負担が大きそうでした。でもEFとして初めてマイヨジョーヌを獲得して、ツールドフランスのリーダーチームとして山岳ステージを走ったことは、チームとっても大きなことで、選手たちも新しい境地を開いたのではと想像します。
またもう一人の総合争い、Soudal-Quickstepのエヴェネプール選手は今回が初ツールなので、まだ戦い慣れをしていないように感じました。ポガチャル選手とヴィンゲゴー選手は長くやり合っているのでアタックに関しても何か感じることがあるように見えますが、エヴェネプール選手は位置取りも少し後ろで、第2ステージに続いて第4ステージもポガチャル選手のアタックに出遅れているように見えました。
後は下りですね。明らかにコーナーが苦手で、上りで20秒くらい離したIneosのC.ロドリゲス選手たちのグループに抜かされてしまうこともありましたが、直線はおそらく誰よりも速い。第2ステージの追い上げを見ても別レベルのスピードだったので、今後のタイムトライアルが楽しみです。ポテンシャルはかなり高く、総合優勝を狙えるレベルだと思うので、ぜひツール期間中に下りコーナーを克服して総合争いを面白くして欲しいです。頑張れ、レムコ!
ログリッチ選手については、序盤で第2グループに入ってしまうなどちょっと体調が悪そうですが、Red Bull-BORAに移籍をして1回目のツールということもあり、チームカラーや戦術面でまだ馴染んでない部分もあるように感じます。ただ誰よりも爆発力があるので、今後ポガチャル選手、エヴェネプール選手、ヴィンゲゴー選手でやり合ってるところでドカンといってしまう可能性もあります。一度波に乗ったログリッチ選手を止めるのは大変なので、ぜひ波に乗ってもらいたいです。ただ同時に落車が多い選手でもあるので、そっちで爆発しないで欲しいです。
と、総合争いが本格的に始まったので、ほとんどが総合争いの選手たちの解説になってしまいました😅 次の総合争いは第7ステージの個人タイムトライアルになるので、それまでは再びスプリンターとアタッカーのレースを楽しみましょう。次のスプリントは誰が勝つの?カヴェンディッシュ選手の35勝は達成されるのか?
今後ますます熱く、寝不足必至のツール・ド・フランスになりそうです。
今回も読んでいただきありがとうございました!今後の記事の励みになりますので、記事を気に入ってくれた方は「スキ」や「記事をサポート」していただけると嬉しいです。他にもこのnoteに走りに関することやサイクリングに関することを書いているので、参考にして楽しんでいただけると幸いです。
それでは第5ステージの考察で!
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