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SF - Sumo Fiction

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狂気に満ちた相撲SFの世界(手動収集)
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2020年10月の記事一覧

ゴジラ対横綱

「観音崎。」

車に乗った横綱はそれだけ言った。ハンドルを握る付き人の大車輪は、たっぷりと10秒は黙って、聞き返さず「はい」とだけ言った。

疑問は無限に頭に浮かんだが、全ては無意味だと感じた。横綱が行くと言えば行く。横綱が相撲を取ると言えば取る。やれと言えばやる。それが付き人の役目だ。

車が発進する。車内には大車輪と横綱だけ。両者無言だ。

「ラジオ、いいすか。」

「ん。」

大車輪が沈黙に

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ケハヤ・トライバル

神武以来の最速昇進と謳われる新小結・双月。その立会を合わせる時、大関・大破壊は違和感を覚えた。

ブレる。まるで双月が二人居るように、カブって見える。

目をギュッと瞑って、また見るが、ブレる。泥酔したときのように双月が二人に見える。俺もとうとうヤキが回ったかと溜息を吐いた。

今場所はもうカド番なのだ。負ければ降格。膝の古傷を思えば何時まで相撲が取れるかもわからないというのに、横綱どころか大関の

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