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「上達させる」イメージトレーニングと「行動を起こさせる」イメージトレーニングの違い


思い込み ─── 。

すべての行動を制御させるものの正体は、「思い込み」なのか。

自分が思っているイメージとは、自分のこれまでの経験でしか思い描くことができない。

そして、自分が思うイメージと、他人が思うイメージが違うのは至極当然なこと。

なぜなら、だれもが、自分目線でイメージしてしまうからです。

次の2人の会話の事例をご覧ください。よくあるシーンではないだろうか?

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A君「B子ってあいかわらず、キレイ好きやね」

B子「べつに、そう見えるだけじゃない?(何、人のこと神経質だって言いたいわけ?)」

A君「(ウワ、何か機嫌悪そう…)そう…ですか…」

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さて、B子さんは、キレイ好きだと言われたことが、自分は「神経質な人」だといわれたと思ってしまった。

なので、その不満に思ったB子の態度はおだやかではない。

その反応をA君は、B子は今、機嫌が悪い時なんだと思って、キレイ好きなんて言わなきゃよかった、と思ってしまった。

あくまでA君は、いい意味でほめたつもりだったのです。

この2人の会話が疎通しないのは、A君の「キレイ好きですね」といえば喜んでもらえるというポシティブな思い込みと、B子の神経質な人だと思ってしまうネガティブな思い込み。

それぞれが、異なる主体的な思い込みをもっているためだと考えられます。

B子さんは、典型的な「思い込み」の激しいタイプ。
しかも、被害妄想が強く否定的な考え方をしてしまうのが特徴です。

一方、A君のこと、どう思いますか?

A君にしてみれば、「ほめ言葉」のつもりで言ってはいるのですが、考えようによっては、B子の気持ちも察しない「無神経な人」に思えたりしませんか?

しかし、それは神経質タイプのB子だからそう見えるだけで、他の人に「キレイ好きだ」といった場合、その事を嬉しく思う人もいるわけです。

なので、A君がやったとことは、別に悪いことをしたわけではないはずですが・・・。


行動にブレーキをかける「思い込み」


A君の発言が、いいか悪いかは、じつは問題ではなく、「キレイ好きですね」といえば、喜んでもらえるという “ 思い込み ” に問題がある。

A君に課題があるとすれば、「人によって発言を慎むことも覚えよう」ということでしょうか。

かなりハードルの高いスキルではあるが、A君にとって、「キレイ好きですね」と発言することで、非難する人もいるということに、気づけるようになれる事が理想なのかもしれません。

しかし、会話の様子を見ると、A君はもしかすると、人に「キレイ好き」という発言はするもんじゃない。

と、極端な「思い込み」をここで新たに生じさせてしまっているかもしれません。

「キレイ好きですね」というほめ言葉の思い込みが、言ってはならない禁句だと、真逆の極端な思い込みにシフトしてしまった。

これでは何の解決にもなっていません。
結局A君は、「思い込み」の呪縛から解き放たれたわけではないからです。

A君は、こんな自分自ら作った誤解の解釈を積み重ね、「豪放磊落(ごうほうらいらく):小さいことにこだわらないこと」だったかもしれない元々の性格が、制御という自分フィルターを透してしまうのです。

人が「行動できない」理由の一つに、誤解が生みだした “ 思い込み ” が要因になっていることはよくあること。

むしろ、行動にブレーキをかけているそのほとんどが、「自分勝手な思い込み」ともいえるかもしれない。

「こんな事をしたら嫌われるんじゃないか?」
「自分にできるわけがない」
「失敗したらどーしよー」
「恥をかくのはイヤだ」

このような強い思い込みをしてしまう人は、「こんなことはしてはいけない」という過去の経験が強く影響し、親や先生にいつも、「こんなことしちゃダメ!」と言われたことを素直に聞いてきた真面目な人が多い。

自分勝手なネガティブな思い込みは、やがて「小心翼々(しょうしんよくよく)=物事に対してビクビクすること」な性格になり、何もかも悪いように考えるようになってしまいます。

その典型的なタイプの人が、B子さん。
キレイ好きだといわれただけで、自分が神経質で小さいことを気にする気持ちの弱い自分を、勝手に思い込むようになる。

この、A君とB子の両者にある「思い込み」という曇りメガネを処方するにはどうすればいいのでしょうか?

そもそもですよ、A君とB子のそれぞれが、自分が思い込みによる誤解をしている事に気付かないといけません。

まずは自身がちょっとした勘違いをしていることに気付かない限り解決の糸口などつかみようがない。

そこでよく考えてみて下さい。

じつは、このA君とB子の2人が、自分勝手な思い込みをしていることに気づいている人物がいる。

それは誰だと思いますか?

そう、僕です。2人の会話エピソードを書いている僕自身は、2人が自分勝手な思い込みをしていることに気づいている。

「なんだそれ」ですか?
まぁ落ち着いて聞いてください。

僕は詭弁を無理やり押し付けようとか、フザけているわけじゃありません。事実を言ってるだけなんです。

じゃぁ、この文章を読んでくださっている「あなた」は、どうですか?

2人の思い込みによる勘違いに気づいているのではないだろうか? 

2人の会話を俯瞰して読んでいらっしゃるので、それぞれが自分勝手な思い込みをしているということを。

つまり、何が言いたいのかと申しますと、2人の思い込みによる誤解に気づけるのは、僕とあなたの「第三者」だからこそ、気づけることなのです。

自分自身に対する思い込みは、自分にかけた曇ってしまったメガネでみても、その曇りレンズのまま見てしまう。自分目線で自身の思い込みを気づくことは非常にむずかしいこと。

ですが、鳥の目となり2人を上空から見下し、神の視点となり天界から視ている僕と、読者さん(あなた)という「第三者目線」から俯瞰してみると、2人の思い込みに気づきやすいのです。

この「第三者目線」で俯瞰するというのが、重要なキーワードであることを頭の隅っこに置いていてください。

じゃぁ、先ほどのA君とB子の疎通しない会話の場に他の誰か(第三者になる人)を呼ぶ必要あるのか?

いえいえ、誰も呼ぶ必要はありません。
仮に、第三者になる人を探し呼び寄せたところで、「おまえらなぁ、思い込んでんだよぉ」なんて、言ってくれるはずがない。

むしろ、その仲介に入った第三者の人に対して、A君とB子は「思い込んでるのはおめーだろーがよ」と、思い込み返しをくらいそうです。

つまり、第三者目線で俯瞰するために、第三者になる人物を呼び寄せなくてもいい。

では、誰が第三者になるの?

「自分」です。思い込みをしている「自分」が第三者の立場となり自分の姿を俯瞰するのです。

正確には、脳の中で、自分自身を自ら「第三者目線」で俯瞰し、思い込みによる勘違いをしていることに気づく「イメージ」をすることが必要なのである。


2つのイメージトレーニング


さて、自分勝手な思い込みに気づくためには、脳の中で「イメージ」する事が大切だといいました。

そうなるとやはり、「イメージトレーニング」をしろと。
そう解釈するに至るわけです。

あなたが知るイメージトレーニングというものは、もしかすると、スポーツ競技や楽器演奏などの「イメトレ」だと思われたかもしれません。

実は、イメージトレーニングは2種類あります。


「スキルを上げるためのイメージトレーニング」

「やる気を起こすイメージトレーニング」


前者の「スキルを上げるためのイメージトレーニング」とは、僕たちの良く知っているスポーツ選手等がする「イメトレ」です。

ですが、後者の「やる気を起こすイメージトレーニング」に関しては、あまりピンとこないのではないだろうか?

この2つのイメージトレーニングは、いずれも上手くやる、成功させるためのものですが、そのトレーニングの仕方に、「大きな違い」があるのです。


イメージするだけで、スキルが上達する?!



それでは、分かりやすいように、

「スキルを上げるためのイメージトレーニング」で説明しましょう。

例えば、ピアノの演奏をイメージするとします。

もちろん指は動かしてはいけません。指を動かしてしまうと、脳内でのイメージトレーニングになりませんからね。

ハーバード大学パスカル・レオーネ博士率いる研究員の方たちが、「スキルを上げるためのイメトレ」の効果について、次のような興味深い研究結果を証明しています。

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ピアノを弾いたことがない人達を2つのグループに分けます。

第1グループは、実際に毎日2時間ピアノを弾いて練習をしてもらいます。

第2グループは、ピアノの前に座ってもらって、自分が引いているように毎日2時間の「イメージトレーニング」をしてもらいました。

両グループとも、期間は5日間。そして、5日後に、それぞれのグループの人たちが、実際にピアノがどのくらい上達したのか、指が刻むリズムと動かす順番の正確さを測定しました。

結果、当然のことながら、実際にピアノを引いて練習をした第1グループは、それ相当の効果がちゃんと出て、それなりに上達した。

一方で、イメージトレーニングのみの第2グループは、実際にピアノを弾いて練習をした第1グループの3日目と同じくらいに上達していたのです。

(なんと、ピアノの鍵盤を一切叩くこともなく、指を動かさずに頭の中でイメージしただけで、実際ピアノを弾いた人たちの3日分の成果を発揮したというのである。)

さらに、興味深いことに、この測定の後に、イメージトレーニングのみの第2グループに、現物のピアノを弾く練習を2時間させたところ、実際にピアノを5日間引いて練習した第1グループと同じくらいにピアノが弾けるようになったというのである。

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いかかでしょうか。
第1グループは5日間で10時間のピアノを弾く練習をしましたが、第1グループが実際にピアノを弾いたのは、わずか2時間のみということ。

つまり、頭の中での「イメージトレーニング」は、カラダを動かし、カラダで覚え込む練習に匹敵するほどの効果があるという事なのです。

なぜ、イメージトレーニングをするだけで、ピアノが弾けるようになったのかといいますと、脳内の「感覚運動野」という部位が活性するためだと、ドイツのアーヘン大学の研究結果を証明されています。

脳内でどうなっているとか、そんなことは理解する必要はありませんが、要は、イメージトレーニングがいかに、スキルを上達させることができるかを知っていただければいいんです。

オリンピックに出場する選手が、本番前に目をつむり心に手を当てる姿をしていますよね。

あれは、不安による緊張を沈め、心の安定を取り戻すためでもあるのですが、それよりも、自分が上手くやれているイメージ、成功のイメージを頭の中で再現しているのです。

それが、実際の本番で実現する可能性を高める効果があるからなのです。


やる気を起こすイメージトレーニング



脳内のイメージトレーニングは「スキル」をもあげる効果がある。

その事をわかっていただいたでしょうか。

それでは次に、「やる気を起こすイメージトレーニング」についてです。

やる気を起こすイメージトレーニングというのは、
いってみれば「行動を起こすイメージトレーニング」でもあります。

苦手意識が強くて行動できない、やる気が起きなくて行動に移せない、そして、思い込みによる勘違いで行動にブレーキをかけてしまうことなどを、打破するためのイメージトレーニングであると思ってください。

では、早速ですが、あなたにどれだけ「やる気を起こすイメージトレーニング」の能力があるかを試してみましょう。

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あなたは、いわゆるヤンキーと言われる連中が、「カツアゲ」しそうになっている現場を目撃してしまった。

5.6人のヤンキーたちは、一人の真面目そうな青年を囲い込み、あきらかに金出せと脅し、カツアゲようとしているのを見てしまった。

ふつうは、そのまま知らん顔をするか、警察を呼ぶかで対応するとは思いますが、ここはイメージトレーニングです。

あなたは、あまたの中で勇敢にもそのヤンキーたちに立ち向かいます。

そして言ってやりましょう。
「おまえら、痛い目にあいたくなければ今すぐ消えろ」と。

もしくは、「月に代わっておしおきよ!」でもいいし、
「俺、参上!」でもいいし、
「キミたち、少し頭を冷やそうか」とか、
なんでもいいんです。(笑)イメージですから。

さぁ、どうぞ。今すぐイメージしてみて下さい。

できましたか?
勇敢なあなたの行動イメージは鮮明に描くことができたでしょうか?

では質問です。

そのイメージに「自分」は登場していましたか?

イメージしたそのシーンに、「自分の姿」は映っていましたか?

もしかすると、イメージしたそのシーンに映し出されたのは、
どこか人目の付かない裏口のようなところでカツアゲしているヤンキーと、されそうになっている青年しか映っていなかったのではないでしょうか?

つまりそれは、「自分目線」でイメージしたということです。

自分自身が登場しない自分目線のイメージをしてしまった方は、残念ながら、「やる気を起こすイメージトレーニング」の能力が低いかもしれない。

「行動を起こすためのイメージトレーニング」になっていないということです。

やる気を起こす、行動を起こさせるためのイメージトレーニングに大切なのは、自分自身がそれをする姿を映し出す「第三者の目線」でイメージしなくてはいけないのです。

第三者の目線でイメージする場合と、自分目線でイメージする場合に比べて、「やってみよう」という行動を起こさせる気持になり、その差は約1.9倍ともいわれている。

なぜかというと、第三者目線のイメージは、

「なぜ、その行動をするのか?」というのがわかりやすいからなのです。

考えてみて下さい、自分目線のイメージは、言ってみれば現実を再現しているだけです。

実際にヤンキーに立ち向かう勇敢な自分を、現実と同じ目線でイメージしても、「どうやってしようか?」と、悩むだけで、そのやり方がみつからないと、結局は行動にうつせません。

なので、自分という主人公を第三者の目線でイメージし、「おまえ(自分)は、カツアゲをゆるせないとおもっているのではないか?」「なぜ、その行動をするのかを考えろ!」「ほら、勇気をもって勇敢に立ち向かえよ」とか、まるで映画やドラマを見ている視聴者の目線で見る事ができる。

どうです?正義の見方が登場するシーンが現れる時、その正義の味方がモジモジためらっていたとしたら、「なにやってんだよ」ってなりますよね。

それは、あなたが、第三者の目線でみているからです。他人に悩み相談された時、「考え考えすぎだよ」とか、「もっと前向きに考えようぜ」とか、たにんのこととなると、すごく正当でいいことがいえたりしますよね。

だが、自分の事となると、そうはいかない。

それは、刷り込まれた「思い込み」が自分の行動にブレーキをかけてしまっているためです。

自分目線でイメージすると、「どのようにするか」がわかりやすいが、第三者の目線で俯瞰してイメージすると、「なぜ、その行動をするのか」がわかりやすいのである。

つまり、やる気を起こすイメージトレーニングとは、
自分目線でどのようにやるう気を起こさせるかその手段をイメージするのではなく、自分自身を登場させ、第三者目線で俯瞰し、「なぜ、その行動をするのか?」を思い込みなしで本質的な行動に気づけるイメトレなのです。


2つのイメージトレーニングの大きな「違い」とは



もうおわかりですね。

「スキルを上げるためのイメージトレーニング」

「やる気を起こすイメージトレーニング」

この2つの大きな違いは、自分目線でイメージするか、第三者目線でイメージするかの違いなのです。

「スキルを上げるためのイメージトレーニング」
=自分目線(自分は登場しない)

「やる気を起こすイメージトレーニング」
=第三者目線(自分を登場させる)

では、スポーツ選手とか、演奏をする方などがするイメトレ、つまり「スキルを上げるためのイメージトレーニング」は、自分自身を登場させない自分目線が有効なのでしょうか?

それは、例えば、ピアノの演奏を上達させたいなら、ピアノの鍵盤(けんばん)にフォーカスしなくてはいけないからです。

ピアノを上手に弾いている第三者の目線でイメージしたところで、はたしてピアノが弾けるようになるでしょうか?

なるわけないですよね。そんなことができたら、ピアノの演奏をしている人をみている人達みんなが弾けちゃうことになります。

なので、「スキルを上げるためのイメージトレーニング」は、現実と同じ自分目線でイメージし、実際の行動を鮮明に再現させることが重要なのです。

上手にやれる成功のイメージを、現実と同じように再現できるイメージをすることがポイントです。

スキル系のスポーツや演奏なのは、積み重ねを重視します。その事は絶対です。

ですが、練習時間があまりとれない、圧倒的な練習量がとれない方は、
「スキルを上げるためのイメージトレーニング」を取り入れることで、実際に練習していない時間でもスキルを高めることができるといえる。

練習はイメージでもできる。イメージトレーニングは、場所も時間も選びません。是非とも、スキル系のトレーニングにプラスして、自分目線のイメージトレーニングすることをおすすめします。

そして、やる気を起こせない時は、上手にできる自分をイメージする第三者目線(自分を登場させる)のイメトレをすれば、再びやる気を起こさせるキッカケとなるかもしれません。

イメージトレーニングも、練習次第です。

どう考え、どうイメージをするかを身に付けることができれば、それはあなたの強い武器になる。

日常生活でも、仕事でも、これから生きていくうえで、失う事のないどこにでも通用する人生を乗りこえるための武器となるだろう。

自分の眼に映るそのほとんどが、他人やモノ。他人やモノばかりを見ていると、眼のレンズは次第に曇り、他人にすすめられたとんだ色眼鏡を掛けさせられているかもしれない。

眼に映るモノの記憶は、過去の記憶です。唯一未来を映し出すことができるのは、自分自身のイメージだけ。

それは、自由に描くことができ、しかも、自分自身を登場させ、望む自分をプロデュースしていいのだ。

あなたは、きっと「やれる」自分をイメージする。

そう、じつは「やれる」自分はそこにいた。自分で自分を見る事で気づくのです。

「やれる」自分をイメージできたのなら、それを実現させるのは、もはや時間の問題です。

今回も、ここまでお付き合いくださり、ありがとうございました。

ではまた、次回もお越しいただくことを(ものすごく)お待ちしております。


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