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ハチャメチャにキラキラにバチコーン - TWICE 『The Feels』

 めちゃくちゃ良かったです、TWICEの初全英語詞完全新作『The Feels』。全編英語ということでBLACKPINKやBTS『Dynamite』の存在が頭をよぎってしまう、でもTWICEの良さは明らかにそこにはない、どうかできる限り彼女たちらしい楽曲で英語詞デビューを…と懸念していましたが完全に杞憂だった。めっちゃくちゃTWICEらしいコンセプトと言えるのではなかろうか。バイブスは私の中で燦然と輝き続けるマスターピース、『LIKEY』に通ずるものがある。そう、TWICEの曲を聴いてこの感想を得たのは久しぶりだ。「うわ〜ようわからんけど可愛い子たちがハチャメチャにキラキラはしゃいでるな〜」と。

 K-POP楽曲のJapanese Ver.に綴られる日本語歌詞の可笑しさはたびたび話題になるしTWICEのそれにも当然見受けられるところではあるが、TWICEの場合本国歌詞も大概中身のに求めるものがあるわけではないと思う(『Feel Special』は別)TWICEの歌詞面での魅力はワンフレーズの強烈さや、リフレイン——というより連呼——にある。それで癖になって気がついたら何度も再生してしまうのだ。LIKEY LIKEY LIKEY…今回も当然Boy I boy I boy know…

 あくまでサビ文化を大切にしているのもイルペンとしては嬉しい。TWICEが他のグループと一線を画すのはキャリアにおける日本活動の充実だろう。申し訳程度のJapanese Ver.を集めたアルバムではない。全曲日本オリジナル曲のフルアルバムは先日の『Perfect World』で3作目を数えた。3作目に至ってはシングルカットされた作品も含めノンタイアップである。それでもフルアルバムを制作する馬力。その裏にはコロナ禍によるアメリカ進出の頓挫もあったのだろう、とオンラインリリースイベントでメンバーから発せられる「ワンス、会いたいです〜」を聴くたびに思っていた。向こうの音楽番組に出演したり昨年リリースのシングルを英語詞でリテイクしたりと草の根の活動はしていたものの、やっぱり餅ゴリの青写真はアメリカツアーだったのであろうし。だからこそ、満を辞しての全英語詞シングルは、相当な気合が入っているようだ。

 歌のパート割りがTWICEの超王道だ。リフレインはラップラインの2人とモモに任せる。この割り切りが最近はすごい。モモはラップができる、というか声質があっていることは明白で、「I Can't Stop Me』からその配置は露わになった。ラップラインはやはりTWICEのキモの一つだ。
 Aメロの入りは軽やかなナヨンの歌唱。ナヨンはたった1人の声でTWICEを象徴する雰囲気を醸し出せるからすごい。真の意味でのセンターだと思う。
 私の推し、ジヒョにサビ、そしてメロディライン的にビシッと締めてほしいところは全て託されていた。TWICEが日本オリジナル曲の中で、J-POP特有の重ためバラードすらこなせたのは、日本歌謡にもつながるようなしっとりとした歌唱ができるジヒョがいたから。けれど彼女の歌声の真価はグルーヴ感にて発揮される。となると今作のようなブラックな楽曲の中でこそ活きてくる。本当はジヒョについてあと500,000字くらいは語りたい。

 前作『Alcohol-Free』でのサビ終わりの歌唱が筆者の心を掴んだツウィ。これまでどこか照れの印象を受けた彼女の歌唱も遂に弾けるようなものに変わった。ただ今作では歌唱よりもMVに惹かれた。かつて『LIKEY』でほぼ真顔のツウィの目にカメラがクローズアップしていくという謎画角が存在したが、今作でもツウィが割と真顔でドライヤーを銃に見立ててぶっ放すというカットがある。その構図は面白いのだがTWICEはそもそもカオス、混沌が一つの持ち味であるので彼女のこの姿もまた示唆的にすら映る。
 ジョンヨンがいずれ全快に向かうことを祈るばかりであるが、やはりラストサビ頭で入ってくる彼女の歌声は頼もしい。『TT』や『I Can't Stop Me』のラストサビのように遠くから届きつつも迫力ある歌声は、さすが歌番組で声が入る3人のうちの1人だな、と実力を再認識させられる。
 そしてミナとサナの2人のコントラストである。イケイケハチャメチャ一辺倒になってもおかしくないTWICEの中でコントラストとなるのが、透明感のメタファー・ミナの存在である。彼女がブリッジで歌唱するだけで作品がぐっと引き締まる。「少女の心を歌う」というコンセプトの中で「切なさ」や「儚さ」にやはり餅ゴリは重きを置いているのだな、とわかる。もう少女心を、というノリでもないけれど。今作のミナはブリッジのお手本である。
 ただ誰よりも、MVPはサナだった。なんだAメロのメロディラインからの浮遊は。モノが違う。その直後に入ってくるアーウ❣️という声は、なんだ。かつて「シャーシャーシャー」、そのフレーズで見るモノ全てを飲み込んだ彼女、ついにラップまでやってしまって、おかげで曲全体が跳ねている。25歳、アイドルとしては中堅。AKBや坂道シリーズでは次々と卒業者が出る年だ。それでもなお彼女はあくまでアイドル然として、ある意味ギミック的に「カワイイ」を造形していく。ラップなら「スコースコー」、ブルピンなら「ブラックピンク・イン・ユア・エリア」、餅ゴリなら「ジェイワイピー…」と様々なサウンドロゴがあるが、そろそろサナのこういう声も商標登録いただきたいものだ。

 MVの中で、メンバーが自然な表情をしているのが嬉しい。ラストサビ中のナヨンの笑顔なんて、突発的に起こった面白に対して笑っている姿をチッケムで抜かれた時のそれである。TWICEのキャリアに「苦しみ」はどうしてもつきもので、そこを無視するのはオタクとして無責任だろう、と自分は思うが、こうやってハチャメチャによくわからんことを口走りながらもキラキラ輝いていてイケイケでゴーゴーなTWICEをみて自分はワンスになったのだし、またこういうTWICEの姿が世界中の人々に届き、1人でも多くのワンスが増えればいいな、と思うのであった。満を辞して、いよいよ彼女たちの混沌が世界各地を巻き込んでいくのだ。

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