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地域の価値は

2年前になるが、『若者たちはヤマガタで何を企てているか? ~ポスト3.11の小さな革命者たちの記録~』(書肆犀、2018年)という小著を出版した。山形県内の各地でユニークな活動にとりくむ若い世代50人を取材し、彼(女)らが産み育てた現場発の言葉たちをもとに、地域の未来を社会学的に展望したもので、2014~17年にわたる『山形新聞』紙上での連載「ヤマガタ青春群像」がもととなっている。その続編の出版を「よりみち文庫」で準備中である。


今回の本もまた『山形新聞』紙上での連載(2018~20年)をまとめたものだが、もととなる連載のコンセプトが前著とは異なる。「多文化ヤマガタ探訪記」と題されたそれは、前著が「やまがたの若者活動」をテーマとしていたのに対し、「若者」に限らず、老若男女、さまざまな世代のユニークなとりくみを対象としてとりあげている。結果、前著以上に多様で、彩りゆたかな活動とそれを担う人びとの群像を可視化することができた。

現在準備中の続編(タイトル未定)は、県内各地の活動者30人の取材記事を収録する。自宅の蔵を開放して人びとを迎え入れる居場所づくりやローカル線の列車を借り切ってプロレスイベントを行う活動、大学の知的資源とともに地域課題にとりくむ子育て支援NPO、まちの「絶滅危惧」文化を記録した雑誌を発行するとりくみなど、多様な背景をもつ人びとの多彩な実践がとりあげられ、それらをもとに地域の将来が展望されている。

これら30人の実践の多様性を、本書では六つの柱に整理して提示しようと考えている。すなわち、①生かす、②活かす、③遊ぶ、④つなぐ、⑤伝える、⑥残す、というもので、それぞれ、①価値の源泉となる生命や生活そのものを支えること、②眠る資源を活かして価値をつくること、③遊びから価値をつくりだすこと、④資源どうしをつないで価値をつくりだすこと、⑤価値を人びとに伝えること、⑥価値を次の世代に残すこと、を意味する。

上記に通底しているのは、その場所からどのように独自の文化や価値をうみだし、それを人びとの間で育み、続く世代に手渡していくか、という普遍性のあるテーマである。都市部であろうと農山村であろうと、おそらくはどんな場所であれ抱えているであろうその課題に、やまがた各地のさまざまな世代の人びとがどんなふうにとりくみ、その人びとなりの答えをだしてきたか。その事例群は、あなたの答え探しにも参考例としてきっと役に立つはずだ。(了)

『よりみち通信』17号(2021年1月)所収


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