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母さんが夜なべをして手袋編んでくれた時代かと思った話。
足の指に赤い発疹のようなものができてしまい、とてもかゆい。
もともとアトピー肌なので手持ちのステロイド薬を塗っていたけど、効果がかんばしくない。
まさか、水虫…?
さくらももこが学生時代に水虫で悩んでいた話をエッセイ『もものかんづめ』で読み、爆笑していた昔の私。当時は、おもしろい人は体にまでおもしろいことが起きるんだなーなんてのんきに考えていた。「水虫って、おじさんがなるものでしょー?」そんな偏見を持っていた私も、数十年を経てついにおもしろい体の人になってしまったのだろうか。それともアラフォーならもうおもしろくも何でもなく、ニアリーイコールおじさんとして、甘んじて水虫のお告げを受けるべきなのだろうか。
もう、さくらももこを笑えないとおびえる日々は続いた。
お風呂場のバスマットを共有している夫に言えず、罪悪感を抱きながらだましだまし過ごすこと、はや数か月。その間も毎月皮膚科には通っていたのだけど、先日やっと勇気を出して先生に打ち明けることにした。
YOASOBIの「アイドル」を聴き鼻歌を歌いながら「隠しきる この秘密だけは♪」なんて自分を鼓舞し、病院に向かう。
「先生、これなんですけど…」
診察でおそるおそる靴下をまくって見せると、先生は間髪入れず
「ああ、しもやけですね」
「えぇー?!」
水虫じゃない?!
それにしもやけって、今より防寒具や下着があたたかくなかったり建物もすきま風ピューピューのとにかく昔の人がなるんじゃないの?!私はまたまた足の病への偏見を発揮し、とにかく驚いた。
「血行不良で足が冷たいとなっちゃうんですよね。温まるとかゆみが強くなるんです」と、先生はいう。
確かに、ブーツの中で足が蒸れるとかゆくなる(だから、水虫だと思っていた)。足が冷たいとは思っていたけどウールの分厚い靴下を履けば冷たくないし、女性はみんなそんなもんだと思っていた。
水虫よりむしろ照れくさくなってしまい、診察室を出て思わず一人でニヤニヤしてしまった。
こうして、しもやけにより、私の足の冷たさは病的なレベルであると烙印が押された。AIが幅を利かせている令和の時代に、しもやけが幅を利かせている昭和生まれの私の足。人体は意外と進歩しないものだ。
ビタミン配合だという薬をもらった。
私の足もがんばっているんだなぁ。そう思うと「しもやけ」の響きがいとおしくなって、少しだけウキウキしながら帰路についた。
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