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雪虫の乱~世の中には、役に立たない経験があるということを。
突然だが、私の住む北海道では、先月下旬から雪虫(ゆきむし)が異常発生している。
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雪虫が飛ぶと数週間で初雪が降る。まさに季節の風物詩だ。
白くフワフワとした外見でゆっくりと飛ぶ姿は、北国の民に長い冬への覚悟を決めさせ、年が終わることへのセンチメンタリズムに浸らせる。
そんな地域限定ゆるキャラだった雪虫は、今はもういない。
今年吹雪のように飛び交っている雪虫集団は、数の力で目や口に入ったり髪の毛に絡まったり服や上着についたりカバンに入ったりと、書いているだけで今もムズムズしてくる存在なのだ。
とても小さく華奢で弱い虫なので、ほろうとちぎれて死ぬことが多い。
虫の足や体がバラバラになって顔についていることは、濡れて髪の毛が落ちまくっている公衆浴場の脱衣所の床にこれから使うバスタオルを落としてしまうくらい不快なものだと思っている。
昨夕、暗くなってから夫と外出した。
雪虫集団が活動するのは気温が高く風のない日中と思っていたので、上着のボタンも閉めず前を開けてマスクもせずに歩いていたら、突然「うわっ!」と夫が声を上げた。同時に私も、口の中にあの異物感が生じた。
やつらだ…!
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心身ともに防御力0だった
本日の攻撃はまだ終了していなかったのだ。
暗闇に紛れ、姿を隠して突然敵前に現れるとは。これは罠だ。
すぐにマスクを着用し上着の前を閉じたが後の祭り。あっという間にやつらにまみれていく我ら。駅という室内に入るまではいくらほろっても意味がない。パフェのイメージがもたらしていた一抹の幸福感はあっという間に消え、絶望感が高まる。
電車に乗る前にお互いのマスクや体をバシバシほろい、髪についたやつらを一匹ずつ取り合う。これで大丈夫、と着席するも、まだしつこくやつらがへばりついているのが見える。発車まで少し時間があったので、一度降りてホームでまたほろい合う。必死である。
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特に髪に絡まる
予期せぬグルーミングに過集中している我々の耳に、突如背後から「プシュー、バタン」という機械の動作音が聞こえた。
…
一つだけお聞きしたい。
これを読んでいるあなたは、虫をほろっていて電車に乗り遅れたことがあるだろうか?
我々は昨日、その経験を済ませた所である。
さて、何の役に立たせようか。
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