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盛田昭夫 『21世紀へ』(007)

盛田昭夫 『21世紀へ』(007)

演繹と帰納という2つの考え方があります。
演繹は、はじめに原則を決め、いろいろな事象に当てはめていく考え方です。

一方、帰納はいろいろな事象を集め、その事象に共通する基本原則を見つける考え方です。

仮説と検証は、演繹の考え方を用いた手法です。
盛田氏は、帰納の考え方をとり、いろいろなを集めて基本原則を導き出し、
その基本原則に則り、経営していくものだ、と述べています。

『21世紀へ』 盛田昭夫
2000年11月21日 初版発行
ワック

目次
はじめに
第1章 経営の原則
第2章 人材の条件
第3章 マーケットの創造
第4章 国際化への試練
第5章 経済活性化の原理
第6章 日米関係への提言
第7章 変革への勇気
第8章 日本国家への期待
第9章 新世界経済秩序の構築
あとがき


第1章 経営の原則

「繁栄のための経営理念」(1982年)から


なるべく広く当てはまる共通の理論とは、つまりはベーシック・プリンシプル――基本原則のことである

私は大学で物理を専攻した。物理学は、非常に難しい学問のように思われているが、その本質は案外単純なものである。

要するに、なるべくたくさんの事象を集めて、それらの事象に共通する、なるべく簡単な説明文を発見する学問が物理学である。

なるべく広く当てはまる共通の理論とは、つまりはベーシック・プリンシプル――基本原則のことである。

21世紀へ 盛田昭夫 019 p.43



基本原則にもとづく決定

私は、経営においても、基本原則というものをはっきり認識することが非常に重要だと考えている。

それは理念とはやや次元の違う概念であるが、理念と同様に経営にとってきわめて重要な要素だと思う。

私はいままでに、ずいぶん多くの重要な意思決定を行ってきたが、いつの場合でも、基本原則にもとづいてデシジョン(決定)を行ってきた。

21世紀へ 盛田昭夫 020 p.43




SONYという社名の由来

東京通信工業という社名は、日本でこそもっともらしい名前だが、外人から見ればきわめて発音しにくい。

世界を相手に商売するためには、まずこの社名を変えなければならん、と考えた。

変えるなら、世界的に通用する名前にしようということで、井深(大・ソニー創業のパートナー)さんと二人で必死に考えたわけだが、最初に原則づくりをやった。

その結果、できるだけ短くて、ローマ字で書いて世界中どこへ行っても同じ音で読まれ、しかも日本人にも読める名前という基本原則ができた。

この原則に則っていろいろと検討を重ねた結果、SONYという名前を探し当てたのである。

21世紀へ 盛田昭夫 021 pp.43-4




盛田昭夫公式ウェブサイト



➳ 編集後記

『21世紀へ』を読み返して感じたこと

『21世紀へ』は、20世紀を全力で走り抜けてきた盛田氏が、このままでは日本がダメになるという危機感に、すべての日本人が気付いてほしいという気持ちがビンビンと伝わってくる本です。

盛田氏の「予言」はいみじくも当たってしまいました。
少なくとも現状においてですが。

この警世の書に書かれていることの多くが当たっています。
盛田氏の慧眼は本当に素晴らしいと思いました。

アマゾンや楽天でなくても、ブックオフ等で目にしましたら、ぜひ手に入れてください。なかなか見つからないかもしれませんが。

その内容の濃さと経験に裏打ちされた説得力のある文章に惹きつけられるでしょう。


🔴「私はいままでに、ずいぶん多くの重要な意思決定を行ってきたが、いつの場合でも、基本原則にもとづいてデシジョン(決定)を行ってきた」

何事にも原理原則があり、経営を行うに際しても基本原則から逸脱したことをすれば経営危機に瀕することになります。

盛田氏は社名を決定する際にも、「原則に則っていろいろと検討を重ねた結果、SONYという名前を探し当てたのである」と記しています。

基本原則はナビゲータと考えると理解しやすいのではないでしょうか?
一時的に軌道から外れても、軌道修正して本来通るべき道に戻してくれるのがナビゲータです。



盛田氏は、一点の曇りもなく、自分に正直で、言行一致した行動派の経営者でした。また、今ではなかなか見つからないダンディなジェントルマンです。表現がダサい? 古い?




⭐ソニーの現状 (ソニーグループの子会社)


ソニーを日本企業とは知らない人たちがいることに驚きました。
さらに、ここ数十年で業態を変えてきましたね。

ソニーは「エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション分野」を扱う企業ということになりますが、半導体も生産していますし、得意な映像技術を深掘りしています。映画部門も持っていますね。

極論すれば、音と映像を2本柱にして、これらに関わる技術を開発し、横展開していると言えます。

ただし、ウォークマンが大ヒットしたあと、アップルの iPhone のようなスマートフォンがなぜ作れなかったのかと悔やまれます。技術力はあったはずです。目利きが及ばなかったのでしょう。

スマホがここまで世界中に受け入れられるとは想像していなかったのかもしれません。


⭐『21世紀へ』について

『21世紀へ』に関するこのブログを最初に投稿したのは、アメブロで8年前(2014-06-21 21:50:26)のことでした。

note に再投稿するにあたって、大幅に加筆修正しました。

『21世紀へ』の「はじめに」の1行目から2行目にワック編集部による
この本の説明が書かれています。

本書は、井深大と並ぶソニー株式会社のファウンダー(創業者)盛田昭夫によって、1960年代から90年代にかけて執筆された論文の集大成である。

21世紀へ 盛田昭夫 p.1


今やソニーは日本を代表する世界的企業であることに異論はありません。



✑ 盛田昭夫氏の略歴

巻末の「著者紹介」から

盛田昭夫(もりた あきお)
ソニー創業者。1921年生まれ。大阪大学理学部卒業。
海軍技術中尉に任官し、井深大と出会う。
46年、井深とともにソニーの前身、東京通信工業を設立。
ソニー社長、会長を経て、ファウンダー・名誉会長。
この間、日米賢人会議メンバー、経団連副会長等を歴任。
海外の政財界にも幅広い人脈をもち、日本の顔として活躍した。
98年米タイム誌の「20世紀の20人」に日本人として唯一選ばれる。
99年死去、享年78。
著書に『学歴無用論』(朝日文庫)『新実力主義』(文藝春秋)
『MADE IN JAPAN』(共著、朝日文庫)『「NO」と言える日本』
(共著、光文社)等がある。


⭐出典元




⭐回想録


⭐プロフィール


⭐私のマガジン (2022.12.30現在)


























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