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【大人の流儀 伊集院 静 心に響く言葉】 Vol.74
大人の流儀
伊集院 静氏の『大人の流儀』から心に響く言葉をご紹介します。私は現在『大人の流儀』1~10巻を持っています。このうちの第1巻から心に響く言葉を毎回3件ずつご紹介していこうと考えています。全巻を同様に扱います。
時には、厳しい言葉で私たちを叱咤激励することがあります。反発する気持ちをぐっと堪え、なぜ伊集院氏はこのように言ったのだろうか、と考えてみてください。しばらく考えたあとで、腑に落ちることが多いと感じるはずです。
『大人の流儀3 別れる力』をご紹介します。
ご存知のように、伊集院氏は小説家ですが、『大人の流儀』のような辛口エッセーも書いています。
第一章 別れて始まる人生がある
「二度と逢えない、それは真実」から
伊集院 静の言葉 1 (219)
談志は己を少し崩して生きた(少しじゃないか)。若い時代に自己否定を一度考えたものは”崩し”を敢えてする。最初の内はただのバカにしか映らないが、歯を喰いしばってこれを続け、天運、人運に恵まれると、これが人をかたちにする。
作家の色川武大は若い談志に、
「六十歳までこのまま行けば名人になる」
と言った。こういう言い方が(人の|さきゆき《、、、、》を断言したりすること)良いのか悪いのかわからぬが(なにしろギャンブルが好きな作家だったので)、談志は名人と呼ばれるようになり、”己を崩す”というあやうい生き方を、天下一品のものにした。
古稀の人物だった(古来より稀ということです)。
それができたのは、世の不条理を見抜いたからだ。
正義、クソ喰らえである。正しい。
「二度と逢えない、それは真実」から
伊集院 静の言葉 2 (220)
初春に逢いに行く人がいなくなった。
人の死はこれが切ない。死はただ逢えぬだけのことなのだが、二度と逢えぬことが真実である。真実は残酷である。
「別れの流儀 ギャンブル篇」から
伊集院 静の言葉 3 (221)
ギャンブルは、これをする人と、しない人がいるだけで、金が儲かるものではない。
じゃギャンブルをすると何かの役に立つかというと、まったく何の役にも立たない。
”ギャンブルで蔵を建てた者はいない”という諺は本当である。
私は若い時に、何をどうとち狂ったのか、ギャンブルでひとかどの打ち手になろうと決心して(バカだね)、関西では、当時、名前の知れたG次という老車券師に半年ばかりついていたことがある。
車券師とは、競輪の投票券である車券で生計を立てている人で、四十年近く前でも、すでに数人しかいなかった。妙な商売で、車券師は自分では金は賭けない。客に金を賭けさせ、そのアガリ(勝った時ですが)で喰っていく。
⭐ 出典元
『大人の流儀 3 別れる力 』
2012年12月10日第1刷発行
講談社
表紙カバーに書かれている言葉です。
人は別れる。
そして本物の大人になる。
✒ 編集後記
『大人の流儀』は手元に1~10巻あります。今後も出版されることでしょう。出版されればまた入手します。
伊集院静氏は2020年1月にくも膜下出血で入院され大変心配されましたが、リハビリがうまくいき、その後退院し、執筆を再開しています。
伊集院氏は作家にして随筆家でもあるので、我々一般人とは異なり、物事を少し遠くから眺め、「物事の本質はここにあり」と見抜き、それに相応しい言葉を紡いでいます。
🔷「人の死はこれが切ない。死はただ逢えぬだけのことなのだが、二度と逢えぬことが真実である。真実は残酷である」
この言葉は、『大人の流儀3 別れる力』の中で、私の心に一番堪えた言葉でした。
今まで何度も記していますが、2015年8月8日に妻に去られ、2017年3月23日に母が他界し、2018年1月26日には姉がこの世を去りました。
尚、父は一番早く私の元を去りました。1998年6月12日のことでした。
相次いで肉親を失い、もっと長く一緒に過ごしたかったという想いが、強く胸を締め付けました。
この世では「二度と逢えぬことが真実」です。
当たり前のことですが、この当たり前のことを受け入れるには、長い時間が必要でした。
🔶『大人の流儀3 別れる力』について『由美子のいなくなった夏 亡き最愛の妻への想い』に言及しています。
伊集院静と城山三郎
『別れる力 大人の流儀3』
私が伊集院静さんに興味を持ったのは、彼の先妻が女優の夏目雅子さんであったこともありますが、『いねむり先生』という題名の小説を読み、不思議な感覚を味わい、また『大人の流儀』という辛口のエッセーを読んだからです。
夏目雅子さんのプロフィール
🔶 伊集院静氏の言葉は、軽妙にして本質を見抜いたものです。随筆家としても小説家としても一流であることを示していると私は考えています。
<著者略歴 『大人の流儀』から>
1950年山口県防府市生まれ。72年立教大学文学部卒業。
91年『乳房』で第12回吉川英治文学新人賞、92年『受け月』で第107回直木賞、94年『機関車先生』で第7回柴田錬三郎賞、2002年『ごろごろ』で第36回吉川英治文学賞をそれぞれ受賞。
作詞家として『ギンギラギンにさりげなく』『愚か者』などを手がけている。
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